登場人物紹介
※カッコ内の年齢は第二章開始時点のものです。
◆シャンタル・フラメル (年齢不詳、100歳前後)
本作の主人公。世界に四人しかいない大精霊士の一人。特に火の精霊術を得意とするため、”炎のアルカナ”の二つ名で呼ばれている。
現在はラングラル王立学園の教師及び精霊振興部の特別顧問を務め、その傍らで精霊術の研究を続けている。
曲がったことは嫌いな性格。ただし状況には臨機応変に対応する柔軟さも持ち合わせている。気性が荒くすぐに手が出るため、そのせいでトラブルを引き起こすことも多い。
フォラント王国の大森林に捨てられていたところを、地元の精霊士に拾われて修行を積み大精霊士となった。師匠のもとを離れた後は数十年ごとに国から国へと移動していた。
人と接することは好きだが、彼らの寿命が自分より短いことを理解しているため深く関わろうとはしない。弟子は取らない主義だったが、孤児院で孤立していたアニエスを放っておけず弟子にした。アニエスと出会ったことが、彼女の人生を変えるきっかけになったとも言える。
エルフと人間の混血であり、その美しい容姿と肉感的な身体に惹き付けられる男性は多い。深い関係性は望まないが恋愛自体は嫌いではないらしく、短期間のアバンチュールを楽しむことはあったようだ。
ちなみに本人は曾祖母がエルフと言っているが、真相が分からないので適当に言っているだけである。
◆アニエス・コルトー(15)
本作の二人目の主人公。シャンタルの弟子で精霊士見習い。水・風・光の精霊を扱う事が出来るため、未来の小精霊士として期待されている。現在は王立学園に通いながら精霊士の修行中。
優しくて気の弱い性格。感受性が強く、他者の痛みや苦しみを我がことのように捉える。
ハラデュール王国の商人の娘だったが、火事で両親を失い孤児院に入れられる。その後シャンタルに引き取られ、精霊士見習いとなった。幼少期のとある経験が、彼女の主体性の弱さと自信の無さへ繋がっている。
マティアス王子との婚約破棄騒動を経て、シャンタルと共にラングラルへ移住。ラングラル王の精霊病治療のため行動を共にしているうちに、フェリクス王子と惹かれあい、紆余曲折を経て婚約した。
恋愛には免疫が無く、かなり鈍い。思いを寄せられてもはっきり言われないと気付かない。
◆フェリクス・ラングラン(17)
ラングラル国第2王子。王太子である兄の補佐として執務に携わっている。王立学園に在学はしているが、既に課程のほとんどを終了しており、用事のある時しか学園には顔を出さない。
生真面目で誠実な性格。女性に対して興味が無いわけではなかったが、二大侯爵家が自分の婚約者の座を巡って争いになったこと、また侯爵令嬢二人が本音では自分との結婚を望んでいなかったことから、今はその気がないと婚約を断った。侯爵家を恐れた他の高位貴族も辞退したため、17歳になるまで婚約者がいない状態に。そのせいで事情を知らない国外からは『変わり者』『男色家』などと噂されている。
父王の精霊病に纏わる一件で行動を共にするうちに、アニエスの優しさや芯の強さに惹かれていった。
ラングラン家代々の男性たちはみな側室を持たず、妻となった女性のみを寵愛するため「愛が重い」と言われている。フェリクスも同様で、アニエスへ重い恋慕を向けている。普段は自制しているが、アニエスの誘拐事件の際など有事の際は表に出してしまうことも。
シャンタルのことは素直に尊敬かつ慕っており、常に彼女の味方であろうとしている。
◆ジェラルド・ラングラン(33)
ラングラル国王弟。頭脳明晰な知略家。国王の懐刀的存在として長年補佐を務めてきたが、現在は徐々に執務を甥二人へ引き継いでいるところである。
表向きの役職は王立学園長と文化省長官。これは優秀な彼を次代の国王へ推す声が上がったため、権力中枢から程遠い教育関連の役職に就くことで、王座への意欲が無いことを示したのである。だが若人を教え導く事は性に合っていたらしく、教育分野の強化へ意欲的に取り組んでいる。
職務に対しては冷徹かつ厳格であり、禁欲的ですらある一方で、私生活では女性と見れば老若問わず甘い言葉を吐くジゴロ。容姿の良さと相まって女性からは非常に人気があり、貴族夫人を中心としたファンクラブがある。若い頃は数多の女性と浮名を流し『女泣かせ』『ラングラン家の変異種』などと揶揄され、重臣たちから苦言を呈されるほどだった。エリザベスと出会った後は彼女一筋となり、亡くなった後も一途に想い続けたため「彼もやはりラングラン家の男だった」と噂された。
シャンタルの事を当初は良く思っていなかったが、リラ湖の一件で和解した後は彼女の強力な後ろ盾となった。シャンタルに人としても、また男としても惚れ込んでおり、求婚を断られた後もめげずにアプローチを続けている。
◆アルフレッド・ラングラン(24)
ラングラル国王太子。フェリクスの兄。既婚。産まれたばかりの息子がいる。
学生時代からジェラルドの指導のもとで執務に携わっており、次期国王として着実に実績を積んでいる。重臣たちからの評価は高いが、父や叔父からは威厳が足りないと言われている。
明るい性格で、王家においてはムードメーカー的な存在。頭の固さで周囲と軋轢を生みがちなフェリクスの緩衝役になることも。
飄々としているが、王立学園を次席で卒業するほど優秀。努力しているところをあまり表に出さないタイプ。
シャンタルに対しては最初から好意的であり、王家側の窓口、かつ良き理解者として接している。
◆アンナ・クルトー(52)
フラメル家の使用人。長年とある男爵家に仕えたベテランメイド。
料理はプロ級の腕である。田舎にパン屋を営む息子がいる。
◆セリア・ルテリエ(25)
フラメル家の使用人。実はある子爵が愛人に産ませた子供である。母親亡き後は父親に引き取られたが正妻やその子供たちとソリが合わず、成人後は追い出されるように家を出て、貴族の家にメイドとして仕えていた。
貴族令嬢として一通りの教育を受けており、ラングラル貴族の慣習をシャンタルやアニエスに教えるのは彼女の役目である。また服装については一家言あるらしく、シャンタルは彼女の助言を受けてドレスを選ぶことも多いようだ。
◆ブリジット・ラングラン(13)
ラングラル国王女。アルフレッドとフェリクスの妹。
素直で少しおしゃまな性格と愛らしい見た目から、家族にはとても可愛がられている。
既にエルヴス国の第五王子との婚約が決まっている。
◆エレオノール・ラングラン(45)
ラングラル国王妃。元はエルヴス国の公女。
隙の無い淑女で、貴族女性の規範としてラングラル社交界のトップに君臨している。
家族には慈愛深い妻・母親として接する一方で、厳しい一面も見せる良妻賢母。
◆ヴァレリー・ラングラン(48)
ラングラル第11代国王。
ミスリル鉱石の新規販路の確保や新しい外交戦略の確立など数々の功績を持ち、名君として国民から慕われている。
◆ディアーヌ・シャレット(16)
シャレット侯爵令嬢。王立学園におけるアニエスの同級生で友人。高飛車な態度から高慢にも見えるが、侯爵令嬢としてそうあるべしと努めているだけで、中身は誠実で心優しい娘である。
幼い頃遊びに来た王宮で迷ってしまったところをジェラルドに助けられ、彼に恋をしてしまう。成長した今ではそれが憧れに過ぎなかったと理解しているが、年上趣味は健在。
フェリクスの婚約者候補の一人だったが彼に対して恋愛感情は無く、幼なじみの友人として信頼関係を築いている。現在は嫁ぎ先を探している最中。
◆マリアンヌ・シャレット(39)
シャレット侯爵夫人。ディアーヌの下に息子が一人いる。
夫を支える傍らで商会を営んでおり、かなりの遣り手である。娘共々、ジェラルドファンクラブの会員。絵心があり、彼女の描いたジェラルドの絵姿はクラブ員に人気。
シャンタルのことは警戒していたが、その有用性を認め、今では信奉者となっている。アニエスについては評価を保留中のようだ。
◆エクトル・フォルネ(41)
クレッタ鉱山の管理者で子爵。貴族らしいしたたかさを持つ人物。
長男のクロードは王立学園の生徒でシャンタルの教え子。
◆アベル・マルタン(22)
クレッタ鉱山の精霊石鉱脈管理のため、招聘された精霊士。ナタンの弟子。
◆スフィール・ビュッケ
ヴェリテ公国在住の大精霊士。ドワーフ族。土の精霊術が得意で、”岩のアルカナ”の二つ名で呼ばれている。
口が悪く、頑固な性格。人間の妻との間に三人の息子がいる。妻には既に先立たれているが、再婚する気はないらしい。
一時期、シャンタルは彼の元で修行をしていたこともある。彼女とは顔を合わせると憎まれ口を叩き合っているが、互いに認め合う仲である。
◆ナタン・ビュッケ
ヴェリテ公国在住の小精霊士。スフィールの長男で弟子でもある。
現在は多くの弟子を抱え、その温厚な人柄から尊敬を集めている。
長寿な種族と人間との混血という共通点から、シャンタルにとっては数少ない心を許せる相手である。ただしお互いに全く好みのタイプではないので、恋愛関係になることはなかった。
◆マティアス・フェネオン
ハラデュール国の第二王子でアニエスの元婚約者。勝手にアニエスとの婚約を破棄したことで父王の怒りを買い、王族から除籍された。シャンタルとアニエスを逆恨みし、彼女たちを追い落とすべく魔石病騒ぎを起こして捕らえられた。
表向きは処刑されたことになっているが、実は北の流刑地で重労働に課せられている。これはアニエスの助命嘆願もあるが、ひと思いに殺すよりも彼にとってはより辛い刑だろうとラングラル王が判断したためであった。
◆ファビアン・ルーベル
マティアスの元側近。第一王子テオフィルと共謀し、マティアスを陥れた。
有能だが出世欲が強く、狡猾で非道な人物。
◆マルセル・ドラノエ
闇商人。ファビアンの指示でマティアスを奸計に嵌めた。そこには別の思惑もあるようだが…?




