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58. 光の精霊石(1) ◇

「シャンタル殿は本日、サージュ山へ向かった」

「そうか。これで流行病が落ち着くと良いが」


 国王陛下の執務室。

 午後からの重臣会議に向けて、俺は陛下(あにうえ)と情報のすり合わせを行っていた。横には甥のアルフレッドと側近たちも控えている。


「捕らえた男は何か吐いたか?」

「今のところ、有用な情報は得られていない」


 ハラデュールの元第2王子に対する拷問、もとい取り調べは今も行われている。

 リラ村の件は白状したが、サージュ山については何も知らないと言っているらしい。

 魔石を購入したという商人の行方は、依然掴めていない。おそらくあの元王子は捨て石なのだ。今思えば比較的簡単に捕らえることができたのも、切られたトカゲの尻尾だったからかもしれない。


 ううん、と一同が唸っていたその時。


「父上!」


 ノックの音もそこそこに、フェリクスが飛び込んできた。

「何だフェリクス。騒々しい」と叱り飛ばしたが、甥はそれに反応せず、まっすぐに兄上の元へ向かった。


「父上、シャンタル殿を止めて下さい。彼女は……死ぬ気だ」

「何だと!?」

 

 手に持っていた書類がバサリと床に落ちる。驚いた側近たちが俺を凝視したが、気にしている場合ではない。

 俺はフェリクスに詰め寄った。


「どういうことだ。詳しく話せ」


 今朝方からアニエスの様子がおかしく、心配したフェリクスが問い質したところ、先ほどようやく聞き出すことができたそうだ。

 シャンタルの力量を持ってしても、浄化の成功率は5割であること。自分が死んだ時は、”岩のアルカナ”スフィールを頼れと言い残していったこと。


「……止めるわけはいかん」

「なぜですか、父上!」

大精霊士(アルカナ・マスター)であるシャンタル殿を失うのは、我が国にとっても多大な損失のはずです」

「時間が経てば経つほど、被害は増大する。何百、いや何千という民の命が掛かっているのだ。シャンタル殿には申し訳ないが、彼女の命を使って貰う他はない」

 

 口々に説得を試みるアルフレッドとフェリクスに対して、陛下は辛そうな顔をしながらも冷静に諭した。

 兄上は正しい。シャンタル一人と何万もの国民。どちらを優先するかは、比ぶべくもない。


「そんな……。他に方法は無いのか!?」

「光の精霊石の結晶があれば、と言っていました」

「精霊石の結晶だと?」

「なら、それを至急入手すれば良いのでは」

「シャンタル殿曰く、手に入れるには年単位の時間がかかると」

「そんなに待っていたら、我が国は滅んでしまいますぞ」


「……いや、ある」


 喧々諤々と話し合っていた甥や側近たちが、一斉に俺を見た。

 

 ひとつだけ、あるのだ。彼女を救う方法が。


「兄上!頼む、行かせてくれ!」


 一瞬、目を見開いた陛下は俺の顔をじっと見た後、「よかろう。行ってこい」と答えた。


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