表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/166

49. 悪意の伝播 ◇

「最近、嫌なことばっかだなあ」

「だよな」


 王都リフリールのとある居酒屋で、男たちがちびちびと安酒を飲みながら愚痴りあっていた。

 週末の夜だ。普段ならば客で賑わうはずなのに、空席が目立つ。


「変な病気が流行ったせいで、景気悪いよなあ。大通り沿いにあった居酒屋、潰れちまったんだとよ」

「あそこの料理、美味しかったのにな。この店と違って」

「うちは嫁の父親が、例の病気で亡くなっちまってさ。あれからむっつり黙り込んじまって、家の中が暗くって仕方ねえよ」

「あー、お前んとこもか。俺は田舎の爺様が逝っちまったよ」

「お前らは商売続けてられるから、いいじゃねえか。俺なんか、街道の行き来が制限されたせいで商売上がったりだよ。このままじゃ、一家揃って首でも吊るしかねえ」


 馬車夫らしき男が大きな声を上げた。他の男たちも、うんうんと頷く。


「俺の店だって、客がさっぱり来なくなったよ」

「うちの宿屋もだ。まあ、おかげでこうして飲みに来れるんだけどな」

「金も無いからあんまり飲めねえけどな。いっそ、うちのかかあを売っちまうか」

「お前の嫁なんて、金貰っても買わねえよ」


 げひげひと男たちが下品な笑いをする。そのうちの一人が「女といえばさ」と話を切りだした。


「知ってるか?精霊士とかいう奴の噂」

「精霊士?なんか魔法みたいなのを使う奴らだろ」

「何でも、そいつらが病気を持ち込んだんじゃないかっていうんだ」

「それ、本当か!?」

「そいつらのせいで、俺たちはこんなに苦労してるってことか?王宮は何をしてるんだ。そんな奴ら、ふんじばってしまえばいいだろう」

「それがさ、大精霊士(アルカナ・マスター)とかいう女が国王陛下に取り入って、騎士団も手が出せないって話だ。陛下や王弟殿下を色仕掛けで籠絡して、好き放題やってるらしいぜ」

「っかー、どんないい女か知らねえが、陛下もだらしねえなあ」


 興奮状態になったのか、男たちは周囲の迷惑も省みず、大声でがなっている。

 俺は隅の席でそれを聞きながら、エールをぐいとあおった。久々に酒が美味く感じる。


「首尾良く進んでいるようだな」

「はい。王都だけじゃなく、国中で精霊士の悪い噂が広まってますよ」


 ラングラルの国民から、これだけ嫌われているのだ。

 シャンタルはもう、この国にいられなくなるだろう。実にいい気味だ。

 

「……しかし、俺がわざわざあんな辺境まで行く必要があったのか?あの袋の中身は危険なものだったんだろう」

「この策は、私と()()()様で同時に実行する必要があったのですよ」

「そういうものか?まあいい。あとは最後の仕上げにかかるだけだ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ