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48. 帰還

 王都へ帰り着いたその足で、私は王宮へ向かった。


「ご苦労さま、シャンタル殿。護衛騎士から簡単に報告は受けているけれど、貴方の口から詳しく聞きたい」

 

 いつもの王太子の執務室に、今日はジェラルド殿下とフェリクス殿下もいた。

 三殿下が揃い踏みとは珍しい。


 私の報告を聞き、持って帰ったガラス瓶を見たアルフレッド王太子殿下は眉をひそめる。


「こんな小さな石が原因なのか……。しかし、誰がこんな物を持ち込んだんだ。そのリラとかいう村の人間か?」

「魔石など、片田舎の村民が手に入れられる物ではないだろう」


 ジェラルド殿下が指摘した。私も同感である。

 魔霊の集まり具合からいって、かなり純度の高い魔石だと思う。

 

 魔石は魔獣の心臓から取得できる。ベテランの傭兵や騎士ならば、魔獣を倒して魔石を手に入れることは容易だろう。だが、それを集めて高純度に精製するとなると話は別だ。


 それは精霊士において、禁忌とされる技術。

 私ですら、本で読んだことしかない。

 

 だがその禁忌を行う者がいる。

 公に精霊士とは認められず、地下で活動する輩。魔霊士と呼ばれる者たちだ。

 

「魔霊士?そのような輩が、我が国に入り込んでいるということか」

「それは分かりません。他国で彼らから魔石を購入し、こっそり持ち込んだ可能性もあります」

「国内なら闇ルートもある程度は調べられるが、国外となると手が出せない。困ったな」

「その村人に当たってみてはどうだ。生き残った者がいるんだろう?」

「しかし叔父上。彼らに魔石が入手できないのなら、無実なのでは?」

「まずは情報収集だ。何でも良いから聞き出させろ」


 王太子殿下とジェラルド殿下が議論し始めたので、私はお暇することにした。

 執務室を辞する際に、フェリクス殿下が一言も発していないことに気づく。何だか元気がないようだ。


 

 

 家に帰ると、アニエスとアンナ、セリアが出迎えてくれた。久しぶりの我が家にホッとする。

 

「ふう~。少し酔っぱらったか」


 自室のベッドにごろんと寝転ぶ。

 夕食の席ではこの一ヶ月に何があったか、アニエスとお互いに色々話した。

 アンナが良いワインを出してくれたので、話をしながらがぶがぶ飲んでしまったのだ。

 

 もう寝てしまおうかな。

 そう思っていたところにドアがノックされ、「お師匠様、起きてますか?」とアニエスの声がした。


「起きてるよ、入っておいで」

「お師匠様!」

 

 アニエスが飛びついてきた。私に抱きついて離さない。

 もう16歳になるというのに、子供みたいだ。

 と思いつつ、何だか嬉しくて頭をよしよしと撫でてしまう。


「撫でてもらうのは久しぶり……。私、ずっとお師匠様のそばにいたい」

「どうしたんだい?今日はずいぶん甘えただねえ」

「だって、1ヶ月も帰って来ないとは思わなかったんです」

「ふふ。ようやく落ち着いたから、新学期まではゆっくりするよ」

「そうだ、精霊術について質問があるんです。お師匠様が帰ってきたら聞いといてくれってみんなが」


 その後も甘えてくるアニエスの相手をしていたら、すっかり夜が更けてしまった。

 よほど寂しい思いをさせてしまったようだ。しばらくは弟子と二人で過ごすとしよう。

 新しい術を教えようか。それとも、一緒にどこかへ出かけようかな。


 などと考えていた私だったが、すぐにそれどころではなくなった。

 流行病が収まらなかったのだ。


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