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35. 初登園 ◇

「ねえ貴方、あのシャンタル先生の弟子なんですって?」

「はい、そうです」

「普段はどんな修練をなさってるの?」

「あっ、俺も聞きたい!」


 先生からの紹介を終えた後、私はクラスメートに囲まれていた。

 みんな、私よりはお師匠様に興味津々のようだけれど。

 複数人から話し掛けられて、どれから答えようかとあわあわしていたら。


「そろそろ授業が始まるわよ。静かになさって下さらない?」


 声の主は、夜会でお会いしたあの令嬢、シャレット侯爵令嬢だった。

 数人の女生徒と一緒に、こちらを睨んでいる。

 クラスメートたちはコソコソと席へ戻っていく。ちょっと怖いけど、騒いだ私たちが悪いものね。


 

 午前の授業が終わった後は、フェリクス殿下と共に昼食を取った。

 学園には価格帯の異なる二つの食堂がある。高い方は貴族の子弟、低い方は平民の生徒が多く利用しているそうだ。

 今日は殿下と一緒なので、高い方の食堂にいる。


 私の選んだランチセットは、お肉も野菜もたっぷりで美味しかった。

 毎日利用するのはお小遣い的に無理そうだけど、たまにはいいかも。


「午前の授業はどうだった?」

「想像していたより高度な内容で、ついていくのが大変そうです。でも、精霊術以外の学問を深く学ぶのは初めてなので、面白くて」

「それは良かった。努力家の君の事だ。授業に遅れを取ることはないだろう」


 ハラデュールで少しだけ王子妃教育を受けたことはあったけれど、内容は浅く広くという感じだったし。

 それに、誰かと机を並んで学ぶという経験が新鮮だ。

 最初の講義だけはマティアス王子と一緒だったが、次からは退屈だと来なくなってしまったもの。


「飲み物が無くなったな。取ってこよう」

「あ、それなら私が」

「構わない、君は座っていてくれ」


 殿下は本当にスマートだ。

 それに比べて、私ったら気が利かない。王子殿下に飲み物を取って来させるなんて。

 そう反省していたら、背後から声をかけられた。

 

「あ~ら、ここは貴族専用の食堂ですのよ。なぜ平民が利用しているのかしら?」


 見覚えのある女生徒が二人。

 シャレット侯爵令嬢と一緒にいた方だ。名前は知らない。


「すいません、貴族でなければ利用してはいけないなんて知らなくて」

「貴方、どうせシャンタル先生のコネで入学したんでしょう?」

「平民ごときが、フェリクス殿下の愛妾の座でも狙ってるのかしら。厚かましいこと」


 違うと言いたかったけど、口が動かなくて、俯いてしまう。

 こういう時、お師匠様ならすぐ言い返すのに。私はどうしてこうなんだろう。


「君たち、何か勘違いをしているようだが」

 

 背後からの声に振り向くと、戻ってきたフェリクス殿下が彼女たちを睨み付けていた。


「この食堂は、生徒なら誰でも利用して良いはずだ。それにこの学園にコネ入学など、叔父上が許すはずもない。アニエスが合格を勝ち取るために、必死で勉強していたのを知っている。その努力を否定するのは、俺が許さない」


 彼女たちは納得行かない顔をしていたが、殿下の手前だからか、引き下がっていった。


「気にするな、アニエス。もしまた何か言われるようなことがあれば、俺に相談してくれ」

「はい……」


 その後食事を再開したけれど、全く味がしなかった。美味しいランチだったはずなのに。

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