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24. 勉強会 ◇

「アニエス、そこ違うわ。アヴァルの乱は王国暦113年よ」

「あっ本当ですね。ありがとうございます、ブリジット殿下」


 今日はブリジット殿下の部屋へお邪魔している。

 殿下が、私の編入試験に向けて勉強会をやろうと誘って下さったのだ。


「もう。殿下は付けなくて良いと言っているのに」

「そうでした。すいません、ブリジット様」


 ブリジット様は私より三歳下だが、とても利発な方だ。

 勉学も優秀らしい。ほとんど私ばかりが教えて頂いている。


(はかど)っているかい?」

「そろそろいらっしゃる頃だと思っていましたわ、お兄さま」

 

 フェリクス殿下が入ってきた。ブリジット様がくすくすと笑う。


「歴史と地理がなかなか進まなくて。ブリジット様のお勉強の邪魔になっていなければ良いのですが」

「あら、いいのよ。私も復習になるもの。それに、アニエスは算術がすごく得意じゃない」


 お師匠様はお金に無頓着だから、私が家計を担当している。

 自然と算術には詳しくなってしまった。


「歴史のどこにひっかかっているんだ?」

「えーと、ここですね。王国暦110年辺りです」

「ああ、この辺りは諸侯が争いを繰り返していたからな。領地の境界線も頻繁に変わっていたし、理解しにくいだろう。年号を軸にして、各領の動きを並列に並べてみると分かりやすいぞ。こんな感じで……」


 フェリクス殿下がさらさらと年表を書いて下さった。

 下を向いた殿下の顔に、さらりと黒髪がかかる。

 つやつやとした美しい髪から、横顔が覗く。端正なお顔立ちで思わず見とれてしまった。


 こちらを向いた殿下と目が合いそうになって、慌てて顔を伏せる。

 王子様のお顔をじろじろ見るなんて、不敬と思われたかも……。


 しばらくして侍女さんがお茶を持って来て下さったので、一息入れることになった。


「そうか、シャンタル殿は今日から授業開始か。生徒の反応も見たいし、久々に学園へ行きたいところだが」

「執務がお忙しいのですか?」

「ああ、まだ父上が正式に復帰していないからな。叔父上の助けで何とか回っている状態だ」

「その割には、私たちとお茶をする暇はあるのね?」

「来ては駄目なのか」


 ブリジット様は微笑んでいるが、言葉は手厳しい。

 殿下が憮然とした顔になった。


「いいえ。でもお兄さまったら、アニエスが来ると必ずいらっしゃるんだから」

「普段は執務でお忙しい身です。フェリクス殿下も休息をお取りになりたいのでは?」


 精一杯フォローしたつもりだった。

 だけどブリジット様は目を見開いてはあ、とため息をついた。


「苦労しそうね、お兄さま」


 フェリクス殿下は答えず、無言でお茶菓子を口に運んだ。

 気まずい沈黙が流れる。

 私、何か失礼なことを言ってしまったのだろうか。

 

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