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130. 成果報告

 私たちはヨランド様とイヴォン殿下に見送られながら、デルーゼを出立した。陛下からは返礼品を山のように頂いたので荷物用の馬車に入りきらず、もう一つ馬車を調達する羽目になった。


 見送りにはデルーゼ王の代理としてエヴラル宰相も姿を見せた。

 毒を入れた疑いをかけられた際、ヤン大臣一派は私たちを投獄して拷問にかけようとしたらしい。それを止めたのは宰相だったそうだ。彼も私たちを嫌っていると思っていたから意外だった。


 彼曰く「陛下は正しく人を見定める力をお持ちです。陛下が貴方がたを認めている以上、危害を加えるような真似を看過することはできませんから」だそうだ。

 彼こそが、本当の忠臣なのだろう。


 帰り道は私たちの一行にもう一人加わった。

 国外追放となったサロメ嬢だ。ヨランド様に頼まれ、エルヴスにいるゼナイド様のところまで送り届けることになったのである。


 当初は、国外に出たところで彼女と合流する予定だった。だけどヨランド様の機転で、国境近くの人目に付かない場所での合流となった。


 国外追放になった罪人は兵士が国境へと連れて行く事になっている。元は高位貴族の令嬢だ。下級兵士の貴族に対する鬱憤が、後ろ盾をなくした美しい少女に向けられたら……。どのような目にあうか、想像に難くない。


 それを危惧したヨランド様の指示により、彼女の護送にはイヴォン殿下の護衛騎士が同行した。騎士が目を光らせていたため、兵士たちは彼女に対して狼藉を行うことができなかったのだ。そして国境へ放り出された彼女を、私たちが来るまで護衛騎士が守ってくれていた。


 旅の間中、サロメは謝ったり泣いたりと情緒不安定だったが、アニエスが懸命になだめるうちに落ち着いたようだ。

 エルヴスへ向かう道で私たちは別れた。サロメにはディオンとニコルを同行させている。彼らはシニャック公爵やゼナイド様と面識があるため、問題なく届けられるだろう。

 

 そうして私とアニエス、ジュディットとナタリー、シリルの5人はラングラルへ帰還した。



「詳細はジュディットから聞いているよ。二人ともご苦労だったね」


 帰国した私たちは、報告のためアルフレッド殿下の元を訪れた。殿下の横には勿論、ジェラルドとフェリクス殿下もいる。


「しかし、ラングラルの正式な親善大使である二人をひとときでも罪人扱いするとは……。無礼極まる。公式にクレームを申し立てても良いくらいだ」

「デルーゼ王から既に謝罪は貰ってるんだからいいだろ」

「はい。それに大量の返礼品に加えて、輸出入の拡大もお約束いただけました」

「賠償金の代わりというところかな。まあ、そのくらいで手打ちにしとくべきだろうね」


 まだぶつぶつ言っているジェラルドを、アルフレッド殿下がまあまあと宥める。


「何にせよ、結果を出せたことは僥倖だ。陛下もお喜びだよ、アニエス。よくやった」

「ありがとうございます。お師匠様やジュディット、イザベルのおかげです」

 

 ジュディットとイザベルは返礼品の仕分けやチェックに追われているらしい。特にジュディットは病み上がりの上、旅から帰ったばかりだ。先ほど姿を見かけたが、かなり疲れた顔をしていた。


「彼女たちに特別報償金を出すよう、王妃様にお願いしたいのですが」

「それは良い考えだね。俺から母上に言っておくよ。……あー、それと。二人ともこの後予定はあるのかい?」

「いえ、特にありません」

「私も無いですよ」

「そこの男二人が、さっきからうずうずしているんだよ。少し相手をしてやってくれ」


 アルフレッド殿下がジェラルドとフェリクス殿下を親指で指した。


分かりにくいかと思ったので解説。

「私も無いですよ」はシャンタルのセリフです。大精霊士は国家を超越した存在なので王族に失礼を働いても不敬罪が適用されませんが、シャンタルは国王夫妻と王太子夫妻には敬語を使うというマイルールを自らに課しています。以前滞在した国で、王族にタメ口を叩いてトラブルになった経験があるからです。

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