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123. 疑惑

 今日はデルーゼの王族や高位貴族を集めた晩餐会が開かれており、アニエスも招かれていた。ジュディットはそこへ付き従っていたはずだ。

 何があったんだ……!?


 ほどなく、二人が戻ってきた。ジュディットは足元も覚束ない様子で、ナタリーに支えられて何とか歩ているような状態だ。その顔は真っ青である。

 私はすぐに彼女を寝かせた。


「申し訳ございません、シャンタル様……」


 息も絶え絶えなジュディットに「いいから寝てな」と伝え、アニエスから事情を聞き出すことにした。


「晩餐会の途中で、お腹が痛いと言い出したんです。ジュディットだけではなく、他の参加者にも何人か」


 一瞬、食中毒を疑った。

 しかし吐いた様子は無い。他の者も同様だったそうだ。

 

 ということは、何か害のある物を口にした可能性が高い。私は収納魔法から嘔吐薬を引っ張り出してジュディットに飲ませた。


「そういえば、アニエスは問題ないのかい?」

「私はあまり食べなかったので」


 辛いものが苦手な彼女は、出された食事を少量しか口にしなかったそうだ。

 念のためアニエスにも嘔吐薬を飲ませる。ゲーゲーと吐く二人を介抱している最中に、外から「アニエス様とシャンタル様はおられるか!」という声が聞こえてきた。


「何だい、このクソ忙しいときに!」


 来訪者は衛兵数名だった。部屋の前で警護していたディオンとシリルが、取り込み中だと制止する。だが衛兵たちは彼らを突き飛ばし、ドカドカと足音を立てて雪崩れ込んできた。




「アニエス殿、シャンタル殿。そなたたちには、陛下に対する暗殺未遂容疑がかかっている」

「はあ!?」

 

 衛兵に引きずられるようにして玉座の前へ連れてこられた私たちは、とんでもない言葉を投げ付けられた。

 玉座から私たちを見据える陛下の横にはエヴラル宰相と、重臣とおぼしき男性が数名。

 

「晩餐会の食事に毒が盛られていた。毒味役は重傷。王子2人と貴族数人が腹痛を訴え、現在治療中だ」


 晩餐会で最初に出されたスープに毒が盛られていたと思われる。遅効性の毒だったようで、毒味役は当初問題ないと答えた。宴の途中で毒味役が倒れた際は、すでに参加者達がスープへ口を付けた後だった。幸い、陛下や夫人たちは少量しか口にしなかったため無事である。

 と、宰相が淡々と私たちへ語った。


「そなたらは治癒を得意とすると聞いた。ならば、薬の扱いに長けているだろう?当然、毒もな」

「何だって私たちが、そんなことしなくちゃならないんだい?」と気色ばんだ私を、アニエスが押しとどめた。先ほど吐いたばかりで顔が青い。


「宰相様。私どもはラングラルとデルーゼの親交を深めるためにこちらへ赴いたのです。陛下に毒を盛って、私たちにどのような得があるというのでしょう?」

「あの場にいたのは王族か、アシャール王家に長年仕えている貴族だけだ。余所者であるそなた達が最も疑わしい」

「ですが、私の側近も毒を口にして倒れております」

「嫌疑を逸らすべく、命に関わらない程度の量を飲むことはできよう」

「そうだ!そもそも親交を装って、王宮へ入り込むのが目的だったのではないのか?他部族と組んで、アシャールの王制をひっくり返すつもりかもしれん!」


 横にいた年輩の男が叫んだ。


 完全に言いがかりである。だが、ここで暴れたら尚更疑いが深まるだろう。

 私とアニエスだけなら、衛兵を吹っ飛ばして逃げれば良いだけだ。

 だがラングラルの名を背負っている以上、下手な動きはできない。


 黙ってやり取りを聞いていたデルーゼ王が、ゆっくりと口を開いた。


「余の暗殺を目論む輩は他にもいる。嫌疑がかかっているのは、そなたたちだけではない。……だが、疑わしいのも事実。真実が明らかになるまでは身柄を拘束する」


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