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122. デルーゼ王という人

 アニエスはあれから、デルーゼの貴族たちと交流したり、イヴォン殿下の婚約者へ会いに行ったりと忙しく過ごしている。


 王宮の人々から向けられる目が好意的になってきたと、アニエスも感じているらしい。

 デルーゼの精霊士たちは、先日の聖牛祭で使った術にかなり興味を持ったようだ。あれはどんな術だ、どういう仕組みだと口々に迫られ、解説する羽目になった。

 色々議論しているうちに、なんだか仲良くなってきた気がする。ようやく技術交流の体を成してきたという感じだ。他国にはあまりいない闇の精霊士がデルーゼには多く、こうやって議論できるのは私も楽しい。


 ディオンとシリルは、手の空いたときは王宮騎士たちの訓練に参加させて貰っているらしい。

 この国では、幼子を神からの預かり物として大切に扱う。聖牛祭で子供を助けた彼らに、騎士たちは敬意を表してくれているのだそうだ。

 デルーゼ剣士の使う剣術はラングラルやエルヴスの物とはだいぶ違う、刺激的だと嬉しそうに教えてくれた。


 ナタリーとニコルは、何故か後宮の夫人や側仕えたちに大人気となっている。女性に対する戒律が厳しいこの国に女騎士はいない。そのため、女でありながら男のような騎士服を来て颯爽としている彼女たちが物珍しいようだ。


 今日も後宮の側仕えたちが、是非二人と話がしたいと押しかけてきた。暇なのか?

 残念ながらナタリーはアニエスの護衛任務があるため不在だが、ニコルが残っていたためどうぞどうぞと差し出す。

 「私の任務は護衛なのですが……」と二コルは嫌がっていたが、ついでに情報収集しといてくれと頼むと渋々出掛けていった。


 女の情報網は侮れないからね。


 目論み通り、戻ってきたニコルは色々と情報を仕入れていた。

 国王陛下や夫人たちの普段の生活、夫人の実家に関する情報まで……。

 機密ダダ漏れじゃねえか、と思わなくもないが。


 現在陛下の寵愛を受けているのは第19夫人。元は第12夫人に仕える侍女だったそうだ。


「ふうん。側仕えに手を出しているというのは本当だったのか」

「彼女の方が積極的だったと噂していましたが、そこは話半分かと」

「同じ側仕えが寵を受けたんだから、やっかみもあるだろうね」

「はい」


 夫人たちはもとより、側仕えたちも国王陛下を色のついた目で見ているのは何となく感じていた。


 あれほどの美丈夫で国の英雄、しかも最高権力者だ。そりゃあ熱い視線も送りたくなるというもの。

 側仕えの方から誘ったというのも、あながち嘘ではないだろう。


 しかも陛下は男盛りの年齢だ。

 英雄色を好むというし、後宮の美女たちから頻繁に秋波を向けられれば手を付けてしまうのもむべなるかな。


 ジェラルドだって、言い寄ってきた女性のほぼ全員を相手にしていた故の「女泣かせ」の称号だったらしいからな。

 だからといって浮気は容認しないが。


「それじゃ、家臣の妻を横取りしたというのはデマカセなのかね」

「いえ、それは……」


 第18夫人が家臣の妻だったというのは本当の事らしい。彼女は第14夫人の妹であり、嫁ぎ先で酷い扱いを受けていた。

 持参金は全て取り上げられ、言うことを聞かねば夫や義両親から殴る蹴るの暴行。だがこの国では、妻が夫やその親に逆らうことは許されない。日に日にやつれていく妹を心配した第14夫人は国王陛下に相談した。陛下は側室として召し上げるという形で、彼女を婚家から救い出したそうだ。


「へえ。結構良い人なんだな」

「はい。それに一度でも手を出した女性は必ず面倒を見るそうで、夫人たちとの仲は良好なようです」


 それでも女好きには違いないだろうが……少し見直したぞ、陛下。


 話題が重臣たちの下半身事情へ移った辺りでバタバタという足音がして、飛び込んでくる者がいた。

 アニエスに付いていたはずのナタリーである。


「シャンタル様!ジュディットが倒れました!」

「何だって!?」


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