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110. 元気な女騎士

 王太子殿下の執務室から退出した私は、ついでに精霊振興部へ立ち寄った。

 

「シャンタル様、おはようございます」

「おはよう、ブリス。また移住希望者から連絡が来てね。光の精霊士らしい。面談したら連れてくるから、諸々準備しておいて貰えるかい」


 入ってきた私を見て、振興部の若い職員ブリスが話しかけてきた。


 今年に入ってから、ラングラルへ移住を希望する精霊士が増えた。精霊振興部としては喜ぶべき事である。更なる活性化を促すため、ジェラルドの発案により仕事の斡旋の他、希望者には住宅斡旋や生活費の補助を行う制度を整えた。

 まずは私のほうで精霊士と面談をし、問題なさそうであれば振興部へ連れて来て申請させることになっている。


「ほう、光の精霊士ですか!」


 渡した身上書を見たブリスは嬉しそうな声を上げた。


 回復術を持つ光の精霊士はどこへ行っても重宝される。そのため、ラングラルのような山間の小国まではなかなか来てくれないのが悩みどころなのだ。


「シモンの紹介でね。精霊士に成り立ての若者だ。まずは王都で生活基盤を整えたいと言っているらしい」

「”燐光のアルカナ”シモン様のご紹介なら信用できますね。ええと、ご結婚はされておらずお一人暮らし、と。ならば下宿先を探しておきましょう」


 

 用事を済ませて廊下に出ると、そこで待っていたアニエスが誰かと話している姿が目に入った。

 一人はフェリクス殿下の護衛騎士、ロベールだ。もう一人は見覚えのない女騎士。

 若い娘だ。アニエスより3、4歳年上といったところか。


「シャンタル様。お疲れさまです」

「やあ、ロベール。そちらのお嬢さんは?」

「俺の妹で、ナタリーと……」

「お初にお目にかかります、シャンタル様!ナタリー・アルシェと申します!」


 廊下に響きわたる大声で挨拶された。通りがかった官僚たちが驚いた顔でこちらを見る。


「こら!少しは静かに喋れないのか」

「すいません、お兄様」

「職場では先輩と呼べ」


 叱られちゃったという感じで笑う彼女の顔は、なかなか愛嬌がある。

 ショートボブの髪は兄と同じ銀髪だ。顔立ちもよく似ているのに、受ける印象は全然違う。


 ナタリーは先日、見習いから正式に騎士へ昇格したそうだ。

 今はアニエスの護衛騎士を目指しているのだと、彼女は語った。


「私、お兄……いえ、ロベール先輩からアニエス様がとても優秀な精霊士で、あとお優しくて芯が強くてついでに可憐だということをよく聞かされてまして。だから私、絶対にアニエス様の護衛騎士になるって決めたんです!」

「ロベールお前、家でそんなこと喋ってるのか」

「ナタリー!余計な事を話すな」


 あまりに誉められていたたまれないのか、アニエスは困ったような顔で微笑んでいる。


 そういえば、護衛騎士にはどうすればなれるんだろ?試験とかあるんだろうか。

 私の疑問にロベールが答えてくれた。


「最終的には王家と騎士団上層部で判断します。剣の腕はもちろんですが、家柄や人品、行儀作法も必要ですので。後は再来週に開催される御前試合の結果次第ですね」

「御前試合?」


 三年に一度、若手騎士を集めて勝ち抜き(トーナメント)形式の試合が行われる。国王陛下並びに王族が観戦するため、良い結果を残せば出世の糸口になることも多い。逆にみっともない姿を見せれば貴族中の笑い物になるため、ナタリーの同輩たちは現在、血眼で修練しているそうだ。


 私とアニエスの席も取ってもらおうかな。

 せっかくだ。ナタリーの勇姿を見てみたい。


「ナタリーさんの腕前は申し分ないって、ニコルさんが仰ってました。頑張って下さいね」

「ありがとうございます!優勝できるよう、頑張ります!」


 相変わらずの大声で挨拶をしながら、ナタリーは去っていった。

 活きの良い娘だ。その元気、兄貴に少し分けてやった方がいいんじゃないか?


ロベールは実妹がお転婆なので、アニエスのような妹が欲しかったと思っています。シャンタルから話を聞いたフェリクスに問い詰められ、恋愛感情があるわけではないと言い訳をする羽目になりました。

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