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幕間6.1 閨教育~発端

幕間4直後のエピソードです。

「兄上、叔父上、おはようございます」


 収穫祭の翌日。

 客間に寄って婚約者(アニエス)に挨拶をしてから、俺は兄上の執務室へと出向いた。早めに出仕したつもりだったが兄上は既に机に向かっていて、叔父上と何やら話をしている。


「叔父上。朝食の時間になってもシャンタル殿の姿がなかったと、アニエスが言っていました。ご存じでしたか?」

「ああ……。昨夜はだいぶ飲んでいたからな。まだ寝てるんじゃないか」

「二日酔いですか。体調が悪いのならば、オーバン医師を呼びましょうか」

「いや、そこまではいい。しばらくすれば起きてくるだろう」

「でも、アニエスが心配していて」

「察しなよ、フェリクス」


 兄上がニヤニヤしながら横槍を入れてきた。


「何をですか?」

「昨夜、彼女は叔父上とお愉しみだったということさ」


 叔父上がゴホンとわざとらしく咳払いをする。

 ようやく事情を理解した俺は、彼へ詰め寄った。


「叔父上!結婚どころか婚約式すら終えていないシャンタル殿に対して、そのように不埒な真似を!?」

「別に無理強いしたわけではない。合意の上だ。互いに初めてでもないしな」

「……そういえばシャンタル殿のために予約した部屋が、アニエスの部屋からずいぶん離れていると不思議に思っていましたが。もしや、最初からそのつもりで……?」

「生娘のアニエスに、師匠の喘ぎ声を聞かせるわけにもいかんだろう」


 シレっと答えられた。

 何が悪いのか、と言わんばかりの表情である。


「商売女ならともかく、相手は叔父上の妃となる女性ですよ。自重しようという気は無いのですか!?」

「何を怒っているんだ。それより、お前の方こそどうなんだ?昨夜はアニエスと一緒だったのだろう。さぞ可愛がってやったのではないのか?」

「そんなことしてませんよ。話を逸らさないでください」

「え、まさか指一本触れてないとか言わないよね?」

「お前……本当に俺の甥か?」


 いや、指一本とまではさすがに言わないが。

 何なんだ、兄上まで。

 そういうことは、結婚式が済んでから挑むのが当然だろう。何で俺が非常識みたいに言われなきゃならないのか。


「ううむ。フェリクスにもそろそろ閨教育を受けさせた方が良いのではないか?」

「そうですね。年齢を考えれば遅いくらいだ」

「断固お断りします!俺は、アニエス以外の女性と同衾するつもりは」

「そう頭ごなしに決めつけるな。なかなか良いものだぞ。俺のときは年増の未亡人だったが、あれはあれで楽しめた。()()()教えて貰えたしな」

「俺のときは高級娼婦でしたね」

「アルフレッドの時は、適切な相手がいなかったんだ。独り身で経験豊富、かつ口が固くて後腐れのないご夫人となると、なかなか見つけ辛くてな」


 俺そっちのけで、二人はどこそこのご夫人やら娼婦やらの話をし始める。

 というか、身内の閨話なんて聞きたくなかった。


 すっかり頭に来た俺は「だから、不要だと言ってるでしょう!」と怒鳴ってしまった。


「だがな、万が一初夜で失敗したらどうする?それが切っ掛けで夫婦生活ができなくなり、仲が破綻するケースもあるのだぞ。そうならないためにも訓練は必要だろう」

「……それでも俺は、他の女性に触れるのは嫌です。もう、この話は止めて下さい。自分の執務室へ戻ります」


 俺はドアを乱暴に閉め、その場から立ち去った。


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