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93. 反省会

「あのくらい、上手く躱せるようにならなければね」


 サロンが終わった後、王妃様に呼び出された。本日の反省会である。

 今日はブリジット殿下も同席だ。


「どうにも慣れませんね、こういうのは」

義弟(ジェラルド)の妃となるのだから、慣れてもらわなければ困るわよ。あと貴方、話をほとんど聞いていなかったでしょう?」

 

 バレてた。


「そういう態度はすぐに見破られるわよ。それに噂話とはいえ、重要な情報が隠れていることがありますからね。きちんと耳を傾けなさい」

「……気をつけます」


 神妙に頭を下げる。

 お忙しい王妃様が時間を作ってご教示してくれているのだから、煩わしいとか思っちゃいけない。思っちゃいけないな、うん。

 頑張れ私。後でジェラルドに八つ当たりしとこう。


「それと、アニエスの後見についてはこちらでも考えていますからね。貴方は何も心配することはないわ」

「それはどういう……」

 

 王妃様が黙ってお茶を飲んだ。これ以上聞くなということだろう。

 しばしの間、沈黙が場を支配する。


「アニエスが帰ってきたら婚約式よね!盛大にやるんでしょう?」


 止まってしまった会話を繋げるべく、ブリジット殿下が話題を変えてくれた。

 アニエスより年下だが、こういう心遣いが出来る辺りは立派な淑女(レディ)だ。

 

「ええ、もちろん。王室の慶事はアルフレッドの結婚式以来だから、かれこれ5年ぶりだもの。腕が鳴るわね」

「楽しみだわ!私のドレスも新調して良いのでしょう?」

「もちろんよ。パメラと相談しなさい」


 パメラ・ドゥニーは王室専属の仕立て師だ。夫婦で仕立て屋を営んでおり、女性王族はパメラ、男性王族は夫の方が担当しているらしい。

 

 あれ?ということは、アニエスのドレスもパメラへ頼むべきなのだろうか。

 普段ドレスを新調する際は、王都の繁華街に店を構える仕立て屋アゼマに頼んでいる。彼女も王妃様経由で紹介してもらった。高位貴族のご夫人方も利用される人気の店なので、結構なお値段である。


 王室専属ならば、もっともっとお高いだろう。どれだけかかるか、考えるだに恐ろしい。


「何を言っているの。それは夫となる側が用意するのよ」


 懸念を口に出してしまっていたらしい。

 当たり前でしょう、と呆れ顔の王妃様が続ける。


「ああ、そういうものなのですね」


 マティアス元王子はドレスどころかハンカチ一枚もアニエスに贈ってきたことはなかった。そのため、私はそんなしきたりがあることすら知らなかったのだ。


 それを聞いた王妃様がため息をつく。


「元婚約者の話は聞いていたけれど……。聞きしに勝る酷さね」

「何て失礼なのかしら!決められた相手が気にくわないと言っても、最低限の礼儀は守るべきよ。ハラデュールの国王陛下は何も言わなかったの!?」


 ブリジット殿下は可愛らしく口を尖らせている。


「注意はしていたと思いますよ。他の王子たちはまともでしたから。あのバ……マティアス王子だけが何というか、特別でしたね」

 

 王妃様の前でバカ王子と言いそうになった。危ない危ない。

 また、言葉遣いが悪いと怒られてしまう。育ちが悪いのは仕方がないが、せめて表面だけでも淑女らしくしないと。


「そんな相手と婚約させられるなんて、アニエスも災難だったわね。結婚する羽目にならなくて本当に良かったわ」

「こちらも本意ではない婚約でしたからね。向こうが墓穴を掘ってくれて助かりましたよ」

「ある意味、その王子に感謝するべきかもしれないわね。おかげでフェリクスが、良い結婚相手に巡り会えたのだから」


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