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ならず者のヴァージン・ヴォヤージュ


カイトは優しい子だった。優しい子でいられた。

ペヨーテの村の人口は500ほどで村としてはまずまずの規模だったが、辺境な上に孤児は珍しかった。たまに事故で両親が亡くなっても大概は血縁が引き取って育てるのが常であった。


黒髪と黒に近い焦茶の瞳の組み合わせのカイトはペヨーテでも特段珍しい部類ではなく、日差しが強く湿度の低い地域柄で陽気な人が多く、受け入れられるのも早かった。


活気のある村だった。荒野を侵食するかの様な深い森「恵の坩堝(めぐみのるつぼ)」との境界に煉瓦と木造を組み合わせたような家が立ち並び、それぞれの家は思い思いの塗料で色鮮やかに塗装され、飾り立てるだけの生活の余裕があった。


元々は村の真ん中にあるオアシスを土台に拡がった村だが、300年以上の歴史を誇るペヨーテの最初期から生きているマラケス長老曰く、三十里(30km)ほど離れていたはずの北の森が長い時間をかけてその根を拡げて来たのだそうな。


その侵食力に対抗するために木こりも多く、林業は村の大きな収入源にもなっていた。

また、森を切り拓いた一部は薬草や、塗料や染料に混ぜる色粉の原料である鮮やかな花々も栽培している。


一方街道のある村の南側は一面岩と砂に覆われた荒野であり、植物はサボテンや転がる(タンブルウィード)程度のものであった。


「カイト!行商が来たぞ!」

「待ってよ兄さん!」


レインの実子であるヴェントゥスは左腕の欠損をものともせず、ヤンチャな子に育った。

収穫祭で使う3間(約540cm)の「太陽のトーテム」に登った時にはレイン以外は心配する以上に、ほぼ片腕でそこまで登ったことを感心していたぐらいだ。


「今日こそあるかな〜」

「あると良いね!かっこいいやつ!」


2人が探しに来たのは義手だ。

カイトが朧げな記憶を便りに語った「ピーターパン」のフック船長の片腕についたギミックを大層気に入ったようで、自分の左腕にもカッケー武器取り付けるんだ!と目を輝かせて宣言して以来村に立ち寄る行商人に義手を仕入れてくれ!とお願いして回っていたのだ。


とはいえ義手なんてそうそう売れるものでもないし、ヴェントゥスもまだ11歳だ。サイズがすぐ変わる問題もあるし、普通義手はオーダーメイドだ。

行商人達も大抵苦い顔をして子供の言うことだからとお茶を濁していた。


「ヴェン、カイト!久しぶりだな!」

「ランドおじさんも久しぶり!!俺の義手あった!?」


商人ランドは大聖堂のある大きな街サン・ペドロを拠点にするイシュタル商会の代表取締役であるテラル・ブランドルの四男だ。


「いや〜伝手を探して見たんだがね…」


そう言ってランドは顔を伏せた。


「あー…そっか。そうだよね〜…」

「兄さん…」


「あったんだよ実は!ピッタリのが!!」

「えぇ!!???」


そう言って取り出したのはジャラジャラと煌びやかな装飾の付いた腕輪だった。


「これがっ…俺の見つけてきた魔道具、幻影環(げんえいかん)だ…!」


そういってわざわざ取り出した高価そうなクッションの上に腕輪を鎮座させた。


「えーなんか思ってたのと違う」

「確かに。もっとゴツゴツした武器みたいなやつ想像してた」


カイト達が想像してた義手はフック船長のフックや、所謂「義手剣」なんかの欠損部位に装着する硬質な武器や道具の類いだった。


「まぁそういうな!これは凄いぞ〜!なんせコレは幻影魔法で有名なあのグレゴリウス1世が自作、使用してたもので、魔力に反応してどんな形にも変化する実体を持った幻影が出せるんだ!」


そういってランドは自分の左手に嵌めて見せた。

すると青白く光る膜の様な物が手を覆い剣や鞭、盾や、鉄鋼鉤(バグナク)の様なものに変化させてみせた。


「もちろん普通の手だって作れる!」


最後に手の先に一回り大きな手を作ってみせた。


「おおーー!!こんなの最強じゃん!!おじさん俺これ買うよ!!!」

「でも…お高いんでしょ?」


ヴェンはテンションが上がり、カイトは腕輪の能力の高さ故に買えるのかどうかを危ぶんだ。


「まぁな…精一杯値下げしても金貨15枚ってとこだ」

「たけーー!!!」

「そんなお金払えないよ…」


11歳と10歳の子供ではとても金貨15枚は払えない。2人の小遣いは月に銀貨1枚。これでもこの国の水準では高い方だ。


「そんな君達に提案があるんだがね…」


そう言って荷物から小さな物を二つ取り出した。


「これらに見覚えはあるかい?」


一つは金色の虫の標本。もう一つはガラス細工の様な小さなサボテンだった。


「見たことある!収穫祭でトーテムに飾る黄金スカラベとクリスタル・カクタスだ!」

「黄金スカラベなら僕らも取った事あるよ!」


それを聞いてランドがにやりと笑った。


「この二つを取ってきてくれたら交換してやっても良いぞ!クリスタル・カクタスはデカいやつだったり、追加で持ってきてくれればお駄賃もやる!」


ヴェントゥスとカイトは顔を見合わせて2秒ほど思案したが、どちらともなく頷いて駆け出した。

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