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ならず者のリインカーネーション


ああ


終わった。


俺の人生は潰えた。


果たして意味のある人生だったろうか。


子もおらず、親には頼ってばかりで孝行する間もなく先に逝ってしまった。


俺の歌は一度でも誰かの心の奥底に刺さる棘を抜いただろうか。


歌を教えてた生徒は俺みたいにならないで済むだろうか。


世の中に絶望したままだったら後悔も無く逝けただろうか。



俺の魂は…どこへ行くだろうか。




視界が開けてくる。…視界?見える?俺、生きてる?

というか今瞼を開けた?そんな感覚…


「無かったよね」


!!??????


「はじめまして。僕はウロボロス。輪廻転生を司る蛇さ」


…蛇?たしかに見た目は蛇だけど…神とかその類いじゃなくて?


「僕は自分が神であることより蛇である事にアイデンティティを感じててね!君たち人類に”知恵の実“を与えた蛇とは僕のことさ!」


それってキリスト教とかユダヤ教的には悪魔じゃねーか!


「あはは!“彼”から見たらそりゃ僕は悪魔だろうね!彼の間抜けな被造物はそりゃもう家畜と同じで食っちゃ寝の盛りまくりで文化とか知恵とか何も感じなかったよ。見た目や機能や構造は面白かったけどね!」

「“彼”はどうやら自分の被造物が自分に並び立って神性を得るのを良しとしてなくてね。絶対に神性を得られない家畜をエデンという箱庭に放って、それで満足していたんだ。だから彼が間違って神性を与えてしまったリリスと共謀してね…」


それで人類は知恵を得て永遠の命を失い、エデンの園を出て今に至ると…


「元々永遠の命なんてなかったよ?僕が齧ったらすぐ死ぬしね。アダムとイヴだけは特別だったみたいだけど…元々他の神が練習で作った原始世界を“彼”が七日でリフォームしたのが地球さ!デザイナー気質みたいで、良くも悪くも自分が他人の物に手を加えるのは良いが、自分の物が変えられるのは嫌だったみたいだね!」


そんな理由なのか…


「考えてみてよ!ソロモン72柱の悪魔とか他の宗教の神のオンパレードだからね!自分でエデンを追い出しておいて他の神を崇めるのは許さない、とかメンヘラの極みだよ」


随分今風の言葉を使うんだな


「そりゃあ神は退屈だからね。大体の娯楽は網羅してるさ!SNSもね!閲覧だけだけど…」


そうか…それにしてもお喋りな神だな


「退屈してるって言ったでしょ?インタラクティブな娯楽は久しぶりなんだよ!神性を得た人間なんて実に人類史始まってから十三人しかいないから、なかなか人間と話すなんて無いんだよ!」


へ〜いっぱい偉人やら聖人やら居たと思うんだけどほとんど神性?とやらを得るには至ってないのか


「そうだね〜世界の構造や法則と、心や精神の本質を両方理解する必要があるからね〜」

「ちなみに君がその13番目だよ?」


!!!?????


「運がいいね〜死ぬ直前に両方の理解を手に入れてしまうなんて!宝くじより凄いよ!」


俺は宝くじを当てて生きていたかったよ…

というか、その神性とやらで生き返ったり出来ないのか?


「無理だね。君の肉体は死んで精神と肉体の優位性が“反転”した。ここの世界では顕現できないよ。…今のところはね。薄々気づいてるでしょ?」


まあな…しかし…親孝行したかったな…自業自得だが…


「わかるわかる〜親御さんに今までの恩返しとか色々あるよね〜してあげたいよね〜」

「そんな君に朗報だ!」


お…!?


「まず君は神性を得たが、まだ神ではない。神には神話が必要だ」


神話……?


「その神話は君自身が紡がねばならない。よって、輪廻転生を司るこのウロボロスが地球と対になる世界“カラビヤウ”に君を転生させる」

「そこで神話や抒情詩になるような偉業を成せ。悪名でもいい。さすれば君は神へと昇華し、そのご褒美兼準備期間として一度だけ人生をやり直せる」


!!!!!!


「しかも、その神昇格の試験とも言える神話作りは何度でも挑戦できる!君の魂は神性を得て精神と強く結びついたから、次の輪廻でも記憶を持ち越せるんだ!」


なんてイージーゲーム!!というか強くてニューゲーム!??


「いや、まぁ難易度が高いから何度でもリテイクできるとも言えるんだけどね?リテイクした結果神話が何個か重なって同一視されてるのに別名の神がいたりするのはその結果なんだけど…とにかくいつかは達成出来るのは間違いない!」


あ、なるほど…流石にそんな簡単じゃないか…


「というわけで早速カラビヤウへ転生するかい?もしまだ何か聞きたい事があるなら今のうちだよ?」


そうだな……最後に、最後に一度だけ両親の顔を見たい。


「君は…うん。そうだね。それぐらいなら良いだろう。まだ君の両親は寝たばかりだ。寝顔だけになるだろうけど、良いね?」


もちろん、それで良い。心に焼き付ける。


「よし、じゃあ連れて行こう」


蛇に連れられていつのまにか実家に居た。眼下には、還暦を迎え年老いた両親の顔。

どんなにやさぐれても体調を崩しても俺を助けようとしてくれた、肉親の顔だ。


父さん…母さん…

俺、行ってくるよ…必ず、親孝行しに戻ってくるよ……貰った優しさを、愛情を返しに来るよ…!!


「もう良いかい?」


あぁ…もう心は決まった…


「じゃあカラビヤウに向かうよ。セフィロトの木を伝ってすぐ近くの別の枝に行くだけだからすぐだよ」


そういうと俺の魂は蛇の体に吸い付くようにして張り付いた。そのまま垂直方向に、うねりながら宇宙へ登っていく。

肉眼では見えなかった魂や、さまざまなエネルギーが地球へ降り注ぎ、また放出されているのが見える。


登りゆく途中で、一際強い輝きを放つが、明滅し、力を失いゆく歪な魂が見える。


あれは…?


「あれは死にかけの赤子の魂だね。しかも双子だ。兄…と言っても数秒の差だが、兄の魂が弟の魂を蘇生しようとしてる。きっと地上では母胎内の弟だけなんかの理由で死産しそうになってるんじゃないかな。兄もこのままじゃ死ぬね。死ぬ、というか生まれてこれない感じか。まぁ来世に期待さ」


そんな…!!


「あれを助けるなんて無理だよ。自然現象だし、成熟前の魂なんて何にも理解出来ないんだよ?その辺の野生動物よりも助ける意味がないじゃん。助けようと思ったら相当な神性リソースが必要だ」


なんだ…出来るんじゃないか。俺のを使え。俺の神性を。


「ハァ!?何言ってんの!!?あの双子を助けるのになんか神性を消費したら…まぁ転生はギリギリ出来るけど、記憶の保持も不完全になるし、神性の低さゆえにカラビヤウで神たる強い力は使えないし、なによりコンティニュー不可、一回限りの転生になっちゃうよ!!?一回で神話を打ち立てたやつは居なくはないが、ごく少数だ!」


そんなんで良いのか?てっきり俺が消滅するぐらいまで消費するかと思ったが…

その程度なら悩む必要もない。やってくれ。


「はぁ……分かったよ。これから君の神性を使って彼らを”祝福“する。おめでとう。もし君が神話を紡げたら、彼らは使徒一号と二号になるのかな?彼らには地球人基準で言えば最上位の生命力と叡智が約束され、君の神性に乗って君の記憶の残滓が植え付けられる。そして、地球上においては”運命の死“を超えた先の生なのであらゆる危険と苦難は影を潜めるであろう」


いやーおめでたいね!俺に兄弟や子供は居なかったが、子供が出来たみたいな気持ちだ…!

大きく育てよ…!!


歪だった魂が、二つに分かれ、それぞれ完全な形へ戻って2人仲良く戯れ合うようにして地上へ向かっていく。これで良いんだ。これで少しでも地球で生きた糸継回斗という人間の人生に意味があったと思える。


よし


行こうか



「これより君は異世界”カラビヤウ“にて神話を打ち立てる。チャンスは一度きり、ハードモードだ。必ず成し遂げろ。僕が見込んで、見送った神性なんだ。必ず神になってまた会いに来い」


もちろんさ!

世話になった!また会おう!


気付くと俺の視界はまたもや色鮮やかな幾何学模様に埋め尽くされ、その内意識は混沌に飲み込まれた。




「やれやれ…僕のツバつけた神性にちょっかいだすとはね…」

「最後の最後で”自己犠牲“による神性の加算か…赤子2人の命と引き換えじゃあメサイアのような偉業には及ばないが、僕と紐付いた”螺旋“の力だけでなく、間違いなく”彼“の持ついずれかの力の残滓は芽吹くであろう。計算外だが…面白いじゃないか。輪廻とは混沌がなければ意味がない。しばらく退屈しないで済むな」



そうして神を名乗る蛇は大きな体をくねらせて宇宙の果てへと泳ぎ出した。

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