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ならず者のプロローグ
-20XX年の地球-
東京の片隅。オンボロとまでは言わないが、それなりに築年数のするアパートの一室。
そこに糸継 回斗という男が居た。
彼は今年で31歳。
本当はミュージシャン…シンガーになりたかった。
家には安物だが防音室も入れてるし、メジャープロのバックコーラスもした事がある。
PCは比較的得意だから自分でミキシングも出来るし、人に歌を教えられるだけの知識も持っている。実力だって…多分、ないわけじゃない。
しかし、回斗にはシンガーになりたい気持ちはあっても、伝えたい言葉も、気持ちも、何も見つけられなかった。他人の心どころか、自分の心も理解ができなかった。
結果、簡単なバイトと副業のボーカルトレーナーの掛け持ちでなんとか食い繋ぎ、たまにライブで歌う程度の生活。
そのライブでもほとんどがカバーで、己の心からの言葉を紡ぐ事は出来なかった。
日々擦り減って行く精神に、回斗は大きな危機感を覚えていた。既に「死にたい気持ち」は心の器から溢れる直前まできていたが、回斗は死にたくなかった。死に至るほどの心痛や精神の摩耗を良しとしなかった。
そのため回斗は少しばかり…違法な手段を用いてでも人生を打開しようと決心した。




