3.俺流の戦闘
俺たちは安息の森の奥へと進んでいく。
やがて木々の色が変化し、見渡す限り濃い緑色だった葉が、透き通るような鮮やかな緑色の葉へと色合いが変化した。
(ふむ…入り口あたりについたようだな。)
どうやら入り口の部分に着いたようだ。
僅かだが、空気というかそういうのが変わった気がする。
直感みたいなのがそう伝えてくる。
「ヴァイス。この森は安息の森に比べてモンスターもそれなりに強くなっているようだぞ?」
フローラも感じ取ったようで俺に問いかけてきた。
「だろうな。そもそも奥に位置する森さ、人間が安易に突っ込んでくる森じゃない。モンスターも立派な奴らが増えてくるだろうな。」
「まぁ、アナタなら全然問題ないでしょうけど」
まるで結末を知っているかのように話すフローラ。
「さぁな?冒険に危険や予想外の出来事は付き物さ。よし、油断せずに行くぞ。」
(どうだか…この男は。全く油断も隙もないな。)
さて、何か良い発見がこの森で出来ると良いが。
『グルルル…』
歩いていると何匹か 中くらいの白い毛の狼と遭遇した。
こちらを見て威嚇をしている。が、攻撃はしてこない。
(ホワイトウルフか…。)
どうやらここら辺はこの狼の縄張りのようだ。
荒らす気はないので最低限で済ませる。
【スキル:フリーズ(弱)】
氷系の魔法を使用して、襲われる前にさっさとモンスターは通り抜けよう。
無理な戦いや殺し合いはしたくないし、足止め出来れば十分だ。
『グ…ガッ?!……………(ピシッ)』
ホワイトウルフが凍結された。
が、弱に設定したため数秒したら溶けて動けるだろう。
(すまない、すぐ縄張りから抜ける。)
俺はホワイトウルフの横を通り抜けて進んでいった。
「普通は群れと合ったら動揺したり、露骨に戦闘態勢になるのにヴァイスは変わらないわね、相変わらず」
「まぁ取り乱したら不利になるのは確実だからな。いつも通りの自分が一番ってのは俺が一番わかってるさ。こっちが武器を構えたら、かえって向こうを刺激しかねないしな。」
少しして。
「グルゥ…ル…ァ??」
魔法が溶けたホワイトウルフ達が周りを見渡す。
(???)
ウルフ達は先程までいた男が居なくなっていたため、辺りを見渡した。
見渡すと、ホワイトウルフの後ろに男が居るのを見つけ、既に森の先へと進んでいた。
(…………。)
「グルゥ……(スタスタ)」
ウルフ達は男の後を追わずに森へと戻っていった。
男がウルフ達を殺したりしない事が伝わったのだろう。
誰一人、誰一匹傷つかずに事は済んだという。




