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39 女子トーク

本日、二話目投稿です。

…ん?日付が変わったから違う?


えっと、連投です。


 二年生も、間もなく終わるという頃、レティが寮でお茶会を開くということで、私も招待して貰えた。


 そのお茶会には、基本的にレティと普段仲のいいAクラスのメンバーと、私に気を使ってくれたのかシャーリーとクロエも呼ばれ、学院生活を振り返る。


 はじめは、学院生活でのあるある話や授業中、魔法実習について等の思い出話だったが、だんだんとその内容は変わってくる。


「そう言えば、この間の魔法実習でハルバート様の戦い方を見る機会があったのですけれど、本当にお強くてつい見とれてしまったわ」

 誰かがそう言えば、

「ええ、魔法披露会の時のリューク殿下との魔法合戦も本当に素晴らしかったわよね」

「そうね!しかもハルバート様は成績も優秀で、何よりとっても紳士的だわ!こちらの小さな困り事に気づいてくださって、さりげなく手を貸してくれたりとか、細やかな心配りに惚れ惚れします」

「あの、クールな目線がまた痺れますよね」


「私はバルティス様が素敵だと思うわ!魔力はないのにあんなにお強くて頼りがいがあって!」

「クロエさんは同じクラスでしたっけ?羨ましいことですわ」

 クロエに話が振られて、クロエは苦笑した。

「ええ、バルティス様は、いつもBクラスをまとめてくださっていて、いつも心強いです」

 クロエの言葉に、周りから、ああ…と、感嘆の声が漏れる。

「あの身体も素敵ですわ。前に剣技の練習の後、袖を捲っていらしたのですけれど…他の方とは筋肉のつき方が全然違いますの」

「あの方に抱きしめられたら、私卒倒してしまうかもしれませんわ」

…などと、好みの男性の話に変わってきた。

「筋肉と言えば…、リューク殿下も細身ながらしなやかな筋肉を持っていらっしゃいますわよね」

「殿下は本当に完璧な王子様ですわ。レティシア様を本当に愛されているのが伝わってきますし、羨ましいです」

 そんな風に言われて、レティは控えめに微笑んだ。

「有難いことです。リューク殿下は本当に努力を怠らない方で、私も身が引き締まる思いですの」


 レティは言われるのが好きではないのか、それ以上のことは言わない。

「王子様と言えば、エドワード先生も王弟という立場にありながら、私達の指導をしてくださるし、とても穏やかな雰囲気で素敵ですよね」

 誰かが空気を読んだのか、王家繋がりでエドワード先生の名前を出した。

「え、ええ、そうね。授業で上手く出来なくても怒ったりせずに最後まで根気よく見てくださるし」

「何より、あの大人の雰囲気が素敵ですわ。お相手がいないことが不思議ですわね」


「大人と言えば…、今年アリアさんの護衛につかれたカイル様もとても落ち着いた雰囲気ですわよね」

 突然、カイルの話になって私は動揺してしまった。

「そ…そうでしょうか」

「そうですわ。カイル様と言えば、火と風属性なのに話しかけてもどこまでも冷たい態度で氷騎士なんて呼ばれてましたのよ」

「え…?そうなのですか?」

 カイルの冷たい態度を想像できずに驚いてしまう。

「ええ、アリアさんとよく話すようになってから雰囲気が変わりましたよね」

「そうですわ!最近なんて特に変わりましたよね!たまに微笑まれている時もあって…。アリアさんは、いつからお付き合いを始めましたの?」

「私もお二人の馴れ初めをお聞きしたいですわ」

 何故か注目される。

「ま、待ってください!お付き合い…って何ですか。カイルは私の護衛の任務をしているだけで、そんな関係ではありません!」

 動揺しながらも、はっきり答えると、周りの目が見開かれていく。

「…え?お付き合い、されていない?」

「まさか…あれで?」

 何で驚かれているのかわからずに、助けを求めるようにレティを見れば、レティの目も見開かれていた。

「あの…っ、そりゃあ…カイルは本当に素敵な方だと思いますけれど、私なんかじゃ釣り合わないじゃないですか…」

 いたたまれなくなって、だんだん声が小さくてなってしまう。

「え…、だって」

「どういうことかしら?」

「まだ、肝心なことを…?」

 何故か周りはざわついている。え?公開処刑ですか?

私が片思いなの、皆わかってますよね?

「…ん、んんっ」

 レティが咳払いすると、一瞬静かになった。


「雰囲気が変わられたのは、キルア様もじゃありません?」

 また、誰かが話を変えてくれた。

「そうですわね。去年までは、全然授業や生徒のいる棟には寄られませんでしたけれど、今年はよく見かけましたわ」

「人づきあいが苦手とのことでしたが、少し会話もしてくださるようになってくれましたわ」

「そう言えばシャーリーさんも最近よくキルア様とお話されていらっしゃいますわよね」

 今度はシャーリーに話を振られて、シャーリーはキョトンとした。

「…え、ええ。そうですわね。魔道具についてよくお話しますわ」

シャーリーが答えると、また違う声がする。

「キルア様は素晴らしく天才肌で、研究熱心ですわよね」

「制服は少し雑に着られているのに、長い金髪はいつも綺麗にまとめてらっしゃって、歩く度に揺れる髪はつい見てしまいますわ」

「笑顔も本当に素敵で、キルア様が笑顔だとこちらまで何だか嬉しくなってしまいますよね」

「あれだけ変わられたのなら、三年生になってもっとお近づきになれたら嬉しいわ!」



 結局、恋愛トークというか、誰がどれだけ素敵かを語りあって、お茶会は終わった。



「アリア、少しいいかしら?」

 皆と同じように自室へ戻ろうとしたら、レティに声をかけられた。

「レティ、どうしたの」

 私が振り返ると、レティは何かを考えていた。

「えっと…さっきの会話だけれど」

「ああ、何か、さすが攻略対象者だよね。皆すごい人気だった」

 そう言って、先ほどの皆の熱気ある会話を思い出す。

「ああ、…そうね。いえ、違うのよ。カイルと、付き合ってないって。上手くいったんじゃなかったの?」

 レティが眉を寄せて聞いてくる。

「え?…あの時のリューク殿下の言葉の意味って、そういうことだったの?まさか。あの朝は、一年生の時にカイルがずっと私を警戒していたことを謝罪されたのよ。私には、学院巡回しているって嘘をついていたって。だから、私も前世の記憶があることを伝えたの。あ、レティのことは言ってないわよ。だから、これからは(わだかま)りなく、いい関係性を築けるという意味で…」

 

 私が、あの朝のことを説明すると、レティの眉はもっと寄っていく。

「アリアの告白の、答えは?」

「は?!あ、あれは別に…カイルに向けて言った言葉じゃないし、答えなんて聞いてないわよ…。でも…拒否られては、いないと、思うんだけど…」

 一瞬驚くが、実際に答えを聞いていないので、自信がなくなってしまう。


「そう。カイル様は存外ヘタレだったのね」

 レティがタメ息をついてそんなことを言うので、少しムッとした。

「カイルはヘタレなんかじゃないわ。あんなに素敵な人はこの世界であの人だけよ!」

「え?この世界で一番素敵なのはリューク殿下に決まってるじゃない」

 今度はレティがムッとした顔をした。


「何を言っているの?あんなに優しくてきめ細やかな心遣いのできる人なんて他にいないわ。背も高くて護衛服が似合って、黒髪が陽に透けると本当に綺麗なのよ」


「あなたこそ何を言っているの?優しくて心配りができて何よりお心が広いのはリューク殿下よ。背はカイル様に比べれば小さいけれど一番見映える高さで学院の制服をあんなに素敵に着こなしている人はいないわ。何より陽に透けて輝く最高の金髪よ!」


「レティにとってはそうかもしれないけれど、私にとって一番カッコよくて一番安心できて一番素敵なのはカイルなの!」


 そこまで言い合って、二人とも肩で息をする。結構興奮したらしい。すると、レティが、すっと無表情になった。

「…私達は、何の話をしているの」

 私も一瞬で無表情になる。

「カイルとリューク殿下どちらのが素敵かって話よ」


 暫く沈黙が落ちた。何だか気まずくて、レティをチラリと見たら、レティもちょうど私を見て目があう。

「「ふっ…あはは」」

 何がおかしいのかもわからないが、何だか二人で笑ってしまった。

「カイルもね、たまに、こうやって声をあげて笑うのよ」

 ふと思い出して、愛しくなった。

「へえ?あのいつも無表情のカイル様が?意外ね」

 レティが軽く目を張った。

「ええ。確かに無表情が多いけれど、最近は色々な表情を見せてくれるの」

 カイルを思い出して、ほんのりと胸が暖かくなって思わず口元が緩んだ。

「そう。よかったわね。…私は、あなた達二人を見守っているわ」

 レティが、そう言って微笑んでくれたから、有難うと返す。

「…もし、私が泣くようなことがあったら、慰めてね」

 

 あと一年が経つ頃、私は泣くかもしれない。ただ、見ているだけでよかった恋は、予想以上に膨らんで欲が溢れてしまっている。ずっとそばにいたいと、望んでしまっている。少し切なくなって、冗談のように慰めてとお願いしたら、レティは胸の前で拳をつくった。


「任せて。アリアが、万が一泣くようなことがあれば、私の闇属性で縛りあげて、懲らしめてあげるわ」

 ふん、と鼻息を鳴らすので、そんな事はお願いしてないわ、と笑った。


 ゲームとしても、小説としても、あと一年で終結となる。現実のこの世界で、どんなエンディングを迎えるのかわからないけれど、未だ自身に回復できない理由はわからないままで、魔物大量発生事件も防げるのかわからないけれど。



「ねえ、レティ、あと一年経つ頃には、エンディングね」

「そうね。出来れば、ハッピーエンドを希望だわ。ヒロインであるアリアは幸せになるのよ」

「私にとってのハッピーエンドは、レティが幸せになることだわ。ヒロインはレティよ」

「そうだったわね。この世界にとっての、最善の選択肢を選んでいきたいわ」

「ええ。結果がノーマルでもバッドでも、それが私達が受け入れざるを得ないトゥルーエンドだもの」

「トゥルーエンド…。そうね。この世界にリセットボタンなどないのだから。頑張り、ましょうね」

「ええ。お互いに」



 ハッピーエンドを迎えるゲームにも小説にも、細かい選択肢は描かれていないのだ。でも、ただひとつ、解っていることがある。


 強い心と、諦めない気持ちを持ち続けることだ。






 ラスト一年、改めて気を引き締めようと思った。





キャッキャウフフな内容を書きたかったんですが、ラストが少ししんみりしてしまいました…。


ブクマや星ポチ、有難うございます!

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