表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/57

21

魔力属性の説明が間違えていたので改稿しました。はじめ基本4種類と書いていましたが、5種類です。


 この国は比較的温暖地で、前世の日本とは違い過ごしやすい気候だ。四季というものはあるものの、冬に雪が降る地域はこの国の中ではごく一部の地域だけであった。

 最近は特に暖かくなってきて、春の陽気を感じられる日が多くなってきた。今年は、いつもより早い時期に春の花が見られるようになるだろう。


 そんな、あと数日で一学年が修了しようという日に、魔法の披露会が開催された。


 今年の一学年はリューク殿下をはじめ実力者揃いなので、見学席は色めきだっていた。

 

 まずは下級クラスからだ。同等の実力を持った相手と向き合い、まずは強化魔法。

 次に一人が防御を展開し相手が攻撃魔法を仕掛ける。その後、攻防を替えて披露していくというもの。

 万が一、魔力暴走や圧倒的差が出てしまった時の為に、エドワード先生をはじめ魔法実力者の教師が近くで待機している。


 魔力の属性は基本的に火、水、緑、雷、風の5種類プラス特殊属性として光と闇があるが、攻撃も防御も個人の想像力によるもので、属性にあわせた個性ある魔法が繰り広げられるので見ているだけでもかなり面白い。


 例えば、火属性の防御ならそのまま炎を纏う人もいれば炎から発生する煙を鎧の形に変化させたり、水属性の攻撃なら鉄砲水のように直接水をぶつけたり冷気を発生させ氷の剣で斬りつけたりと工夫がいくらでもできるのだ。

 貴族間では魔法の芸術性を競う大会もあるのだと座学で習った。


 下級クラスが終われば中級、そして上級クラスへと順番が回ってきた。

 私の魔力はかなり強い部類に入るということで、ラストから二番目だ。

 相手はレティシア。特殊属性には特殊属性で、ということらしい。

 ちなみにラストはリューク殿下とハルバートである。

 本来リューク殿下の相手はキルアだったらしいのだが、どうやら魔法は披露する為のものではないとか何とか言ってこの行事すらもすっぽかしていた。結局彼が何属性の魔力を持っているのかは未だにわからないままである。

 

 さすがに上級クラスの魔力のぶつけ合いは、見た目から違う。

 攻防時の爆発音の迫力も、中級クラスまでの魔法がまるでお遊戯かのようにさえ感じるほどだ。

 私はこのクラスしか見てなかったので、見学者から聞こえる感嘆の声で色めきだっていた理由を理解した。


 いざ、自分の番がやってきて、会場の真ん中でレティシアと相対した。

 私も緊張しているが、彼女の表情からも緊張の色が少しだけ窺えた。無理もない。

 イベント発生だからだ。


 レティシア様が小説の中で説明していたゲームは、この披露会でヒロインは極度の緊張により魔力を暴走させてしまう。

 ゲームの悪役令嬢であるレティシアはそれに対応できず深手を負ってしまうのだが、ゲームではヒロインが故意ではないことから何の罰も受けないどころか、レティシア自身は実力不足だとレッテルを貼られ、それからさらにヒロインへの悪意を深めるというものだった。

 ちなみに私が読んだ小説は、悪アリアはわざと魔力を暴走させようとし、レティシアは見事それを防ぎ賞賛されていた。

 悪アリアは魔力を暴走させた弊害で数日寝込んでいる。そこまでしてイベントを発生させてレティシアを悪役にしたかったのかと、少しだけ感心したものだ。


 私は確かに緊張しているが、魔力操作はほぼ完璧だ。

 最大出力を出したことがないから自分自身の身としては知らないが、魔力が完全に枯渇すると魔力が少ない人でも丸1日、多い人は数日間寝込むことになる。

 かなり身体がキツイらしく、授業でも魔力は絶対に枯渇させないように言われていた。

 暴走しない自信はある。少し前の自分ならわからなかったが、カイルの助言により攻撃魔法も完全にコツを掴んでいるのだ。

 なので…レティシア様そんなに警戒しないで!とも言えず、とりあえず深呼吸してレティシアと向き合った。


「まずは強化から、はじめ」

 エドワード先生の声が聞こえて、自身に強化をかける。

「では、先攻はレティシアさん、アリアさんは防御を」

  そう言われて、私は光の衣を纏った。ペカーっと光るので少し恥ずかしい。

 レティシアは右手から腕にかけて黒い闇の魔力を出現させた。

 光に当たり少し紫がかって見えた。周りからどよめきが起きた。今までの一年生の魔力と色味が全く違うからだ。

「…行きます」

 レティシアが短く言い放つと、瞬間私の目の前にレティシアがいた。

 魔力を纏った右手を大きく振りかぶり、私に向かって振り下ろす。無意識に両腕を胸の前でクロスさせて攻撃を防ぐ。


 ドゴォン!という音とともに魔力がぶつかり、私の身体はその威力に押され1メートルほど後退した。

 さすがレティシア様だと尊敬する。


「なおってください」

 エドワード先生の言葉で、お互い元の位置に戻る。

「次に、後攻アリアさん、レティシアさんは防御を」

 レティシアが濃い紫の魔力のローブを纏った。

 如何にも大魔法使いみたいなイメージで威圧感さえ感じる。

 私はクロスボウを持つように構えた。右手から左手にかけて光の矢を出現させる。

 大丈夫、威力調整はできている。

「お願いします」

 私が攻撃の合図として一言呟けば、レティシアの表情が一気に固くなった。力を込め矢を放つ。

 レティシアは、その矢が目の前まで来た瞬間を狙い左腕で弾いた。


 キィーン!と甲高い音をたて、光の矢は空高く飛んでいき消滅した。

 レティシアは一歩も動いていない。だが、上手く弾くことができたせいか少し安心したような顔をしていた。


 おおっ!という歓声とともに、凄いだのさすがだのと見学者達から聞こえた。

 私もほっとして、互いに改めて向き合い、お辞儀をして見学席へと戻った。

「アリア!お疲れ様。やっぱり凄いわね!」

「素敵な魔法だったわ。レティシア様と相対しても堂々としていて、見惚れてしまったのよ」

 見学席が近いクロエとシャーリーが話しかけてくる。

「有難う。とても緊張していたのよ。終わってほっとしてる」

 そんな風には見えなかったと言われ少し嬉しくなっていると、周りが一気にざわついた。

 会場に、リューク殿下とハルバートが登場したのだ。


「まず強化からはじめ」

 エドワード先生の声が響いた瞬間、しん、と静まり返った。

 ただでさえ二人とも存在感が凄い上に、強化魔法のみで完全に皆の心を掴んだ。二人ともラストに相応しい洗練された魔力であった。

 もちろん攻防はもっと派手だった。

 ハルバートの雷属性の魔力は、遥か東方に位置する国に架空の存在と言われる龍を型どりリューク殿下へと向かい、それを火属性の防御魔法として発動させた炎の獅子が呑み込んだ。

 ハルバートが雷光で身を包み防御魔法を完成させると、リューク殿下は不敵に笑う。

 右手を上げ人差し指でハルバートを指した瞬間、眩く光る稲妻がハルバートを襲った。

 魔力が均衡してぶつかり合い、バチバチィッ!と音がして弾けた。


 ラストパフォーマンスに相応しい魔法披露であった。


 互いにお辞儀をした後、リューク殿下はそのまま残る。

「一年生の魔法披露は、これにて終了です。最後に、特別入学のバルティスとリューク殿下による剣舞をお楽しみ下さい」

 アナウンスが流れると、ハルバートと入れ替わるようにバルティスが登場した。

 バルティスが剣を構えると、リューク殿下は水属性の魔力を練り氷の剣を出現させた。

 相対し、互いに視線を交わす。そして、剣舞は始まった。

 二人の流れるような自然な動きと呼吸を合わせたパフォーマンスは、ここにいる全員を魅了する。誰もが視線を外すことなく、最後まで見守った。

 剣舞が終わり、二人が見物席に向かってお辞儀すると、割れんばかりの拍手喝采が起こった。

「こんなに盛り上がったのは学院始まって以来初めてかもしれませんね」

「ああ、さすが今年の一年生は格が違う存在ばかりですよ。リューク殿下も立派になられた」

 近くにいた教師達の会話が聞こえた。本当に素晴らしかったと思う。私も皆と同じように立って拍手を送り続けた。


「それではこれにてー…、え?あー、少々お待ち下さい」

 アナウンサーの様子に首をかしげていると、アナウンスの声が変わった。

「皆様、落ち着いて聞いて下さい。今、報告がありまして、中型魔物である鳥竜の群れがこちらに向かってきているそうです。可能な人は迎撃態勢、そうではない人は防御、避難をお願いします」

 

 その言葉を聞いて、周りから驚いた声や悲鳴すら聞こえる。下級クラスや中級クラスでも下位な生徒では歯がたたない魔物だからだ。

「避難する者はこちらへ!」

 教師の誘導する声が聞こえてきたが、その瞬間会場の真ん中にいたリューク殿下が叫んだ。


「くるぞ!!」


 その声に目線を空に移したら、確実に会場(ここ)にいる私達を攻撃対象として認識した魔物の群れが見えた。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ