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本日二話目の投稿です。
学院生活は順調…。順調です。
入学時は諦めていた楽しい学生生活を謳歌し、一年生も残り2ヶ月ほどとなった。
毎日の予習復習の成果か、はたまた何かチート能力が発動しているのか、大概一度学んだことは忘れずにいるので、Cクラスの中では成績トップです、頑張った私。
はじめは、目立たないようにしようと思ってたけど。どうしたって目立つならば、警戒されないように私自身を知って貰うしかないし、新しいことを覚えていくのは、結局楽しいのだ。
たまに出会うハルバートは、授業で理解しきれなかったことを質問すると分かりやすく説明してくれる。
相変わらず私のことを敵視している生徒と何かしら揉めそうになると、バルティスが仲裁に入り、主に相手を説得してくれたりしてくれた。まぁ、いつも吹っ掛けてくるのは相手だしね…。
エドワード先生も授業だけでなく、時折すれ違う際に一声かけてくださり、気づけば来年度から魔力の研究に協力するという約束をしてました。エドワード先生の話術恐るべしですね。
あと、キルアは基本図書館で会うのだけど、ついにこの間痺れを切らしたかのように昼休憩に私のところまでやってきた。
「アリア!見つけた!いつでも研究棟に来てって言ったのに全然来ないから呼びに来たんだよ。さっき、今研究していることの結果が出てさ!アリアに教えたくて探したんだ。今から研究棟に行こう!」
突然のキルアの登場に周りはざわめく。
「え…キルア様じゃない!?」
「キルア様がこちらにくるなんて珍しすぎでは」
「いつも機嫌が悪そうなのに、今日はとてもご機嫌に見えますわ」
「アリアさんとどんな関係なのかしら」
そんな声が聞こえてきて、私は戸惑っていると、一緒にいたシャーリーが私の背中を押した。
「アリア、私達のことは気にしなくて大丈夫よ」
「ほら!友人もそう言っていることだし、行こう!」
キルアは私の腕を掴んでグイグイと引っ張っていく。
何とかついていくと、研究棟はまるで学院とは雰囲気が違っていて圧倒された。見たことのない道具や書物が散乱し、中にはアクセサリーや手錠等もあった。あの手錠は、小説のコミカライズ版で見たアリアが最後に連れていかれる時のものとデザインが酷似していて、一瞬喉がひゅっと鳴った。
キルアは、私の様子に気づかず、先ほど言っていた研究の説明をはじめる。ずっと仮定でしかなかったことが実験結果として出たようで、嬉しそうに延々と語っていた。たまにわからない単語が出てきたりもしたが、黙って聞いた。本当に研究が好きなことが伺えて、少し微笑ましくも感じた。
一通り説明し終わった後、キルアはあっと小さく声をあげた。
「ごめん、語りすぎた。つまらなかった?」
突然反省したかのように小さく呟く姿に一瞬キョトンとしてしまった。いつも自信満々で飄々とした彼がそんな風に感じるとは思わなかったのだ。
「いえ、とても興味深く楽しい時間でした。本当に深く考えていらっしゃるので、私もとても勉強になりました」
そう本心を伝えると、キルアは嬉しそうにニッコリ笑った。
「よかった!研究についてだと、つい長話になっちゃうんだけど…殆どの人は途中で話を切り上げようとするんだ。次は新しい魔道具に取りかかろうと思ってて、またできたら見てくれる?」
「はい、楽しみにしてますね」
キルアの笑顔に釣られて、私も笑顔で答えた。
その後は、また授業後の図書館にたまにフラっと来ては、少し話して時折魔法についても教えてくれた。
そして、たまにリューク殿下から学年代表の仕事の手伝いもお願いされるようになった。学院に慣れた生徒達からの意見や相談等が増えたとのことだった。任されるのは主に雑用だけど。
私が学年代表の手伝いを受けるのは、カイルに会える可能性が高いからです!もちろん、リューク殿下は群を抜いて芸術性すら感じる見た目です。アイドルグループでは確実にセンターでしょう。ハルバートやバルティス、エドワード先生もそれぞれ違う魅力を持っていると思います。でも、それだけです!
はじめの頃は、監視されるのが嫌だったけど、自分が不審な行動さえ取らなければ警戒は解かれる可能性が高いのでは、とも思ったのだ。
私の想いはカイルにあり、リューク殿下はじめ攻略対象者達とどうこうなるつもりは全くないので、自信がついたおかげかもしれない。
代表室に入ると、まず護衛達が見える。カイルを見つけ笑顔で挨拶すると、もう一人の護衛の方が話しかけてきた。
「アリアちゃんだね。話すのは初めてだね。僕はレオナルド。カイルと一緒にリューク殿下の護衛を任されているんだ」
人懐こそうな笑顔で自己紹介されたので私も答える。
「アリアです。よろしくお願いいたします」
この一年近くで身につけたお辞儀をする。
「作法がほんとに上手になったよね。カイルはあちこち動いているけど、僕はいつでも殿下の側にいるんだ。リューク殿下がいる時は僕も必ずいるから、これからよろしくね。レオって呼んでくれてもいいよ」
レオナルドの言葉に、こちらもこの一年近くで身につけた作り笑顔を見せる。
「こちらこそ未熟ですが」
レオと愛称で呼んで、と言われた言葉はスルーして、それでは失礼しますと、部屋の奥へとむかった。あの人が"レオ" かぁ、と思いながらも、カイルと挨拶できただけで気分は上昇する。
嬉しい表情のまま学年代表メンバーと挨拶し仕事を開始するせいか、レティシア様には時折じっと見つめられている。特にリューク殿下と仕事についての会話をしている時は、何か言いたげにも見えるのだけど、もしかして、相変わらず誤解されていますかね?
えっと、レティシア様すみません。私はリューク殿下より護衛騎士のカイルに夢中なのでそんなに警戒しないで下さい。