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⑩カイルside


 俺は第一王子であるリューク殿下の護衛として、普段の学院生活はリューク殿下とともにしているが、正直リューク殿下はかなりの強さだ。立場もあって護衛を二人つけてはいるが、一人でも充分に身を守ることができる実力の持ち主だ。


 学院の中を歳を離れた人物が歩きまわるのもよくないので、護衛は比較的歳が近くて実力があると評される俺とレオナルドが選ばれた。

 レオナルドは水と緑属性の魔力持ちで圧倒的防御タイプだ。攻撃もできなくはないが防御の方が得意でリューク殿下から決して離れぬよう命令を受けている。

 俺は火と風属性の魔力を持ち、レオナルドとは逆に完全攻撃タイプである。あと、少し特殊な環境で育ったこともあり、悪意や殺意には敏感だ。学院内の建物群のくらいの範囲なら気配でそれに気づくことができる。


 殿下は、立場上あらゆることに警戒はしているが、特に警戒しているのがアリアだ。

 確かに、この国にとっても聖女になり得る存在は気にしないわけにはいかないだろうが、光属性を持っているだけで特別に教育をさせるだとか待遇を変えることもないと言う。何かしら理由があるらしいが、教えては貰えなかった。


 そこで、リューク殿下は俺にアリアの動きの観察と報告を命じた。リューク殿下の気配が感じられる範囲でということなので、ずっとというわけではないが、ちょっとした時間にアリアの気配を探り、気づかれないように観察し、殿下に報告する。


 基本的に、やるべきことをしっかり理解している行動を取っている。特に不審な動きは見当たらない。

 …と思っていたが、何があったか、男子生徒に囲まれるようになっていた。身分さえなければ、彼女は引く手あまたであろうと感じた。美人、というよりは可愛らしい出で立ちだが、どこか守り護られたくなるような、そんな雰囲気があった。

 だが、にこやかに相手をしているように見えるが、男子生徒の距離が妙に近づきすぎると、自然に見えるように一定距離を保っていたし、そんなこともできるのかと感心した。


 たまに、足早に校舎内を歩いているが、そういう時に小さなトラブルは発生する。彼女の近くに悪意を察すれば、女性教師からの嫌がらせかのような荷物運び、他の女子生徒からの魔法を使ったイジメにも近い嫌がらせ等だ。

 よく考えたら、彼女の周りから悪意は感じられるが、彼女自身から悪意を感じたことはない。普通は、嫌なことをされたら、腹が立ってやり返したいとか思わないか?アリア自身、悪意に気づいた後も、腹が立った素振りも表情もなく、ありのままをそのまま、ただ受け止めているようにみえた。悪意には、悪意で返す環境に育った自分には、とても不思議な感覚だった。

 

 ある日、学年代表会で、リューク殿下をはじめ、ハルバート、バルティス、レティシアがアリアについて話しあっていた。そこには、エドワード殿下もいた。


 自分は護衛なので、聞いてないフリはするが、全部会話は聞こえていた。が、その中で疑問が浮かぶ。

 

「恋愛対象には、ならない」

 

 誰の言葉か、皆同じ意見のようだった。恋愛対象にならない?そんなことはないだろう。平民という身分じゃなかったら、かなり人気になりそうな雰囲気であるし、生徒の中で、何をしなくとも色々な意味で目立つ存在だと感じていたから、周りと自分の感じ方の違いに戸惑いさえ覚えた。


「…どうした?何かあったか」

 隣に立っているレオナルドが、小声で聞いてきた。表情に出たのかもしれない。

「…いや。アリアについて考えていた」

 ポソリと呟くと、レオナルドは、ああ、と頷いた。

「…聖女の素質云々以上に、警戒しているような気はするよな。でも、恋愛対象にならないか。…確かに小動物を彷彿させるし、ペットとか、そんな感じかも」

「…レオ」

 諌めるように呼べば、レオナルドは肩を竦めた。

「ちょっと例えが失礼だったか?悪いな」

 レオナルドは、見た目は貴族然とした紳士だが、毒舌だ。口では悪いと言いながらも、反省している風はなく、タメ息をついた。


 それからと言うもの、彼女を観察する度に考える。珍しい髪色にしては、自分のように自己主張は激しすぎず、ふわりと毛先が揺れれば、まるで満開に咲いた花が風に遊ばれているように見える。

 居残り授業は続いているようで、殿下が授業後に学年代表の仕事や教師とやり取りしている間等、ほとんどの生徒の気配がなくなってからも、学院で何かしら勉強や復習をしているようだった。努力家で、誰かに頼ることもない姿勢は、こちらから手や口を出したくなるほどた。相変わらず彼女から悪意は感じられない。偶然を装って、話しかけたりもした。


 そして気づけば、観察時でもなくとも、殿下の護衛中でも、彼女の気配を探すようになっていた。




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