6話
結局私はこの村の命の恩人という事になり、ドワーフの村長の家に泊めさせてもらうことになった。
夜、村の皆が楽しそうに村の中央で薪で火を焚き、楽しそうに踊っていた。名前は分からないが社交ダンスのような踊り方だった。
お祭り騒ぎのように、少女の眠りが覚めた事に祝福をしていた。
私は皆の事を遠くから眺めていた。私は小人が作ったであろう木のベンチに座っていた。
「そこにいては楽しめる事も楽しめませんよ、笑ってください」
「いえ、私は踊れないので見てるだけで充分なんです。主役の貴女こそ踊ってくればいいじゃないですか?」
さっきまで眠っていた少女が私の目の前に立って、聞いてきた。
「私も良いんです、踊り方なんてしらないから。あ、これどうぞ」
低い声で何かを思い出すようにそう言った彼女は、私にブドウを絞ったジュースを渡してきた。ありがとうと言ってあたしは受け取った。
その流れで彼女は、私の隣に座った。
さっきまで私も手に持っている物と同じジュースを飲んでいた。きっと飲み干したのを見つけ、気を遣って同じ飲み物を持ってきてくれたのだろう。
「私は、スノーホワイト。スノーでいいわよ。あなたにお礼が言いたいの」
本当に白雪姫だった。
「いえいいんです。ここに泊めさせてもらえるだけでも私はとても嬉しいので」
「では私とあなたが出逢えたという記念がしたいので私と踊りません?ほら、皆が呼んでますし」
奥でドワーフ達が手招きをする。
私は、ジョッキたっぷりに注がれた深紫のぶどうジュースを飲んだ後に
「実は・・・」
右足のズボンを膝まで手繰り寄せた。スノーホワイトに私の膝にある赤黒い傷跡を見せる。私だって普段は見たくないもない傷跡だ。しかもそれを断る理由に使ってしまった。
生理的に無理だからだとか気分的に嫌だったとかそんな優柔不断な理由ではなかった。きっとドワーフや小人たちが求めているのは、いきなり来たよくわからない人間よりも、スノーのほうなんだ。私はそれを邪魔したくなかった。あえて部外者という認識にされていたかった。
「うん。この傷があなたを支えたのね」
スノーは頓珍漢な事を言った。
スノーホワイトは絶句の表情を浮かべたがすぐに、明るい顔を取り繕った。
松明の火の紅が反射し、彼女の白い頬から少しだけ火照ってるのか桃色が混じっていた。
「お嬢さん、良ければ」
と若いドワーフが主役のスノーに地に膝を着けて手を差し出す。奇麗なドイツ語で踊りませんか?と言った。
「えぇ私で良ければ」
大きな火の下に二人は向かった。
スノーホワイトか・・・。本当にファンタジーの世界に来てしまったんだな私。
ドワーフや小人とスノーホワイトは楽しそうに優雅に踊っている。最初に来た時の沈みようから、ここまで明るさや気力を見てスノーホワイト、彼女を愛されていたんだな。
なんだか羨ましいな。しみじみと寂しさを私は噛み締めた。
「私もお隣、良いですかね?」
しゃがれた声のドワーフの村長が私の隣に座った。
ベンチが鈍い音を立てた。ドワーフって見かけは凄い背が引くのに体重は重たいのね。
「あなたは、どこから来たのですか?」
「え?」
「夜が更けてそろそろ宴会もお開きになります。夏の季節ではありますがお体を冷やすと魔が寄ってきますゆえ、私の家で教えてくださいな」
え?この本の事を話していいものなのかな?