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yellLight  作者: 白咲・名誉
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十六話



船に乗り始めて三日経った。何も変わらない海を見ていたせいかそんなに時間が経っていないと錯覚をしていた。でも、遠い目的地を目指して海路を着実に進んでいた。


 そこに現れた《《穴》》という名前で呼ばれている現へ行ける、いつ出現するか分からないワームホール。



 過去の海賊が噂をした、幻の穴。ガリバー旅行記に記されたその穴。中に入るともうそこは夢のような超常現象がはびこる別世界への入り口。出口にも通ずる。もしかしたら私が目にしているこの現象がバミューダトライアングルなのかもしれない。



 からっと晴れた夏の照りにそぐわない、今私たちが直面している生死にかかわる問題。


 

 斑に太陽の光が映りこむ青藍色の大海原、そこにくっきりと色が分かれて深青色の渦潮のように何重にもとぐろを巻いている穴が目の前にあった。



 渦潮の引力なのか穴に船は引き寄せられる。船が大きく傾きだして風も大きく吹雪く。私も船員も全員船に投げ出さられないように掴まれるところに、身を寄せた。




私の隣でプロテウスさんは言った。



すると私が持っていた、ラオグラフィアが金色の光を放ちだして宙に浮いた。



ページが始まりから終わりまで開いて、閉じる。



「なにこれ?」



「これは・・・・・・俺にも見えていない事だ」



プロテウスさんは小さく舌打ちをした。私はラオグラフィアを触ると、光が消えた。



とりあえず、何も起きなかった。



「それでこれから私たちはどうなるんですか?」




 スノーもプロテウスさんに負けず劣らずな声量でプロテウスさんに質問をした。風でスカートがたくし上げられないように片手で押さえて、もう片方の手で柵にしがみ付いている。彼女の長い髪の毛が強風でぼさぼさになっていた。



「もちろん!穴に入るよ!」



「えええええそんなーーーー!」



スノーは恐怖で目が回っていた。船も右往左往に揺れる。



嵐のような激しい轟音に叫ぶ人の声は無念にもかき消される。



 船が渦に引っ張れないぎりぎりのところまで向かい、円の縁に留まる。留まらせるために舵を取る。舵取りが微細なコントロールを力いっぱいに取っ手を握る。



 舵取りがかぶるハットを渦の影響で発生される強風に飛ばされないように何度か片手で押さえていた。余裕あるな。



うっすら、にやり笑っていた。



「さあ二人とも前へ。いつもならこの穴が発生するときは大雨が降るんだがこれは太陽神レトもこれからの旅を応援しているのかもな!酒は無いが言わせていただこう。乾杯!」



 なんにもめでたくなんかない!そう私が絶叫まがいな高音をプロテウスさんに言っても、騒音でかき消された。



 スノーや私の声量よりも海の水渦を巻いてかき鳴らされる音がはるかに大きいのに、プロテウスさんはもっと大きな声を発して色々説明をしてくれている。



海の飛沫が船の中にまで飛び散っていて、打ち水と同じ効果なのか船内が熱く感じない。



 なんていうのか、水族館のイルカのパレードを見ている時の清涼感がここでは感じる。こんなことを悠長に考えている場面ではない。



「さあやれ」



プロテウスさんは、船員の力がある二人に私とスノーを指さして指示をした。



 二人とも両腕に力こぶがエベレストかと思うほど膨れている。「へい」なんてアニメでしか耳にしない返事と共に片方が私の服の裾を掴んだ。もう片方の手で私の両膝を掬うように添えて歩き出した。




 逞しい胸筋が服に覆われて歩く目測180センチの男達。この人らはいつも船の重たい荷物を運ぶ仕事をしている。凄い重たそうに見える酒が入っている樽を肩に二つ乗せて息切れ無く日中船の中を歩いている姿を見かけることがある。常に無言で鋭い目付きで周りを見渡しているので正直近寄りがたい怖さがある。


なにも言わずに、ごめんの一言もない。何も感じない機械みたいな表情だった。


ずんずんずん前へ前へと歩いてスプリットスルまで私を運ぶ。


 この人に私はなにをされるのか・・・?疑問が湧いてしまってすぐに頭が真っ白になった。瞬間、このまま穴に放り投げだされるんだ・・・、と、理解した。




私の視界には、穴が入り込んだ。渦の中心には、



—————空があった。



いつも見慣れているしたから見ている青空が中央の空間に存在している。



 何も変哲の無い、人類の起源といわれている海は濃藍の色。そこに異端のごとく深青の独楽がグルグルと大きく回る渦。深青は表面にしか彩られていなかった。私は外側しか見れていなかったのだ。



 中心部に移行するにつれて青の種類が変わっていた。濃厚な青から順に漂白に薄い青とくっきり稜線を描いて、真ん中に進行し穴に行きつく。



一言に、奇麗だった。



「わぁぁ」



私の口から出たのは、幼稚な発語だった。


 現にはない神秘がここで起きている。一人の人間が許容できない膨大な強大さが私を飲み込んだ。



あぁ私は死んでしまうかもしれない。生んでくれてありがとうお母さん。



無造作にぽい、と上から海に落とされる。



ドボンと一つなる。ドボンと二つ目の落ちる音がなった。



 私は泳げない。ましてや強引に渦が私の体を中心部へ引っ張ってくる。足をバタつかせて藻掻いても、なんにも変わらない。口に海水が入り込む。飲み込まないように入った分を吐き出す。身体は冷たい水の感触。お腹を殴られたような圧力がかかる。強い波に全身を痛めつけられる。


体にまとわり水の鎧。



 渦が私を中心部に誘う。ブラックホールの引力のようになにも無残にも抗えず穴へ吸い込まれた。


 渦の勢いが強くて体が引きちぎれそうだった。洗濯機が服を回すように私も雑巾と同じだった。



 考えてみれば、穴へ落ちるのが目的だっだんだ。ただ脳が死の危機だと錯覚をしていただけなんだ。でも、いままだ穴へは到達していないが、一瞬でも辛い思いをするんだからヒドイものだ。



 二つ、重たいものが降ってきたのを見た。身体が回転して、目の終点が定まってないせいでなにが落とされたのかは分からなかったが。



 スノーはどこにいるんだろうか。声を出そうとしたが、口に水が入ってきては吐いてを繰り返しているから、声を発せなかった。



早く、この長い時間が終わってほしい。いや、まだ一分のも満たないのかも・・・。




そして、私の意識が途切れた。 



 意識が落ちたときはまだ脳が活動しているから、停電が起きたような、目の前が暗くなって驚いた。



本の続きが、気になってしょうがない。


回収されない伏線を貼ってしまっていた…

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