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破滅の旅路〜世界を正すものがたり〜  作者: まんまる雄山
一章:ドーラでの生活編
9/22

第9話 vsリザードマン1

お読み頂きありがとうございます

 キンッ!キンッ!キンッ!キンッ!


 お互いの武器がぶつかり合う。剣と槍での激しい攻防が続く。

 戦況はどちらも一歩も引かずといった状態だ。


 しかし元々剣と槍ではリーチが違うため、俺は相手により近づいていかなければならない。

 それに対しリザードマンは武器のリーチを活かした突き攻撃で俺を近付かせない。

 決して剣の間合いに入らせないように上手く調整して攻撃を捌き、俺が無理をして踏み込んでくればそこから崩さんと言わんばかりに突きを繰り出してくる為不用意に近付けない。

 それに追加して槍には何か特別な力を纏っているのか、槍を突くたびに追撃のように突風が襲いかかってくる。


 ぱっと見では何とか互角の勝負にみえなくもないが、自分の間合いで戦えない俺の方が神経をすり減らして戦う分ほんの僅かだが不利である。



(ヤバイな、魔物だと侮っていたけど普通に槍の扱いが上手い。今は何とか捌けているがこのままじゃ俺の方が先に体力が尽きて負けてしまう!)



 そう思った俺は俺の幻影を二体作り出した。

 見た目じゃまず判断は出来ないほどそっくりな分身で、幻影なので攻撃こそできない、というか当たってもそのまますり抜けるだけなのだが相手に隙くらいは出来るだろう。


 そして案の定この策は功を成したようで、リザードマンは俺の幻影が放った攻撃を槍で捌こうとしてそのままスルリと通り抜けたことに驚いて動きが止まった。

 その隙を逃さずに剣の間合いに入り首目掛けて一閃…は残念ながら当たりはしたものの、咄嗟に身体を拗らせることで致命傷には至らなかった。

 このリザードマン咄嗟の判断力もヤバイな、絶対今のは避けられないと思ったのだが。

 だがそれでも俺が与えた傷は「傷身者」によって通常よりも治りが遅い。

 リザードマンから生えているツタのようなものが傷口を覆ってはいるが、そこからは絶えず血が流れ出ている。

 リザードマンは自身の傷が治らないことに戸惑っているように見える。

 恐らく何か再生能力でもあったのか…強い魔物の特性の定番だもんな、自己再生持ちっていうのは。


 リザードマンは後方へ飛び去り一旦剣の間合いから逃れようとするが、折角手に入れたチャンスをみすみす手放すわけにはいかない。

 そのままリザードマンに接近、追撃する。

 しかしその追撃を焦る事なくリザードマンは攻撃を的確に弾き、捌き、受け流していく。

 しかも槍を先程よりも短く持って、近距離での剣撃に追いつけるようにしている。

 幻影によるフェイントも混ぜ込んで攻撃してはいるが、やはり同じ手は二度は通用しないのか多少隙は生まれるものの俺が漬け込める様な致命的な隙は見せない。

 何なら時間経過毎に幻影に慣れてきている気がする。



(やっぱり同じ技は通用しない…か。ほんと、こいつ魔物かよって思うくらい頭良いよな。いっそ幻覚を見せるか?おそらく軽い幻覚を見せる程度じゃ意味ないだろうから…かなり強いのじゃなきゃ効かなそうだな。ただそうなると俺も魔法に集中しなきゃいけなくなって攻撃が出来なくなるんだけど…やる価値はあるか)



 俺は意識を魔法行使の為に割き始める。当然リザードマンは好機と言わんばかりに槍によるスパートをかけてくる。

 ここで決めきるつもりだろう、みるみる俺の身体に傷が増えていく。辛うじて攻撃を捌けているという奇跡…



「準備は整った。これでもくらえ、デスイリュージョン!」





 ***





 リザードマンの視界が暗転する。

 そして気がつくとリザードマンの頭、両手、両足がそれぞれ地面に固定、もとい拘束されていた。



「ギシャァ?」



 いきなりの展開に戸惑いを隠せていない。

 さっきまで森で戦っていたはずなのに何で地面に拘束されているんだ?とでも思っていそうだな。

 リザードマンは必死に拘束から逃れようとするが無駄である。

 ここは俺が創り出した幻想、主導権は俺であってリザードマンには無い。


 俺はイメージしてリザードマンの拘束具を動かし始める。

 四方八方に散らばるように…まるで身体から頭手足をもぎ取るように。

 このままでは身体が引きちぎられる、その危機感からリザードマンは焦り恐怖し必死にもがく。

 しかしその努力は実らない、この世界に囚われた時点でリザードマンの抵抗は無意味である。

 そして徐々に徐々に身体が引っ張られる。


 ミシミシ……ミシミシ……


 身体の筋肉が悲鳴を上げる。

 身体は必死にバラバラになるまいと抵抗しているものの、しかし非情にも身体の拘束具は身体から離れる様に動き続け、バラバラに引きちぎろうとする。



「ギ、ギシャァァア!」



 そんな恐怖に耐えられなかったのかリザードマンは叫ぶ、死に物狂いで暴れ回る。

 だがそんな事は御構い無しに拘束具は動き続け…ついに


 ミシミシ……ミシ……ミシ、ブチンッ!



「ギシャッ!…ァ…ァ」



 遂に身体が限界を越え、顔、身体、手、足に分断される。

 そのままリザードマンは意識を失った…そして意識が覚醒し目が醒める。



「 ギシャァ? 」



 何故生きているのか?自分は先程死んだのではないのか?そんな疑問がリザードマンの頭に浮かぶ。

 が次の瞬間、リザードマンは自身の状況を理解し恐怖を覚えて震えだす。

 何故なら…それは再び自分が拘束されていたからである、先程と全く同じように。


 ギギギ……


 再び拘束具が動き出す、まるで先程起こった光景を再現するかのように。



「ギシャァァア!ギシャァァア!」



 また死ぬ、また同じ方法で。また同じ苦しみを味わって…

 嫌だ、嫌だと言わんばかりにリザードマンは叫び、暴れる。


 ミシミシ…ミシミシ…ミシミシ


 引っ張られる、引きちぎられる、嫌だ、怖い、死にたくない!そんな思いがリザードマンの心を支配する。


 ミシミシ…ミシミシ……ブチン!


 再び全身をバラバラにされ、恐怖に支配されたまま再び意識を手放す…

 ……また目を覚ます。

 同じ光景、同じ状況。

 リザードマンはこれから再び起こることを想像して、再び恐怖に震える。

 再び拘束具が動き出す。 身体が引きちぎられる。意識を手放す。また目を覚ます。

 これをひたすら、ひたすらに繰り返される。

 何度死んでも、何度引きちぎられても生き返る。

 …何度も何度も殺されたリザードマンの眼にはもう光はない。心が折れ、砕けて粉々になってしまったのだろう。



「……ふぅ、やっと壊れてくれたか」



 リザードマンの見た悪夢はレンジェルによって作り出された幻覚であり、実際にはリザードマンは死んではいない。

 今も目の前で生きてはいる…が心ここにあらず、というか精神が崩壊している。全身の穴という穴から汚い汁をブチまけて、そのまま泡を吹いて失神している。そのまま首を落として完全に息の根を絶った。


何とか勝てたけどもやっぱり負担が大きい、魔力的というよりも精神的に。

あの技、幻覚掛ける俺も見ることになるからあんまり使いたくないんだよね。しかも相手の精神が屈強だったらこの技は決まらないし…


さて、それじゃ洞窟の中に行きますか。



「って何だ!?」



 ____ヒュンッ____



 不意に俺に向かって放たれた物に何とか反応し、間一髪避けることに成功した。

 が落ち着く暇もなく次々と放たれる。



(くそっ、弓矢か!何処だ、どこにいる)



 更にそれに加えて何かが俺の身体を切り裂いていく。弓は確実に避けている筈なのに俺の身体にはまるで切り裂かれたような切り傷が刻まれている。

 さっきのリザードマンの槍に纏ってた奴と似ている?

 俺は周囲を警戒して矢を避ける。



 ____ヒュンヒュンヒュンヒュン_____



 放たれた矢をよく見てみると緑色のオーラが矢を渦巻いてコーティングしていた。



(なるほど風魔法か!なら…)



「ドレイン!」



 飛んできた弓矢に付与された魔法をドレインによって絡め取っていく。そうすることで弓矢は急激に失速して俺に届く前に地面に落ちて行く。



「「 ギシャア? 」」



 弓矢を放っていたリザードマンは何が起こったのだと言わんばかりに思わず声を漏らした。


(なるほど、周囲にはリザードマンが二匹…か。面白い、受けて立つ!)


 リザードマンとの第二ラウンドが始まった。

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