第5話 家族
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〜少し時が経って三歳になった時〜
子供とは不思議なもので、この世界に転生させられた時には全くわからなかった言語だったが、気がついた時にはいつの間にか体に馴染んでしまったようで、まだまだ舌足らずなところはあるが普通に意味を理解して話すことが出来るようになった。
文字も本を読んでもらっているうちに何となく理解して、今は枝をを拾ってきては地面を紙代わりに文字を書く練習をしている。
魔力操作もだいぶスムーズにできるようになって、体内に限ってならかなり自由に操れるようになった。
まだ他の物体に魔力を通したりするのは思ったよりかなり難しくて未だに暴発してしまうことが多い。
この間も庭で枝に魔力を通らせる練習をしてたら、枝に魔力を送りすぎて爆散した。魔力って怖い…
家を建てては魔物に壊されては建て直し、魔物に昼夜問わずに襲われて…を繰り返すうちに、生き残った者は俺を含めて四人となってしまった。
父であるマーチェス、母のピューリア、そして護衛のリューマ。そう、森での逃亡と魔物の襲撃に耐えられたのはこのたった三人だけだった。(俺はただ護られてただけなのでノーカン)
この三人が幾度も魔物の襲撃を撃退した結果、流石に魔物もこの三人には勝てないと悟ったのだろう。もう殆ど襲ってくることはなくなった。意外と魔物は頭が良いのだろうか。それとも弱肉強食の理論?
それにしても生き残った三人は驚くほど強いのだ。
俺の父マーチェスは身長180cmくらいで燃えるような赤髪でガッチガチに引き締まったとても筋肉質な肉体をしている。
敵の攻撃を常に紙一重で避けてからのカウンターで魔物を一方的に斬り殺したり、この間なんかゴリラっぽい魔物と殴り合って、ボロボロになりながらも結局勝ってた。いやいや、ゴリラに殴り勝つって何?……とにかくめっちゃ接近戦では強いのだ。
オーガという鬼の血を受け継いでいるようで、その肉体は魔物の爪ですら切り裂けないとか(本人談より)。
母は身長170cmくらいで腰近くまで伸びた艶のある銀髪に、褐色の肌に尖った長い耳、張り裂けんばかりの胸、細いくびれ、ぷにっとした肉質の良さそうな健康的な足……
ボンッキュッボンとはこれを言うのか。俺の母親はいわゆるダークエルフってやつだ。
水魔法が得意で、この三人では唯一回復系統の魔法も使えると言うハイスペック。後は何かそこら辺をふらふら徘徊…じゃなくて巡回している骨達も母ピューリアの魔法だそうだ。一体どんな魔法だ?
因みに弓の腕は……残念な事に、非常に残念な事にダメダメだった。
ぱっと見は凄くうまそうな感じを醸し出して矢を弓の弦にかけ、これまた綺麗な動作で弓を引くんだよ。
さすがエルフって思ったけど、その後が酷かった。放った一撃は的に当たるどころか、何故か近くで家の修理をしていた父様めがけて飛んで行った。いや、父様斜め後ろにいたんだよ?むしろどうすれば斜め後ろに弓が飛ばせるか教えて欲しいくらいだね!
そのあと父様から「ピューリアの弓は何故かいつも俺めがけて飛んでくる傾向があるから持たせないでくれ」と懇願された。
エルフ=弓の名手というわけではないらしい。母は完全に魔法特化型なのだろう。弓の腕は言うならば父様特化型か?
リューマは唯一の護衛の生き残りで160cmの茶短髪だ。リューマは14というまだ入隊試験を受けられる年齢ではなかった(15歳にならないと入隊試験は受けられないらしい)のだが、その高い実力を買われて護衛兵として入隊し、あっという間に部隊の副隊長という座にまで上り詰めた超エリートである。魔法も剣もかなりの腕前で、職業で言うなら魔法剣士ってのが一番しっくりくる。雷属性の魔法を操って瞬発的な超加速で魔物を一閃しているのをよく見かけるので、雷属性の魔法が得意なのだろう。
戦う時に、たまに背中から小さな翼ようなものが生えたりするのを見かける。
俺はその三人からレンジェルと名付けられ、特に母様からは……溺愛されていた。
そんな三人と俺を含めた計四人で森の中で生活している。
まだ三歳にしかなっていない俺であったが、俺が庭で文字を書く練習をしているところを母様にみつかるとそれはそれはもの凄く興奮なさった。三歳でもう文字すら書けるのよ!私達の子は天才ね!今日は記念日だわー!って、俺が少し引くくらいには喜んでいた。
それを見た父様は真っ先に森に突っ込んでいって、そして五分後には父様の背を余裕で超えるでっかいイノシシを狩ってきてくれた。こんなデカブツを速攻で狩ってくるとかどんな早技だよ…俺よりよっぽどチートじみた強さじゃないか!
そして次の日、こんな頭のいい子なら、もしかしたら魔法くらい教えられるんじゃね?という話になり早速魔法の練習が始まった。
魔法の訓練といってもまだまだ簡単なもので、まずは魔力を感じる。
魔力を感じられなければ魔法は使えない。これが出来ないと魔法は使えない。
だが、もう体内で魔力をある程度自由に扱える俺にとっては容易いことだ。
ちなみに父はダメらしい。魔法のことはからっきしだとか…でも母様曰く魔力で肉体強化とか一歩間違えたら爆散する技術を無意識で出来ているのだとか。
いやこわっ!
魔力を感じる訓練といってもやる事は簡単で、魔法を使える者が魔力を体内に流し込む。たったこれだけだ。
これを繰り返し行うことで魔法の才能がある者は魔力を感じられるようになるらしい。
魔力についてはもう大丈夫なのだが、どうせなら魔力を流し込まれる体験をするのも面白いかもしれないな。
そう思ってリューマに手を握ってもらい、魔力を流してもらった。
ニュルッと何かが流れ込んでくるのを感じた。
うわ、なんか気持ち悪い…自分の魔力なら何も感じなかったのに…何か握られた手から無理矢理異物が送り込まれているような気がする。これが魔力か?他人の魔力が入ってくるのは案外気持ち悪いな。背筋がゾクゾクする。
こんな気持ち悪い魔力なんて受け取れるか!とリューマが俺に送ってきた魔力を送り返した。
それはもう気持ち悪かったので一気にドバーッと返したよ。
そしたらさ、
「ん?俺の魔力が押し返されてる?てか待て待て!このままじゃレンジェルと俺の魔力がぶつかりあっ___ 」
リューマが急に驚いた表情をした後に、手のひらが小爆発を起こした。
咄嗟の出来事に俺は何が起こったのか理解出来なかった。
いや、もしかしなくとも一気にドバーッて返したのが原因だろうなぁ…絶対にそうだよなぁ。
だってあの爆発物凄い見覚えあるし、何なら最近しょっちゅうやってるし…
なんかちょっと悪いことをしたかもしれない……
***(リューマ視点)
俺は今の状況にものすごく驚いていた。いや、やられたことはただ単純に送りつけた魔力を勢いよく返還されたのだと。
レンジェルはまだ魔力操作が甘かったため、自身の魔力ごと俺に勢いよく押しつけたのだ。咄嗟の事だったので魔力を霧散させる事も間に合わず、でもって魔力が行き場を失って爆発したと。
いやそれにしても驚いた。魔力を送り返す、これが出来るのはある程度魔力操作に長けていないと難しい技だ。
本職の魔法使いなら割と出来ることなので別にそこまでは珍しいというわけではない。
しかしそれを行ったのは目の前のまだ三歳の子供も子供、一流の魔法使いでもなければ魔法使いの弟子ですらない。ついさっきまでは魔力すらも分からないような子供だったのだ。(リューマ達はレンジェルが魔力操作できることを知らない)
目の前にいるレンジェルに対して俺は背筋がゾクりと、自分よりも確実に上の存在であると本能で悟ってしまった。
勿論今なら全然俺の方が強いのだが、5年、10年先のレンジェルに果たして自分は勝てるのだろうか?と思わず考えてしまう。
(こんなにぞくりとしたのは何時ぶりだろうか、レンジェルがどんな偉大な魔法使いになるのか楽しみだ。気がついたら抜かされていたなんてなったらカッコ悪いな…俺も今まで以上に真面目に訓練するか)
「 リュ、リューマ?何か物騒な音が聞こえたのですけど、何が起こったのですか?まさか、あまりのレンジェルの可愛さに貴方もやられてしまったのね?」
「ピューリア様、た確かにレンジェル様はとても可愛らしいのですが…それよりもレンジェルには魔法の才能がありますよ!それもとびっきりの!」
こんなめでたい事があるだろうか?いや、そうそうない。レンジェルは絶対魔法の才能があふれんばかりにある。今から始めれば絶対将来は大物の魔法使い、何なら魔導士にすらなれるだろう。
「落ち着いて、リューマ。レンジェルに魔法の才能があるのはわかったわ、でも貴方がそこまで興奮する程なの?」
「はい、それはもう。魔法使いは魔力操作に長けているのはご存知ですよね?」
「勿論よ、魔法使いならほぼ誰でも出来ることだもの、でもそれがどうしたと言うの?」
「レンジェル様はもう既に魔力操作をなさっています、それもかなりの精度です。まだ今回初めて魔力に触れただけなのにです。これは天才では言い表せないくらいの才能を秘めていると言ってもいいでしょう!」
「まぁ!ねぇ聞いたマーチェス、マーチェス!レンジェルは天才ですって!凄い才能を秘めているって!」
「あぁ、流石はレンジェルだ!流石は私達の息子だ!よくやったぞーレンジェル!よし、今日は目出度い日だ。俺がとびっきりの獲物を捕らえてこよう!」
そう言ってマーチェス様は物凄い勢いで狩りをしに森の中に消えていった。
……五分後にでっかいクマを背負って帰ってきた。子が子なら、親も親だな。
マーチェス様は物理的に強すぎるんだよな〜。そのうちレンジェルもクマを引きずって持って帰ってくる、そんな光景が思わず浮かびあっがてしまい思わず苦笑してしまった。