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破滅の旅路〜世界を正すものがたり〜  作者: まんまる雄山
一章:ドーラでの生活編
4/22

第4話 異世界

 

「※※※※※※※※※※※※※※※※※※※!」


「※※※※※※※」


「※※※※※※※※※※※※※※※※!※※※※※※※」


「※※※※!※※※※※※※※※!」


「※※※※」



 うーん、周りが騒がしい。一体何があったんだろう?

 眠たい目をこすりながら辺りを見回すと辺り一面が紅い。

 ……しまった、寝過ごした!もう夕方じゃないか!会社、会社に行かなければ!

 ひぃー、鬼のような形相で俺を怒鳴りつける社長の顔が思い浮かぶ。


 どうしよっかなぁ…もういっそのこと今日は会社をボイコットしますかな。もう夕方だしね。

 この後電話で、もの凄く体調悪いですよオーラ全開で「今日は気持ち悪すぎてずっと寝てました」と言えばどうにかならないかな。


 にしても今日はすごく暑いなあ。いや、熱い?まぁ取り敢えず起き上がりますか!

 思いっきり伸びをしようとして…俺は何だか違和感を感じた。 


 あれ?伸びが出来ない?というか俺、身体が布でぐるぐる巻かれていて身動き取れないんですけど!?

 え?何で?なんで拘束されてるの!?誰か助けてー!



「 おぎゃー…おぎゃー ! 」



 ん?んんんん?おぎゃー?

 聞き間違いかな?もう一度叫んでみる。誰かー!誰か助けてー!



「 おぎゃー!おぎゃー! 」



 はぁ!?なになになになに!?

 え?俺って赤ちゃんだっけ………いやいや、俺は……俺は確か佐藤拓海?自分の名前すら危ういとか終わってるな!職業……趣味……友人……ヤベェ、何も思い出せねぇ!


 落ち着け俺、ここは一旦心を落ち着かせてクールになれ。

 まずは深呼吸だ…大きく息を吸ってー…スー……げほっげほっ!

 煙い!ここの空気凄く煙たいし、やっぱり凄く熱い!


 確認しようとして俺は周囲に目を向けて___目の前の光景に思わず絶句した。


 この辺り一帯が炎で包まれていたのだ!

 辺り一帯火の海。

 そして降り注ぐ弓の雨。なんか他にも石とか炎も飛んできてる!?


 そして俺の側を走ってた人に飛んできた石が頭に直撃し、血を撒き散らしながらぶっ倒れた。


 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいい!!!!

 何!?何が起こってるの!怖い、怖い怖い!逃げなきゃ!今すぐここから逃げなきゃ!


 しかしそんな叫びも何故か赤ん坊のような泣き喚くような声しか出ない。

 時が進むごとに俺の目の前で一人、また一人と倒れていく。



「※※※※※※※※※※※!」


「※※※※※※※!※※※※※※※※※※※※※!」


「※※※※!」



 誰かが叫ぶ。何て言っているのか全く分からない。

 俺はもう怖くなって思いっきり暴れて逃げ出そうとしてグルグル巻きにされた布から何とか手を出して……気がついた。

 あれ、俺の手ってこんな丸かったか?もっと俺の手はゴツゴツしてたはずだ、こんな少なくともこんなぷにぷにで丸っこい手はではなかった。


 この手はまるで……赤ん坊のような。

 赤ん坊?俺の手が?

 いやいやおかしいだろ、マジでどうなっているんだ?

 いったん落ち着こう。まずは何があったのか……思い出せ。


 異世界……勇者、召喚???おぼろげな記憶の中でこれらの言葉が脳内をよぎった。

 そうだ!俺は!俺は鉄骨に押しつぶされて…気がついたら変な何もない白い空間にいて。

 なんかスキル?もらって勇者として召喚される…?


 馬鹿馬鹿しい考えだとは思う、だけど俺の記憶が正しいのならば俺は勇者として異世界転移するはずで…

 でも俺の手は赤ん坊で……ん?転移…いや、これ転生とかそっち系じゃないか!?


 とか考えていると俺の横を通り過ぎていった石が前方の木にぶつかってそのままなぎ倒した。

 いやまじで何なんだよ!怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!



「※※※※※※※!」


「※※※※※※※※※※※※※※※※※」


「※※※※※※※※※※※※、※※※※※※!」



 何か叫んでいる。そして俺は空に投げ出され……今さっきまで抱き抱えていた人が飛んできた巨大な岩に直撃し…


 グチャリ


 そのまま吹っ飛ばされて…あまりの勢いに木にぶつかった身体が二つに分かれ臓物を撒き散らした。

 ……俺は………一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 さっきまで俺を抱いてた人が…え?

 そして後から押し寄せてきた巨大な恐怖の波が俺を飲み込んだ。

 もう泣き喚くしか出来なかった。泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて、怖くて怖くて目を瞑っても、それでもさっきの光景はしっかりとまぶたの裏に焼き付いてて…


 気持ち悪い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い…



「※※※※」


「※※※※※※※※!※※※※※※※」


「※※※※※※※」



 俺をキャッチした人が何声をかけてくれるが何を言ってるのかわからない。

 涙で視界が歪み切って、鼻水はダラダラでろくに呼吸もできない。

 泣き喚きすぎたせいか激しい吐き気もある。


 それでも俺は泣き止むことができなかった。しかしいくら泣き喚いても現状は変わらない。


 一人、また一人と数を減らしながら森の奥へと進んでいく。


 弓矢が身体を貫き、剣がぶつかり合い、火魔法が人を焼く。それはつい先程まで地球の日本という平和で戦争のせの字も知らない俺にとって、そして転生した赤ん坊にとって精神的負荷はあまりにも大きかった。


 惨劇は終わらない。惨劇は終わらない。


 血が、肉体が炎に焼かれていく。目の前のおぞましい光景と人肉の焼ける気持ち悪い臭いがする。

 色々な事に耐えきれずに、俺は意識を闇の中へと手放した。




 いったいどれ位の時間が経ったのだろうか。

 辺り一帯火の海だった、地獄絵図と化していた窮地を乗り越え今は暗くて深い深い、森の中にいた。

 何とか窮地は乗り越えたのだろう。窮地を乗り越えたと言っても、もう片手で数える程の人数しかいない。


 少し前まではあんなに大勢いたのにみんな死んでしまったのだ。

 ある人は弓で射抜かれて、ある人は剣で切り裂かれて、ある人は全身を炎に焼かれて、ある人は俺達への攻撃を身を呈して守り、またある人は時間稼ぎの為にと……


 俺の脳内には今でもしっかりと詳細に思い出せる。


 いったん意識を失ったことで少しは落ち着く事はできた。

 そして恐らく俺はどこかの王族の赤ん坊にでも転生したのだろう。そうでなければ俺を守って死ぬなどという行為をするはずがない。


 この時点で俺の「生」には沢山の屍の上にあるものだと自覚していた。

 俺のために死んでいった人のためにも俺は死にものぐるいで生きていかなければならないのかもしれない。

 月の光を頼りに俺達は進んでいく。


 深い深い、森の中へ進んでいく。

 振り返ることはしない、ただひたすらに足を動かして前に前に進んでいく。






 ***






 その後、生き残った人で小川の近くの少しだけ開けた土地に家を建てた。

 幸い材料の木はそこら中にあったので困りはしなかった。

 それでも大きな家を建てる訳にはいかない。追っ手が来るかもしれないので目立ってはいけない。


 結果的にとてもこじんまりとした小さな小屋みたいな家が建った。

 電気やガス、水道は勿論無い。ここはもう俺の住んでいた日本ではない。



 《 …………転生の準備が完了しました、術式構築が完成しました。魔力補充、完了しました。転生を開始します 》



 俺の意識の中で響いたこの言葉、そしてトラックに轢かれた記憶、今の俺の身体、これらのことから考えるに俺はやはり異世界に転生したのだろう。記憶を勝手に消去されたせいだろう、前世の俺についてはあまり覚えていない。前世は日本で暮らしててくらいしかわからない。


 それにしても、何もあんな死地に転生させなくてもいいだろうに…

 危うく転生したのにまたすぐに死ぬという残念な事になる所だった。

 笑えないよ?転生してすぐに死ぬなんて笑えないよ?


 本当なら俺も家造りの手伝いをしたかったのだが残念な事に俺は赤ん坊。

 一人じゃ起き上がれないし、喋ろうとしてもアウアウ言うだけ。

 おまけに話しかけられても言葉がわからない。

 まぁその辺は頑張って覚えていくしかないな…異世界に転生しても言語は日本語とか、そんな甘い事はなかった。つらぁ…


 そしてこの世界では命は軽い。少なくとも、やれ人権侵害だの過剰防衛だの銃刀法違反だのという日本にはあった概念は全て捨て去った方がいいのかもしれない。それがよく理解できた。


 いや、理解しなければこの世界では生きていけないと悟ったのだ。

 弱き者は死に、強き者が生きる。弱肉強食、この世界はそういう世界なのだと。

 この世界は弱者に優しくなどない。そして今、俺は圧倒的な弱者。


 護られなければ生きていけない。

 強くならなければならない、強く、強くならなければ俺の命はあっさりと狩られてしまう。

 ダラけている暇は無い。今はまだ出来ることは少ないだろうがもう少し大きくなれば出来ることも増えていく。


 少しでも生存確率を上げるために俺は努力を惜しむつもりはなかった。あの残酷なまでの光景が嫌でも思い出される。


 絶対に生き延びてやる、俺はそう誓った。


 まずは自身が出来ること…スキル確認から始めるか。

 転生するときに獲得したスキル達。

 俺がこの世界で生きていくのに恐らく必要不可欠であろうもの。

 能力は覚えた時点で何となく効果が頭に入ってきた。


 詳しくは色々と検証してみなければわからないが簡単に説明すると



「幻想魔法」

 …幻を創る。幻を相手に見せる。幻聴、幻臭などもできる。


「時空間魔法」

 …特別な空間を作成できる。特定条件下で時間の操作を行える。特定の条件を満たせばワープもできる。


「ドレイン」

 …魔法攻撃を吸収する。


「破壊魔法」

 …魔力を流すことによって対象を破壊する。


「鑑定眼」

 …見たものの事が少しだけわかる。


「傷身者」

 …自身が相手に付けた傷は回復薬、治療系統の魔法による傷の回復を少し遅らせる。自然治癒速度も遅らせる。


「魔核路」

 …魔力保有量が増大する。魔力回復が少し早くなる。


「魔力操作(小)」

 …魔力を少し自由に操作しやすくなる。



 加護;魔神サタンの加護 時kウ#∩ノ3Ⅱン滓



 うん、とっても強い。なんかもう凄いねとしか言えない。

 てか身に覚えのないスキルも何かいっぱいあるし…何か加護もらってるし……加護って何?しかもなんかやばそうな加護なんだけど。

 魔神ってなに魔神って…俺って勇者として召喚とか言ってなかったけ?ここの世界の神と俺が考えている神ってもしかして違う?

あと神様、なんかバグみたいな文字列があるんだけど…なんだろこれ。


 んまぁ一通り目を通してみて…ぶっちゃけると俺ってチート並みに強いのかもしれない。この世界の基準はさっぱりわからんが。

 しかしだからといってダラけるつもりは無い。


 まず上手く使いこなせなくては宝の持ち腐れ、豚に真珠だ。

 そして当たり前だが上には上がいる、それはどのご時世、どの世界でも共通の理だ。


 そんな訳で俺は今日この日から食物連鎖の頂点に立つべく血の滲むような訓練を始めるのであった。


 自分のために、そして自分を生かしてくれた人のために!


スキル…なんか頑張れば使えそうな程度には脳内に情報がインプットされている状態です。適性はあるのは知ってるけど、使った事ないからよく分かんない感じ。

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