第18話 独裁者
___________とある一室にて____________
「ま、待って!俺は、そんなつもりで___」
「黙れ、そんなつもりで…だ。お前はオレの定めたルールから零れ落ちた負け犬だ。なのにギャンギャンうるさく吠えやがって」
___ザシッ!
「ギャァア!やめで、やめでぐだざい… 」
「ふん、オレのルールに従わん者などこの国には要らぬ。不要だ」
___ザシュッ、ザシュッ!
「グッ…ゴハッ!ふぅ、ふぅ……ひぃ、もうやめて下さい!この国から出て行きますから!」
「ん?よく聞こえんなぁ!」
___ズシャッ!
「あぁぁあ!!!はぁはぁ……うっ……も…こ……し……て… 」
「んん?何だ、さっきからよく聞こえないぞ?もっとはっきりと喋ったらどうだ?」
そう言いながら傷口を剣でグリグリと抉っていく。
拷問されている男は手足の自由を奪われた体勢で鎖で繋がれ、宙に大の字で固定されている。
手足の指の何本かは切り取られてそこら辺に散らばっており、誰が見てもここで無惨な拷問が行われていた事が察せるであろう。
無事な指も全ての爪が毟り取られており、それがより男の悲惨さを増している。
男の足元には血の水たまりが出来ており、身体の至る所に刺し傷、切り傷が存在し、どれもぐちゃぐちゃに抉られている。
ただ余りに出血が酷いところは炎で炙られ強引に止血処理されているが、それによって酷い悪臭がこの部屋に充満している。
男が何故まだ生きているのか、それは男の生命力が高いのか、それとも拷問する者の手腕のためか…
とにかく、そんな重症を負っていながらもまだ男は生きていた。
「も…もぅゴロジデ……ゴロジテ……ください」
「クハハハハハ、漸く己の罪を理解したか?オレの定めたルールに従って、素直に立ち退いておればそんな醜い肉塊にならずに済んだものを。あぁどうしてこうも馬鹿な連中が多いのだろう、王であるオレが定めたルールなのだから素直に従うのは当然の理であろうに。全く、こんな連中が多いせいでオレが“拷問狂”とかいう不名誉な二つ名が城内で広まってしまったじゃないか。とても困っておるのだぞ。少しはオレのことを考えて行動して欲しいものだ」
「全くですわ、お父様。みんなが素直にルールを守っていればこのような悲劇が生まれることはないのに…お父様がみんなが公平に住めるようにと定めたルールなのに。私、とても不思議でなりませんわ」
「オレの悩みを理解してくれるとは、さすがオレの娘だ!他の奴らも娘を見習って欲しいものだな。さて、このまま放っておくと本当に死んでしまうな……そうだな。おっと、ほれ、これでも浴びるがよい」
そう言うと男に向かって液体をぶち撒けた。
すると男の傷が少しだが塞がって、先ほどよりも出血量はだいぶ減った。
「は……なぜ……ポーション、を… 」
「いやー、オレは心が広いからなぁ。うっかり目の前にいる怪我人を放っておけなくてな、悪い癖だ」
「…それだから拷問狂って言われるのですのに」
ニヤニヤしながらポーションを、決して品質の良くないポーションを男にぶち撒ける。
品質の良いポーションであれば傷口を塞ぐだけでなく軽い鎮痛作用もあるのだが、今回かけられたポーションはあくまでも傷口を塞ぐでもなく、傷口からの出血量を減らす程度の最低品質のものだったのだから、ただ死ぬまでの時間が延びただけだ。
もちろん痛みも和らぐことはないので余計に意地が悪い。
「くそっ……たれめ… 」
「おうおう、可愛そうに。折角傷を癒してやろうと思ったのに偶然品質の悪いポーションしか手元になくてなぁ、クハハハハハハ 」
「…ぐそーー!……死ね!死ねーーー!」
「負け犬がギャーギャーうるさいぞ…そうだな、おい、誰か家畜の餌と飼育している家畜をここに連れてこい! 」
「「「 はっ 」」」
部屋の番をしていた兵士達に命令をとばす。
「もうお主では十分楽しんだのでな、お望みどおりそろそろ殺してあげようじゃないか。クハハハハハ」
しばらくすると、部屋には乾燥させてある家畜の餌と鳥たちが部屋に運ばれてきた。
「さてと、鎖の拘束を解除して… 」
鎖の拘束を解除された男は仰向けに倒される。
拘束具はもはや何も着けられてはいないが、男はもう身体を起こす力さえ残ってはいなかった。
男は兵士達によって身体中に満遍なく餌をまぶされていく。
「よし、準備完了だ!では鳥どもを放て!」
放たれた鳥たちは一心不乱に餌の方へと進んでいく、鳥たちはまだご飯前であったためとてもお腹が空いていたのだ。
「さあさあ、今日のご飯はあの餌の山だ!存分に食べるがよいぞ。クハハハハハ」
「ひ、ひぃ…な、何だよこっちに来るんじゃない!あっち行けよ!」
餌まみれの男はあっという間に鳥たちに包囲され、餌を食べようと鳥たちに突かれる。
「 や、やめろ…突くんじゃない!い、痛い!肉も一緒に啄ついばむな!クソッ!クソッ! 」
男がなけなしの力を振り絞って怒鳴りながら抵抗を試みるも、餌に夢中の鳥たちはちょっとやそっとの事じゃ全く動じない。
むしろ抵抗すればするほど鳥たちはより一層勢い良く男に付着している餌を抉り取っていく。
男はなす術もなく鳥たちに身体中の餌を求めて啄まれていった。
………五分ほど経っただろうか、身体中にあった餌は殆ど食い尽くされてしまった。
男は餌が無くなればさすがに鳥たちはどいてくれるだろうと思い、もう少しの辛抱だと我慢する。
それにしても…と、先程から餌と一緒に身体の肉片を一緒に持って行かれる回数が多くなっていることに男は気がつく。
「痛い痛い!肉を、肉を啄むな!」
それでも御構い無しに鳥たちは餌を啄む、いや、もう「男」を啄み始めていた。
嫌な予感がする、と男は思った。もしかして、俺を餌と勘違いしているんじゃないのか?と。
そしてその予感は正しかった、鳥たちは勢いが衰える事なく肉片を啄んで行く。
もう鳥達の目には、男はただの餌にしか写っていないのだった。
「やめて!痛い!痛い!俺を食べないで!お願い、お願いします!俺を食べないで!」
鳥たちを退かそうと動かした右腕の肉をえぐり取られた。怒鳴り散らそうとして開けた口に鳥が顔を突っ込んで中の肉をえぐられた。
鼻の穴にクチバシを勢いよく突っ込まれ鼻の奥に突き刺さった。ギョロギョロ動く眼球をクチバシで勢いよく潰された。
男は死の恐怖に怯えながらも必死に鳥たちに喰われまいと抵抗し、暴れる。
だがそんな事は御構い無しに鳥たちは男を啄んでいく。
手、足、指、お腹、指、股間、首、頭、目、鼻、耳、口…全身をゆっくりと、だが確実に啄んで行く。
「や、やめ…… 」
この拷問の怖いところは、鳥たちにゆっくりとだが確実に食い殺されていくことだ。何せ心臓を一突きされるわけでもないし、頭部は髪で覆われているため鳥もあまり食べようとはしない。即死は無いのだ。
だがそれ以外の部位に関しては鳥は喜んで肉を啄む。
全身を食べられる恐怖、特に顔を食べられる時の恐怖は計り知れない…
「さて、オレは忙しいからな、そろそろ退出するとするか。最期が鳥の餌か、笑える死に方じゃないか!ルールすら守れん脳みそ空っぽのお前が最後は役に立てたんだ、よかったではないか!クハハハハ」
鳥の餌となった男の叫び声は、少なくとも30分は聞こえたという。




