第13話 生還
チュンチュンと小鳥が楽しそうに鳴いている。ふんわりと地を照らす太陽の光がとても心地良い。
そして下に敷かれた緑の絨毯のなんて気持ちのいい触りごごち…まだ起きたくないなぁ。もう少し、もう少しだけ寝よう。
ん?…って待てよ!確か俺はゴーレムと戦ってたはずじゃ。ゴーレムは!ゴーレムはどうなった!?
ガバッと勢いよく起き、何が起こっても良いように警戒しつつも周囲を観察する。
…というかここはどこだ?明らかに俺がいた洞窟の中じゃないな。誰かが俺をここに運んだのか?
あれ、身体が自由に動く…俺の右半身は使い物にならないくらい潰されていたはずなんだけど。
……もしかして、俺って死んだ?ここはあの世か?
身体は綺麗さっぱり怪我の跡すら見当たらないし、ここめちゃくちゃ居心地良いし。
何この芝生、めちゃくちゃフッカフカなんだけど。手で触ってみてもチクチクしないし、むしろつやつやしてて肌触りいいんだけど…
しかもなんか周囲に生えてる木々、全部あり得ないくらい大きいんだけど。多分だけど、どれも30m以上の高さはありそう。
これぞファンタジーというか何というか、いやもう何がどうなってるんだよ!誰か俺に教えてくれよ…
ぶつくさ文句を言って現実逃避をしていると、ふと森に変化があった。
まるでモーセが海を割ったかが如く、周囲の木々が左右に整列するように分かれて一本の道が形成されていく。
「いやいや、何で森が動いているんだよ。トレントか?トレントなのか?この森全部トレントとかやめてくれよ…」
この世界には俗に言うトレントなる動く木の魔物は普通に存在しているのでそこまで驚く光景ではないのかもしれない…わけないよな。
父様とかから聞いた話だと、普通群れても100いないくらいって言ってたし。森全てがトレントとか聞いたことないぞ!
それに大きさももっと小さいはずだし。30mのトレントの群れとか…どうやって戦えばいいんだよ。
でも不思議なことに、あの森からは魔力は感じないんだよなぁ。魔物だったらもっと禍々しい魔力を放ってるはずなんだけど…なんだろう、あの森からは魔力というか…うーん、生命の力強さ?生命力みたいなのを感じる。
て事はあの森はトレントじゃないのか?
などと考えているうちに、動いていた木々は綺麗に左右へと移動し終える。
形成された道の奥には、巨大な一本の木がぼんやりと光を帯びながらそびえ立っていた。何かの御神木だろうか?
というか何かゆっくりゆっくり近づいてきてるよね…やっぱり。あ、最初は一本の木が近づいてきてるのかと思ったけど違うわ。あの神々しい木が生えてる山ごとこっちに向かってきてるや、草。
遠くからだとただ漠然と山としか感じなかったが、今では完全にその圧倒的な存在感に呑まれてしまうくらいに迫ってきた。
山は青々とした木々が生い茂っておりどれも生命感に溢れていているようにみえる。
更によく見ると生き物達が巣を作っていたり追いかけっこをしていたり餌をせっせと集めていたりと当たり前のように生活している。
沢山の木々が生い茂った山で活発に生き物達が生活している楽園が広がっているようにみえる。
それがただの山であればとてものどかな風景であったのだが…そしてそんな山の中心部にはひときわ大きな大木が一本異彩を放って存在していた。
山に存在するどんな木々よりも生き生きしていて神々しささえ感じる。
おそらくこの大きな木、御神木?とも呼べるであろうこの大木は見る者全員を魅了しその神々しい存在感を間近で感じ取ろうものならきっと誰もが祈りを捧げてしまう、それくらいの神々しさを放っている。
そんな山を支えている4本の足は木の根っこのようなものが何重にも絡みつき束になって、更にそれが幾重にも絡み合って出来ている。
顔はまさしく龍と言った感じの鋭く絶対的強者のオーラを放ちながらも、同時に生命の母を思わせる慈悲深い雰囲気も醸し出しており、それらが上手く混ざり合っている。
そんな神々しい魔物?が遂に俺の目の前に来てしまった。
なんだろう、ものすごく見られてる気がする。まるで何かを見定めるかのようにじっくりと全身を隈なく見られている、そんな風にも感じた。
眺める事数分、満足したのだろうか?ゆっくりと顔を上げ、
『小さき者よ、よくぞ試練に打ち勝った。褒めてつかわす 』
などと言ったような気がするが、その声に乗せられた圧はまるで竜の咆哮のごとくであり、そんなものを真正面から受けた俺が正確に聞き取れるわけがない。
もはや掘削機も驚くほどの振動をしていたに違いないくらいには全身ガクブル状態だ。全身から汗が滝のように溢れ出してくる、意識を保つのもやっとな状態だ。
『 ふむ、どうした。…成る程、この姿の我の声はそなたには厳しいものであったか。失礼、下界のモノと戯れるのは久方ぶりなのでな…ならばこれならどうだ 』
すると、地面からぴょこりと可愛らしいミニチュアサイズの木が生えてきたと思ったら…わさわさと姿形を整えていき、やがて俺の目の前には一体の人形が姿を現した。
「どうだ、これを通してなら我の圧を感じることもなく話すことができるだろう」
もうめちゃくちゃな圧を感じたり、木が人形になったりそれが喋ったり…いろんな事が起こりすぎてもはや何に突っ込んでいいのかわからない。でもまぁ、どうやら俺のためにこの人形を通して話してくれると言うことは理解できた。
「は、はい。こ、これなら何とか…お気遣い感謝します」
「よし、それでは仕切り直してもう一度。小さき者よ、よくぞ試練に打ち勝ち、生きてここまでたどり着いた。褒めてつかわす」
「あ、ありがとうございます?あの、でも試練って何の事でしょうか?」
「そなたは見事我が試練に打ち勝ちここに辿り着くことができた。よって規定に乗っ取りそなたを我が神域に案内した。それでは、まずは名でも名乗るとするか」
一泊、音がこの世から消え去った後
「我は【調停神】ユグドラシル、この世界の調和を保つ神である」




