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任せろなんて簡単に言うものではない9

パンツ一枚になった俺はサイト湖を見つめていた。

トオルは着替えてくると言って、用意されている簡易的な脱衣場へいったっきりだ。


遺跡探索に来たもののためにこういう施設を建てておいてくれるのはありがたいな。


「しかし、潜ったところでどうするんだ。俺もそんなに息を止めてられないぞ」


湖の中の遺跡を見つけたとして、どうやって調査をする。

俺があれこれ考えていたら、水着に着替えたトオルがやってきた。

潜る準備は万端ではない、このままでは……遺跡について聞かないと。


「ダットさん、私の水着姿は無視ですか。ショックですよぅ」


「そうだった。トオルは俺のパンツ一枚に反応をくれたか。……俺も何か言わないと」


トオルの水着は白いビキニ……他に特徴はない、終了。

だが、このままではトオルを悲しませてしまう、何か言わないとなるまい。

俺はトオルを観察し、特徴的な部分があったので、それについてふれた。


「リュック、背負ってくんだな」


重くないのか、防水性ががあるのか、中身は大丈夫なのか……そもそも何が入っているのか。

どちらにせよ、この返しは失敗だったらしく、トオルが膨れっ面になった。


「水着関係ないですよぅ。まあ、良いです。遺跡のことは……着いてくればわかります。さあ、出発します。私に続いて下さい」


リュックを背負ったまま、トオルは湖へと入っていった。

着いていかないと、何か言われるだろうな。

呼吸の手段はともかく、短時間ならば潜っていられる。


まずは、湖の中の遺跡とやらを拝ませてもらおうか。

俺は息を大きく吸い込み、湖の中へと入った。

昼間だが湖の中、ぼやけて見えると思っていたが、トオルがブローチを使って照らしてくれていた。


そのおかげでトオルを見失うことなく、着いていくことが出来る。

こっちにこいという合図を受け指示に従い進んでいった。




「ぷはっ……ん、何故息が出来る」


トオルに着いていき、洞窟のような場所に入っていった。

こんな空間があっても不思議ではないが、ここは湖の中、息が出来るはずないのだが。


「さあ、行きますよぅ。ダットさん。ちゃっちゃと装備を着てください」


トオルが俺に槍やらの装備を渡してくる……リュックから出したのか。

トオルのリュックは何かしら特別な効果のある貴重品なのかもしれない。

……そうじゃないと、今までのことが説明つかないしな。


「着るのは良いが……息が」


「歩きながら説明しますよぅ。とにかく、着替えて下さい」


「……わかった」


トオルに従い、装備を着て遺跡を探索することにした。

俺にはわからないが壁に模様が書いてあったりするものは、何か意味があるのだろう。


動物のような絵もあるが……年月が経っているから壁が崩れている箇所もある。

あちらこちらに破片やら瓦礫やが落ちていて、つまずかないように気を付けた方が良さそうだ。


「トオル、それで息が出来る理由を説明してくれ」


「あ~、それはですね。遺跡に置いてある古代文明の遺産の力でしょう」


古代文明の遺産、旅をしていた頃に聞いたことがある。」

失われた魔法技術があり、昔はその魔法技術でかなり文明は発展していた……とかだったか。


戦争が起きて多くの命が失われたため、同じ過ちを繰り返さないように魔法技術を封印、破棄したとか。


「……ここには失われた魔法技術が眠っていると」


「その通りですよぅ。ダットさん、知っているじゃないですか。……まあ、そういう類いの物を見つけても取りませんけどね」


「意外だな。トオルなら目を金色に輝かせて、歓喜の声を上げながらリュックに詰め込みそうだが」


それほどの品ならばそれなりの値段がつく。

商談相手は商人ではなく、王族レベルになるだろう、莫大な金が動くぞ。

まあ、大金を一度に手にすると、敵も一気に増えるがな。


「遺跡探索初心者のダットさんに忠告です。やばそうな物を見つけても絶対に取らないで下さい。見つけたら、私に必ず報告をお願いしますよぅ」


「理由を聞いても良いか」


トオルがここまで念を押しているのだから、言いつけは守る。

ただ、そうする理由を説明してほしい。

遺跡探索が今回だけで終わらないのなら、注意事項はきっちりと理由も含めて頭に入れておきたい。


「さっき、ここで息が出来るのは失われた魔法技術のおかげだと推測しました。遺跡に置いてある強大な力を持った物は置かれている意味があるのですよぅ。例えば……ここで呼吸が出来るようにするためとか」


「素人の俺は大人しく……ああいう奴らの相手に専念するよ」


目の前から槍を持った半魚人が二匹、こちらに向かって来ているのだ。

原住民か、こちらに敵意はないのだがあっちは完全に獲物を見る目で突撃してきている。


トオルを後ろに下がらせて、俺は半魚人二匹の相手をする。

後ろからあまり暴れないで下さいよぅ、と聞こえた。

確かに、調査をしに来た遺跡を破壊してしまっては駄目だな。


二、三度打ち合ったがそこまでの相手じゃないな。

危なげなく、確実に一体ずつ倒す。


「終わったぞ」


「ダットさん、さすがです。一撃で倒してくれたので、遺跡に被害はありません。中途半端に傷を与えたりすると、錯乱して壁や物を壊し始めることもあるのですよぅ。完璧な仕事です」


「なら、良かった」


「さあ、進みますよぅ。遺跡の維持に関係無さそうな物なら、持って帰っても大丈夫です。何か見つけたら報告して下さい。さっ、行くですよぅ」


着いてこいと指示がきたので、隣を歩く。

見つかるのは何かな破片や瓦礫ばかりで、貴重品は見当たらないな。

トオルは壁の壁画や文字と自分の手帳を見比べてにらめっこしている。


手帳を覗いてみたら、綺麗な字で書き写された文字やら絵があり、年代や国の名前も書いてあった。

ネイル語やらアカナギ王国やらと……知らん単語がびっちりメモされている。


俺には全く理解出来ない、いるだけ邪魔なのではないかと考えてしまうくらいだ。


俺に出来ることといえば、敵が来ないか見張っていることくらいか。

トオルの側で辺りを警戒するのみ、時間は刻々と過ぎていく。


「ダットさん、ずっと立ったままですが大丈夫ですか。暇じゃありません?」


「俺の仕事は用心棒。雇用主の邪魔はしない。それに遺跡に入るなんて初めてだ。見ているだけで充分」


「そうですか。……移動しましょう。奥にいけば何か見つかるかもしれません。まだ調べられていない場所を狙いたいですねぇ」


「あらかた、探索はされているんじゃないのか」


同業者が何度も来ているはず、調べられていない場所なんてあるのか。


「隠し部屋とか、瓦礫で塞がれている通路とかありますよぅ。ただ、この遺跡はあまり崩壊していないので難しいかもしれませんが」


「……了解」


「見つけるのですよぅ、まだ見ぬ宝を」


「……」


「返事なのですよぅ!」


「……わかった」


遺跡探索もトレジャーハントも似たようなものなのかと思う。

トオルも何かしらの発見はしたいようだし、気合いを入れるかな。

慎重に遺跡を進み、部屋などがあったら安全を確かめ探索していく。


トオルに負けじと俺も懸命に探索をするのだが見つかったのは、何かの模様の入った布、欠けたコップや皿。

あとは、床が隠し倉庫になっていたらしく、見つけた瞬間トオルが大喜びしたのだが、入っていたのは腐った食料と軟膏みたいな物。


トオルはがっかりしていたが、軟膏みたいな物は持って帰るらしい。

もしかしたら、失われた魔法技術で作られた物かもしれないとか。


「今日はこの辺で引き上げましょう」


「……もうそんな時間か。早いな」


「感覚的には昼を過ぎていますよぅ。今日は下見みたいなものです。充分に準備をして後日、また来ましょう」


遺跡探索、俺は珍しい物を発見したり、たくさんの罠が待ち受けていたりと想像していたのだがな。

今日は半魚人と戦いになったこと以外、危険な目に合わなかった。


……俺は役に立てたのだろうか、トオルの調査には手伝えないし、ぬか喜びもさせた。

俺がいる意味はあるのか……。


「おやおや、浮かない顔をしていますね。まだ始まったばかりなのですよぅ。根気が大事です。あと、絶対に何かを発見するという意志もですね」


「だが、俺は遺跡探索の初心者だ。根気強く続けてもしばらくトオルの足を引っ張るぞ」


「誰だって最初は初心者なのですよぅ。……それに、ダットさんの本職は用心棒です。遺跡探索はサブですよ、サブ。それに隠し倉庫も見つけたではないですか、大手柄ですよぅ。次も頑張りましょう」


励まされながら俺達は遺跡を出た。

こうして俺の初の遺跡探索が修了したのである。




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