姉妹
9.姉妹
捕らえられた馬賊の首領フレアは、粗末な麻の服を着せられ牢に入れられていた。手枷などははめられていないものの、柱の様に太い格子で閉じられた牢は、いかに凄腕の剣の使い手とは言え、とても素手で破れる代物では無かった。
その頃オルア達は…
「はぁ…いつまで待たされるんだ?」
誰に言うとも無く呟くオルア。一行はかなり長い間スティングの館で待たされていた。長年町を悩ませていた馬賊の首領、それを捕らえたのだから、当然その処罰についての話し合いには参加できるものと思っていたのだが…現実は違った。
「なんで?…なんであんな事」
うなだれたまま呟くミンク。しかしミンクの態度こそが一行がここへ待たされる原因となったのだった。
見事馬賊の首領を倒したオルア。しかしその体を抱きかかえ、嬉しそうに涙を流すミンク。混乱した状況でその姿を見た町人は、あろう事かオルア達が馬賊とグルになって町から礼金をせしめようとしている集団、そう考えたのだった。その為スティングが単身話し合いの場に出かけて行ったのだが、いまだ帰って来ない。気まずい沈黙が暫く続いたが、やがて耐え切れなくなったオルアがたまらず声を上げる。
「あーもう!一体なんだってんだよ?」
そう言って立ち上がったオルアは、声を荒げてミンクに問いかける。
「なあ、あの首領…フレアだったよな?一体ミンクとどんな関係なんだよ?俺達だって一緒に戦って来た仲間じゃねえか!教えてくれたっていいだろ?」
言い終わった所でオルアはガルとバーン、そして意外にもイーロンまでもが冷たい目で自分を見ていた事に気付く。
「な…なんだよ。俺は間違ってねえぞ」
ムスッとした顔でオルアは腰を降ろす。しかし、意外にもミンクが口を開いた。
「みんな…ゴメンね。私事に巻き込んじゃって。確かにオルアの言う通りだよね。訳も分からずなんて、スッキリしないもんね」
「あ、いや…別に無理に言わなくても」
バツ悪そうにオルアは言うが
「いいの、言わせて」
ミンクは笑顔でそう答えると、フレアとの経緯を語り始めた。
「ちょっと前…って言っても貴方達の感覚では随分前になるけど、オルアのおじいさんを私が助けたって話は前にしたわよね?」
「ん?ああそうだったな。確か…五十年ちょっと前って聞いたと思う」
「そう。そしてジー君が出て行ってからも、森に入り込んだ迷い人を見つけては私がお世話してたの。そして、フレアは私が森で出会った最後の人間よ。でもまあ正直な所、暫くしてからは私の方がお世話になってばっかりだったんだけどね。前にお姉さんみたいな人って言ったのはそのせいね」
ミンクはそこで言葉を切ると、寂しげな笑みを浮べた。
「フレアは、戦災孤児だったの。両親を亡くしてまだ幼い弟と森をさまよっている所を、たまたま散策に出ていた私が見つけたの。でもその時、既に弟さんは亡くなっていたわ。てっきり取り乱すかと思っていたのに、不思議とフレアは落ち着いていた…きっと、旅の途中で覚悟していたんでしょうね。弟さんと…自分の最後を。でもね…そんな事があったけれど、フレアは何年か私達と一緒に過ごした。そしてずっと一緒にいられると思い始めたその時…不幸な事故が起きたの」
そこで言葉を切るミンク。その様子をじっと見守っていたオルアは、いつしかガルもバーンも、そしてイーロンまでもが真剣な眼差しでミンクを見守っている事に気付いた。
「その日、それこそ本当の姉妹みたいに仲良くなった私達はお気に入りのお散歩コースを一緒に歩いていたわ。そうしたら、突然悲鳴が聞こえて来て、慌ててその場へ行った私達が目にしたのは…無残にも両眼を射抜かれた同胞の姿だった」
一同はミンクの言葉に息を飲む。
「それは迷い込んだ人間が誤って射たものと判断されて…その同族であるフレアは追放を言い渡されたの。当然私は抗議したわ。何しろ矢を放ったのが本当に人間かどうかも解らない上に、仮にそうだとしてもフレア自身には何の関係も無い。なのに、おかあさ…女王はそれを聞き入れてはくれなかった。でも私には確信があったの。エルフの歩哨に気付かれずに矢を放つなんて、普通の人間に出来る訳が無い。それも、森に迷い込んで混乱しているなら尚更だわ。だから私もフレアを追って国を出たの。彼女の追放を止められなかった事を謝りたいのと、そして同胞を殺した相手を探す為に」
ミンクはそう言って顔を上げる。するとその目には決意を帯びた光が浮かんでいた。
「だから、私はフレアを助けたい!たとえ悪い事だと言われようと!だから…皆は先へ進んで、これは私一人の問題だから」
その言葉に一同は沈黙するが、それはすぐに破られた。
「そんな思いつめた顔、ミンクには似合わねえぞ。それに、きっと何かいい手はある。俺達と…それにここにはいないがスティングだって力になってくれるだろ、なあ?」
そう言って笑うオルアに、ガルとイーロンも頷く。そして
「その通りだギャ!きっと何とかなるギャ!だからまずはフレアの事を色々聞いてみるのがいいギャ!オイラはちょっとしか見てないけど、言われてる程の悪人とは思えないんだギャ!」
バーンは飛び回りながら元気に叫ぶ。すると不意に扉が開き、待ちかねたスティングが姿を表した。
「お待たせして申し訳無い。馬賊の首領、フレアに沙汰が申し渡された」
その言葉に息を飲む一同。そして…
「有難う!スティングさん!」
嬉しさのあまりミンクはスティングに抱き付いて涙を流す。
「お…おいおい、何も私の力では…」
戸惑いながらもスティングはその頭を優しく撫でると、ゆっくりとその体を離す。そして笑みを浮べながらミンクに告げる。
「さあ、貴女を待っている人がいますよ。行ってあげなさい」
その言葉にミンクは涙を拭って最高の笑顔を見せる。
「はい!行ってきます!」
元気良く声を上げるや否やミンクは部屋を飛び出していた。さっきまでの落ち込んでいた顔を思い出したオルア達はその変わり様に驚いたが、互いに顔を見合わせると思わず笑みを浮べた。そして、不意にガルが尋ねる。
「なあ、どうやって町の皆を言いくるめたんだ?まさか脅したわけじゃあるまいな?」
唐突だが当然とも言えるガルの問いに、スティングも楽しそうに笑みを浮べた。そして
「まあ、そいつは一杯やりながらお話しましょう!」
そう言って一席用意させるスティング。当然の事ながら異を唱える者はいなかった。
「では、会議の内容をかいつまんでお話いたしましょう」
そう宣言したスティングは、特上のワインを一口飲んで語り出す。
「まあ、皆さんご想像の通り最初は彼女を処刑しろと言う流れで決まりそうだったのですが…と言うよりは、会議以前にそう決っていた事を確認する場だった様でした。実際私が意見しなければそれで決定だったでしょう」
そう言ってワインを空けるスティングに、ガルもちゃっかりおかわりをしつつ突込みを入れる。
「お前の手柄は聞いてねえよ!早く続きを話せ!」
笑いながら言うガルに、スティングも笑いながら答える。
「まあ、私としてはあれだけ美しい女性を殺すに忍びないので、思いつく限りの言葉を並べ立てて頭の固い御仁達を脅し…では無く説得した訳ですが、実は意外に簡単でしたよ」
更にワインを飲み干したスティングは、今度はボトルのまま飲みだした。
「なあ、スティングってこんなキャラだったっけ?」
呆気に取られるオルア。しかしガルは事も無げに答える。
「ああ、アイツは普段真面目な奴だからな。その分反動がキツいんだ」
そう言って笑うガルは、既に酒樽を手にしていた。
「…やはり、酒…悪魔の業」
「別にいいんだギャ!楽しそうだギャ!」
冷静に食事を続けるイーロンと、誰よりも楽しそうなバーン。そんな様子はお構いなくスティングは語り続ける。
「実際の所、馬賊達の結束は私もどの程度かは知りません。が、仮に彼女を処刑したとなれば…残った仲間が報復に来るというのは充分に考えられる事です。かといって、こちらから出向いて残った勢力を殲滅するというのも無理がある。実際今回の戦闘でも相当な数の馬賊を取り逃がしたと聞いていますしね。正直手柄と言えるのはこの場にいる皆さんの活躍位な物でしょう。だから私は進言したのですよ。馬賊の長フレアは処刑せずに追放すべきだと。そしてその身元はそれ以上に腕の立つ者が保護する以外にありえない、と」
そこまで言って疲れたのか、スティングは腰を降ろす。しかしその手には既に三本目のボトルが握られていた。それを口にしたスティングは、再び口を開く。
「いかに私や騎馬隊が力を尽くしても、死に物狂いで報復に来る馬賊を全て退けるのは至難の技。ならば彼女をあえて逃がし、馬賊の目を裏切り者とも言える彼女に向けた方がこの町は安泰なのではないか、そう告げた私にあえて反対する者はいませんでした。それに実の所、彼女に殺された者はごく僅かです。それも全てが一騎打ちを挑み敗れ去った者。今更恨み言もありますまい」
そう言ってスティングは満足そうにボトルを空け、次のボトルを手にした。そこへすかさずオルアが疑問を投げかける。
「大体話は解ったけど…もしかして今度はフレアが俺達の仲間になる…って事なのか?」
「ご名答!流石は我が友我が好敵手!」
スティングは陽気に指を弾く。
「おい!じゃあ俺達が馬賊に狙われるって事になるんじゃ」
驚いて立ち上がるオルアだったが、ガルはその襟首を掴んで強引に座らせる。
「なあ、考えてもみろ。スティングの交渉が無ければあのネエちゃんは処刑されてたんだぞ?そうなると俺達の大事な大事な仲間、ミンクが物凄く悲しむ事になる。それに比べたら残った馬賊のへなちょこ共を蹴散らすのは訳無い事だ!その上あの綺麗なネエちゃんが仲間になるんだぞ!どうよ、決して悪い話じゃねえんじゃねえか?」
ガルに酒臭い息を浴びせられながらそう言われると、オルアもなんとなく納得せざるを得なかった。
「よーし、じゃあオルアも納得した事だし、なあイーロン、異存はあるか?」
「…異存、無い。巫女、言った。我等の旅、進むにつれ、道、険しくなる。強い仲間、多い方がいい」
「よーし!じゃあ今夜は新メンバー歓迎の宴だ!まあ歓迎する相手はここにいないが、細かい事はどうでもいい!」
「御頭、どこまでもお供致します!」
「んギャ!盛り上がって来たギャ!オイラも頑張って歓迎するギャ!」
「おお、流石はスティング!バーン!よっしゃ!こうなりゃ飲むしかねえ!」
「訳わかんねえよ」
呆れるオルアをよそに宴は盛り上がる。イーロンはと言えば、黙々と料理を口に運びながらも時折笑みを漏らす。どうやらまんざらでもなさそうだった。
その頃、ミンクはいまだ牢に入れられているフレアの元にいた。とは言えそれは格子越しでは無かった。看守の心遣いにより牢の扉は開けられ、ミンクは何ら躊躇すること無くその中へ入り、涙ながらにその手を取ったのだった。
「フレア…会いたかった。そして謝りたかった…ごめんなさい…本当にごめんなさい」
「姫様…」
フレアは一瞬その手を握り締めるが、すぐに手を離して後ずさりした。
「いけません、貴女様の様な高貴な方がこの様な罪人の牢へ立ち入るなど」
フレアはそう言ってミンクに平伏するが、ミンクは構わずに近付くとその体を起こし、今度はしっかりと抱き締めた。
「なっ…姫様!」
「いいの!」
「姫様?」
「お願い、こうしていたいの…それにフレアが自分を罪人だって言うのなら、私だって同じよ。貴女には何の罪も無かったのに、女王の命令が執行されるのを黙って見ている事しか出来なかった。それだって罪だわ」
「そんな事はございません」
「ううん、そうなの!」
ミンクはそう言って真っ直ぐにフレアを見つめると、突然フレアの胸に顔をうずめて泣き出した。困った顔で何か言おうとするフレアだったが、昔からこうなったら何を言っても無駄だった事を思い出すと、苦笑しながらその頭を優しく撫でる。
暫くするとミンクは落ち着いたのか、ゆっくりと顔を上げる。そして
「えへへ…嬉しいな」
「えっ…いや、急に何をおっしゃいます?」
まるで無邪気な子供の様な笑顔で見つめられると、フレアは表情を一変させる。たまらず照れ臭そうに視線をそらすフレア。しかしミンクは両手でその顔に触れると、強引に自分の方へ向けなおす。そして、今度は真顔になって告げる。
「フレア…既に聞いているのかもしれないけど、貴女の処刑は免除になったわ」
「…まさか!」
「そのまさかなのよ!詳しい事は私もまだ聞いていないんだけど、恐らく貴女は私達の旅に同行して色々と手助けして貰う事になると思うの。あ、駄目よ?断っても。もう私はそうするって決めたんだし、そうしなきゃ貴女は処刑されちゃう。そうなったら私もきっと生きる希望を無くして死んじゃうかもしれないわ!そんなの貴女だって嫌でしょ?だからお願い、一緒に行こう?」
熱く語りながら今度はまた子供の様な目でフレアを見つめるミンク。その視線と情熱と愛らしさとはフレアの心を動かし…まあ実際の所は何を言っても無駄と観念したからなのかもしれないが…結局はフレアが折れた。
「…解りました、お供させて頂きます。しかし…馬賊達は私含め主要な者が全て打ち倒されたので問題無いと思いますが、今まで被害を被った町の人々の心情を考えると、私が姫様と連れ立って旅に出るなど…とても許せる事では無いのではありませんか?」
「うーん、正直そこは私も心配なのよね。でも、スティングさんが大丈夫だって言ってたし、それにいざとなれば私がズルするから大丈夫!」
「ズル…ですか?」
「あ、大丈夫よ!別に誰かを傷付けたりする訳じゃ無いし。むしろ皆が幸せになれるズルだから気にしないで!」
「は…はい、姫様」
「あ、そうそう。私は一人旅のエルフって事になってるから、皆の前では姫様って呼んじゃ駄目よ?」
「そうなのですか?何故?」
「まあいいじゃない!とりあえずそんな訳だから、宜しくね?」
「そうですか…正直姫様が下賤の者と一緒に旅をするのは如何な物かとは思いますが…仕方ありません。ところで、私は姫様をどの様にお呼びすればよろしいのでしょうか?」
「え?そんなのミンクでいいに決まってるじゃない」
「そんな恐れ多い!何をおっしゃいます!」
「もう、相変らず真面目なんだから。じゃあその真面目さに付け込ませて貰うわ。皆の前では私をミンクと呼ぶ事。これは私のお願いだからね?解った?」
「…うぅ…それは流石に…」
「わ・か・っ・た?」
「仕方…ありません。皆の前ではそう呼ばせて頂きます」
「あ、ついでにもう一つ」
「何でしょうか?」
「これを機に、もう私を姫様って呼ばないで頂戴ね?これもう決定したから!」
「え?それは…」
「駄目よ、これからは旅の仲間なんだから。絶対に駄目だからね!解った?」
「は…はい」
「じゃあ早速練習よ。ねえフレア?」
「はい、姫様」
「ちがーう!」
「あ…えっと…えーっと…ミ、ミンク?」
「そう、上出来よ!これからはそれでお願いするから、忘れちゃ駄目よ!」
「…ふぅ」
楽しげにはしゃぎ出すミンクをよそに、フレアは大きく息をついた。それが処刑を免れた安堵からなのか、はたまたミンクの出した無理難題のせいかは…定かでは無い。
それから三日後…
スティングの根回しもあり、オルア達は町の人々に見送られて町を後にする。フレアは罪人扱いだったので武装の殆どは町で処分される事になっていたが、不思議な装飾のされた剣と鞘はそのままオルア達に手渡された。強力な魔力が込められた武器を町の人々が恐れた為だったのだが、フレアとミンクはその結果に胸を撫で下ろしていた。と言うのも、その剣はフレアが追放される直前にミンクがフレアに送った、エルフの名工の手による逸品で、二人にとっては絆とも言えるかけがえの無い物だったからだった。
しかし、いざ町の門を出ようとしたその時、不意に誰かが叫ぶ。
「人殺し!さっさとくたばれ!」
その声に振り返るミンクだったが、声の主は人混みに紛れて誰かは判らない。しかもタチの悪いことにその声に便乗して他の町人も騒ぎ出し…あっと言う間に一行は非難轟々、とてつもない非難の嵐に包まれてしまった。
「う…ああ…私…は」
フレアは突然の事に、困惑の表情で周りを見回す。そんなフレアを見るに忍びないミンクは
「ふぅ、やっぱズルしなきゃ駄目か。それ程簡単に恨みなんて消えやしないわよね」
そう呟くと同時に、やはりフレア同様困惑しているオルア達に声をかける。
「ねえ、ちょっとの間でいいから皆を静かにさせて」
「は?ちょっとって…その間に逃げるのか?まあそれも仕方無いか」
若干困惑気味なオルアは頭を掻きながら答えるが、そこへガルが割って入る。
「おい、オルアはミンクより頭の良さに自信があるのか?」
「え?…いや、それは…」
「じゃあ、ミンクの言う通りにしようぜ」
ガルはそう言うと大きく息を吸い…
「黙れ!」
町はおろか、草原を超えて遥か山々まで響くその声に、町人の騒ぎは一瞬で静まる。更に声を上げようとするガルだったが
「あ、もういいわ。有難う!」
ミンクはそれを止めると、目を閉じて深呼吸する。そして…静かに歌い出した。
「…姫様…」
フレアはいつの間にか涙を流していた。しかしそれは悲しみのせいでは無く、言いようの無い喜びに満たされた為だった。それは周りを囲む町人にも伝わり、ある者はフレア同様嬉し涙を流し、ある者は楽しげな笑みを漏らし、ある者は笑い声すら上げる。すると、突然オルア達を称える声が上がった。
「何だかんだ言っても、この人達が馬賊からこの町を救ってくれたんだ!笑顔で送り出そうじゃないか!」
その声の主こそは、ミンクと共に馬を駆けさせたファイラスだった。すると同様に騎士団のエメス、ガドルトも声を上げ、さらにその歓声は町全体に広がっていき…その様子にガルは感心した様に呟く。
「流石だな、我等が歌姫」
「いや、あまり褒めると調子に乗るぞ」
「まあいいじゃねえか、ほれ」
そう言ってガルが指差す方には、嬉しそうな笑みを浮べつつも朝日に涙を輝かせるフレアの姿があった。その姿を見ては流石にオルアも言い返せない。
「ま…今日くらいはいいか」
頭を掻きながら町を出るオルア。その背後では割れんばかりの歓声が一行を送り出していた。一方その頃…
「ふっ、まるで疾風の様な連中だったな」
「あっはっは!流石は騎士団長殿、たった一言で彼らの事を上手く言い表しておいでだ」
「そうかね?まあいい、それよりまだまだ残っている、さあもう一杯!」
「おお、それなら喜んで!」
突貫工事で新たに造られた物見櫓の上で、騎士団長とスティングは楽しそうに酒盛りをしていた。その視界の届くか届かぬかの境界辺りに、既に豆粒程となったオルア達が入り込む。
「さて、愛すべき御頭と…我が友我が好敵手の行く末や如何に?まあそれこそ神のみぞ知る、だな」
スティングはその姿をしっかりと目に焼き付け、嬉しそうに杯を日にかざした。
遂に探し人に出会え、そして共に旅立つ事が出来たミンク。
そして新たな戦力を得たオルア一行は更なる旅へを歩みを進める。
果たして次に待つのはいかなる敵か?そしていかなる味方か?