疲れました。
空中での戦闘で百体のゴーレムを撃退してから数時間後。基地に帰還したハジメは、自分以外誰もいないリンドブルムのブリッジで艦長席に体を預けていた。
「つ、疲れた……」
艦長席に座りながら力なく呟くハジメは疲れきった様子で、少しでも気を抜けばそのまま眠ってしまいそうに見えた。
「軍の仕事って、敵と戦うだけじゃなかったんだな……。報告書なんて初めて書いたよ……」
ゴーレムの群れを撃退して基地に帰還したハジメを待っていたのは、今回の戦闘の報告書を作成して提出する作戦の後処理だった。
戦闘の詳細な情報を報告書にまとめるという作業は、ほんの数日前までただの学生だったハジメにとって全くの初体験の上、ハジメの周囲の状況は非常に複雑であったため報告書の作成は困難を極めた。
まさか馬鹿正直に『最初は安全な距離からゴーレムを狙撃していたが、途中から上層部の命令でゴーレムに反撃される距離まで近づいた。ゴーレムに近づいた後は十秒くらいでゴーレムを全滅させたが、自分より先に来ていたロックバード部隊は全く活躍していなかった』と書けるはずがなく、コロネル大佐のアドバイスのもとでもっともらしい理由をつけた報告書を作成したが、その頃には時刻は午前零時を回って日付が変わっていた。
士官学校ソヴァール・イコールの学生寮の門限はとうの昔に過ぎており、今日はこの基地で寝泊まりすることになったハジメは腹に手を当てて呟く。
「お腹……空いたな……」
「は~い。お待たせしました。お夜食の時間ですよ♪」
「え? ファムさん?」
まるでハジメの言葉を待っていたかのようにファムが手に皿を持ってブリッジにやって来た。皿には大きめのサンドイッチが乗ってあり、恐らくは基地の食堂を借りてハジメのためにファムが作ったものだろう。
「お口にあうか分かりませんが、どうぞ食べてください」
「あ、ありがとうございます」
絶妙のタイミングで差し出された夜食を思わず夢中になって食べるハジメ。そんな彼をファムは、我が子の食事を見守る母親のような瞳で見つめる。
「美味しいですか?」
「はい、美味しいです。ファムさん、本当にありがとうございます」
「いえいえ、これくらいなんでもないですよ。それよりも明日から学校で早いですから、それを食べたら早めに休んでくださいね」
夜食を食べながら簡単な話をするハジメとファム。この時ファムの尻尾が小さく嬉しそうに揺れていたのだが、ハジメも彼女本人もその事に気づいていなかった。




