転生してました。
しばらくの間呆然と星空を見つめていた一は、やがて恐ろしいものを見たような表情で後退り窓から距離をとると、気持ちを落ち着かせるために大きく息を吸って吐いた。
「お、落ち着くんだ、僕。落ち着くんだ、一。落ち着いて今自分に出来ることを考えるんだ……」
一は自分に言い聞かせるように呟いた後、もう一度周囲を見回す。
「とりあえずこの部屋から出てみようかな。外に出たら人に出会えるかもしれないし。とにかく、ここが何処なのか調べないと……うわっ!?」
ポン☆
自分が何処にいるのか調べようと決めた一の目の前に突然一枚の光の板みたいなものが現れ、それに驚いた一は思わず悲鳴をあげて尻餅をついてしまう。
「な、なんだよコレ? ……何かの画面みたいだけど宙に浮いている? 糸で吊っている訳じゃないよね?」
一は突然現れたモニターと思われる光の板を注意しながら見ると、モニターには機械で作られたドラゴンの画面が映っていた。機械で作られたドラゴンは翼を広げているようなデザインで、よく見るとドラゴンの胴体に何やら点滅している一点の赤い光があった。
「この赤い光……もしかして僕が今いる現在地ってことか? いや、それよりもコレって……」
一はある意味、先程窓から宇宙を見たときよりも驚いた顔でモニターに映っている機械のドラゴンを凝視する。
「このドラゴン……間違いない。これは僕が『マスターギア』で造った宇宙戦艦、『リンドブルム』だ……」
何度もモニターを見て確認して、ついに一は震える声で呟いた。
マスターギア。
それは今から二年前に発売されたゲームの名前だった。
プレイヤーは宇宙戦艦の中枢ユニットである巨大ロボット「マスターギア」のパイロットとなって自分だけの機体と戦艦を造って戦うという内容で、造れる機体と戦艦の多さに優秀なゲームバランス、ユーザーからの評価が高いストーリーモードのシナリオ、そしてインターネット対戦を初めとしたサービスの充実から発売されて二年経った今でも根強い人気を誇るゲームである。
一はこのマスターギアの熱烈なファンであり、インターネット対戦のランキングでは十位以内に名前を残しているトッププレイヤーだ。
そしてマスターギアを開発した会社が開く期間限定の対戦イベントで優秀な成績を残したプレイヤーに与えられるレアパーツで造られたのが、モニターに映っているドラゴンの姿をした戦艦「リンドブルム」だった。
「……も、もしここがリンドブルムの中だとしたら、僕はマスターギアの世界に転生したのか?」
一も携帯やネットの小説で一度死んだ人間が異世界に転生して活躍するいわゆる「転生系」小説を読んだことはある。だがしかしそれが自分の身に起こるとは夢にも思わなかった。