全滅させました。
「くっ! やはりこの兵力差では厳しいか!」
ファム達の母艦のブリッジで、艦長のコロネル・ルー大佐はモニターに映し出される戦況を見ながら苦々しげに言葉を漏らした。
「……戦闘が開始してすでに二時間か。援軍は間に合いそうにないか……」
コロネル大佐は懐から祖父の形見である骨董品の懐中時計を取り出して時間を確認する。
正直な話、部下達はよくやってくれているとコロネル大佐は思う。倍近い兵力のゴーレムを相手に善戦して今のところは大きな被害も出ていないし、学生達と経験が浅い新米の士官達も無事に脱出させることができた。
だがゴーレムを倒すまでにはいたらず、アンダーギアに乗って戦っている部下達も、激しい戦闘で動きが目に見えて鈍くなってきている。ゴーレムに襲われてすぐに近くの宙域にいる友軍に援軍要請を出したが、このままでは援軍が到着するまでに全滅するという最悪な結果になりかねなかった。
「何か打つ手はないのか? ……っ!?」
バシュン! バシュン! バシュン!
コロネル大佐がこの状況を打破するために考えを巡らせていたその時、宇宙に三本の閃光がはしった。
「今の光は一体……?」
「こ、コロネル大佐! 戦場にいるゴーレムが三体が……しょ、消滅しました!」
「何だと!?」
ブリッジで戦況を監視していたオペレーターの一人が信じられないといった表情で叫び、それを聞いたコロネル大佐は思わず自分の耳を疑った。
「三体のゴーレムが消滅しただと!? どういうことだ!」
「は、はい! ……どうやらゴーレムは遥か遠方から飛来してきた高出力のビーム攻撃の直撃を受け、消滅したもようです」
「高出力のビーム攻撃……さっきの光か? まさか援軍? オペレーター、今のビームの発射地点を探しだせ」
コロネル大佐に命令されたオペレーター達がビームの発射地点を探しだすと、モニターに緑色の装甲を身に纏い両手で銃を構えた単眼の巨人の姿が映し出された。
「アンダーギアが一機? 一体どこの部隊の機体だ?」
「分かりません。機体の識別コードはベット・オレイユのものですが、かなり古いコードらしく特定に時間がかかります!」
「正体不明のアンダーギアだと? いや、しかし、あの機体、どこかで見たような……?」
オペレーターの報告を聞いたコロネル大佐はモニターを見つめて何かを思い出そうとするが、その間にもモニターの中の単眼の巨人は次の行動に移ろうとしていた。
バシュン! バシュン! バシュン!
一秒数える間に単眼の巨人の銃から三本の光線が放たれる。銃から放たれた光線は寸分たがわずゴーレムに命中すると一撃で消滅させていき、モニター越しにその様子を見たコロネル大佐を初めとするブリッジクルーはビーム攻撃の威力に絶句する。
「なんて威力だ……!? 何だあの機体は?」
長距離からの一撃必殺の威力を持つビーム攻撃の連射。一撃放つ度にゴーレムを一体文字通り消滅させる単眼の巨人の戦いは、もはや一方的な虐殺、いや作業としか見えなかった。
「コロネル大佐! 残りのゴーレム、三十を切りました!」
オペレーターがわずか数秒でたった一機の援軍により二十体のゴーレムが撃破されたことを報告するが、オペレーターの声は助かるかもしれないという安堵よりも困惑と恐れの色の方が強かった。
生き残っているゴーレムの群れは単眼の巨人の方が脅威と感じとったのか、今まで戦っていたアンダーギア部隊と母艦を無視すると単眼の巨人に向かって飛んでいく。だが単眼の巨人はその場から動くことなく銃から光の弾丸を放ち、ゴーレムをやはり一撃で次々と撃ち落としていき、気がつけばゴーレムの数はすでに十体にまでなっていた。
バシュン! バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!
ゴーレムの数は残り五体……四体……三体……二体……一体……、
『これで終わりだ』
コロネル大佐は単眼の巨人がそう言ったような気がした。そして、
バシュン!
巨人の銃から放たれた閃光が最後のゴーレムを消滅させた。
「しゅ、周辺にゴーレムの反応はなし……全て……撃破されました……」
まるで独り言を呟くような呆然とした口調のオペレーターの報告を聞いてコロネル大佐は手に持っていた懐中時計を見た。懐中時計は先程見た時から一分しか時を刻んでいなかった。
「……一分。たった一分で五十体のゴーレムが全滅だと? ……あり得ない」




