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Fedel Eye's  作者: 藤山 博
第一章 ダン・プロジェクト編
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第七話 キッス②

 キッスの部屋に残された一枚の手紙は、アスカが書いたもので間違いないだろう。

 キッスの頭の中は、白い雪のように真っ白となり、困惑を隠せずにはいられない様子だった。

 実はまだ家の中にいるのではないか、と薄い期待感が僅かにあると思ったのか、目を覚ました自室を出る。

 キッスは、キッチン、トイレなどを見てみるが、アスカの姿はない。

 残るは、お約束の風呂場。目の前まで行き、唾を飲んだ後、戸を開ける。

 しかし、アスカの姿はない。

 手紙を残るくらいなのだから、すでにいないのは明白だったであろうが、キッスは捜さずにはいられなかった。

 アスカに何があったのかと考えるキッス。最近のアスカを思い出してみるも、これといって突然いなくなるような事は考えにくい。

 一体何があったのだろうか。


 キッスは、寝間着から普段着に着替え、出かける準備をし始めた。

 とても焦っている様子で、準備は着替えと寝癖を整える程度だ。

 時計は、ちょうど短針が七を指しており、時間は朝七時をまわったところだ。準備には三分弱という短い時間で済ませていた。

 準備が終わり、玄関の扉を開けようとすると、インターホンが鳴った。

 キッスは勢いよく扉を開けると共に、アスカ、と発していた。

 扉の向こうにいたのは……、ハル=ジオンだった。

 キッスは、まるで今にも死にそうな表情を隠しきれないでいた。

 そんなキッスを見たハル、話しかけようとするも、キッスは慌てて飛び出していった。

 ――どこにいるかも分からない、アスカのもとに。


 キッスは家を出て、大通りに出た。

 木々が道沿いに綺麗に並ぶ道は、まだ朝早いせいか、車もほとんど走っていない。

 キッスは、携帯電話でアスカに連絡を取ろうとするが、電話は、ただ鳴り響くだけで、アスカの声は聞こえてこなかった。

 キッスは、道沿いに走り始めた。


 十数分後、汗だくとなったキッスが足を止める。

 一度も止まることなく走り続けたキッスは、とある家の前にいた――アスカの家だ。

 アスカは、とあるアパートの一階、一0二号室を借りていた。

 キッスは、インターホンを押してみるが、特に反応はなかった。連絡もつかないし、家にもいない。

 キッスはダメ元でこっそり扉を開けてみると、ゆっくりと開いた……。


 彼女でもない女の家に忍び入るキッス。幸い、アスカは一人暮らしなので、いきなり親が現れるといったドッキリはない。

 部屋に入ったキッスだが、電気はついておらず、誰もいる気配はなかった。が、部屋にある一台のノートパソコンが開いたままとなっているのに気づく。

 時間が経ちすぎているためか、スリープ状態となっているが、キッスはすぐに解除をした。

 パソコンの電源がつくと、スリープ状態となる前の画面がそのまま表示される。

 画面には、とあるメールが開かれていた。

 キッスがメールを見てみると、とある人との待ち合わせと思われる場所が書かれていた。


 『明日、朝七時に軽井ビル屋上で待つ』


 軽井ビルは、アスカの家から五分程度の距離にある。

 キッスは携帯電話で時間を確認した後、軽井ビルに向かう。アスカの家まで走ってきたキッスにとって、体力的にも限界に近い状態だった。体格からしてみても、とても体力がある方とは思えない細身。

それでも、立ち止まるわけには行かなかった。アスカの事が心配――その一心で。

 額から零れ落ちる汗を腕で拭いながら、キッスは軽井ビルまで辿り着いた。

 軽井ビルは五階建て。キッスは、ビルの側面から屋上までのびている階段を上り、屋上を目指した。

 走った後に階段を上るのは非常に辛いものがあるだろうが、キッスはひたすら上る。

 時刻は七時四十分頃、キッスは屋上に辿り着いた。

 屋上には、見慣れた二人がいた。それは、捜していたアスカと――。


  

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