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Fedel Eye's  作者: 藤山 博
第一章 ダン・プロジェクト編
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第五話 力と眼

 『観察屋』である事を明かした黒ずくめの男、ハルが来る前とは態度が一変した事は、青年には明らかであろう。

 何故だろうか。ハル、黒ずくめの男、お互い初対面なのは間違いない。が、黒ずくめの男はハルの事を知っていたのだ。

 黒ずくめの男だけではなく、青年も。

 下街において、『観察屋』ハル=ジオンの事を知らない者は決して少なくなかったのだ。

 ハルの功績についても、広く知れ渡っていたのだ。

 そして、『あの存在』も。


「『観察屋』だと?」

 ハルは、眼帯を外し『右眼』で観る。ハルの『右眼』は、『観察計』を使わずとも、相手のライフを観る事が出来る。

 ライフとは、持ち点であり、一定値になると管理システム『マザー・フェデル』によって追放処分となってしまう。言わば、死と何ら変わりない。

 ライフを減らす行為、『制裁』。出来るのは『観察屋』と呼ばれる者である。但し、『制裁』が出来るのはライフがわかる場合のみだ。

「ノーテンか」

「さすがは、ハル=ジオンさん。その『眼』、物凄く欲しますわ」

「『観察屋』である事は嘘ではないらしいな」

「当然です。そう言ったではありませんか。よもやハル=ジオンさんの前で嘘などつけれません。

言ったでしょう? 私はただ、青年を襲っていたヤンキーを制裁しただけと」

「そうか」

 黒ずくめの男は、少なからず『観察屋』であるという事実。紛れもない真実。

 『観察屋』が『観察屋』を襲うわけもないという期待と信頼。

 これ以上問いだしても何も変わらないと悟ったのか、ハルは首を縦に振り、分かった、頷いた。

 黒ずくめの男は、疑いが晴れたからなのか、青年に肩を貸してあげ、最寄りの病院へと連れにその場から離れて行った。

 後ろ姿が点のように小さくなった頃、ハルは、そっと『右眼』を瞑り、そして開いた。

「やはり」

 何か分かったような素振りで、ハルは、軽井山に向かって行く。



 ――時間は過ぎ、夕刻。

 ハルが小屋に戻ると、弧狸タヌーが帰りを待ちわびていた。

 早く来て、と言わんばかりの慌てようで、小さな手で手招きをし、ハルを地下室へ呼んだ。

 ハルが地下室へ行くと、タヌーは、ニヤリと微笑んだ。

「やはり、ビンゴ?」

「うん、間違いない。犯人は、黒ずくめの男だよ」

 タヌーは、黒ずくめの男の存在をすでに知っていた。

 何故か。

 答えは、ハルの『右眼』にある。

 ハルの『右眼』は特殊な力を宿している、力――『異能』。

 『異能』は、特殊能力として扱われる力の一種で、神と呼ばれる存在が、『観察屋』に授けたものである。決して全ての『観察屋』に『異能』があるわけではない、ごく一部だ。

 『異能』を持つ一部の『観察屋』は、例外なく、体の一部分が進化しているのだ。

 ハルで例えるならば、『右眼』、がそれに当たる。

 『異能を持つ眼』、世間では、『Fedel Eye』《フェデル・アイ》と呼ばれている――。

 ハルの持つ『異能』の一つとして、ハルが見たものを任意でタヌーに見せることが出来る力がある。

 ハルが見せようと思わなければ、タヌーには見えない。見せたい時に見せることが出来る。

 ハルと黒ずくめの男の会話を見たときから、タヌーは、黒ずくめの男について調べ上げていたのだ。

 時間にしてみると、小一時間程度なのだが、タヌーならばそれだけの時間があれば十分だった。

 もちろん、ハルが黒ずくめの男の所に着くまでの間、事件の発生した現場に、何か手がかり探すべく立ち寄った事が裏付けにもなっていた。

 何か事件が起きた場所には、何か異臭が残っているという。

 ハルは匂いを感じ取る事が出来る。

 これは、『異能』ではない。ハルが少し変わっている人種だからだろうか。

 何かどこかで事件が起きている時も、『やな匂い』として感じ取る事もハルには可能だ。

 黒ずくめの男と遭遇した郊外。下街のC区からは、若干、離れていた。

 それでもハルがそこに辿り着くことが出来たのは、匂いを感じ取ることが出来たからであろう。

 タヌーから告げられ、ハルも確信した。『観察屋』消失事件の犯人は、黒ずくめの男と。

 事件の発生した現場には全て同じ匂いが。匂いは、黒ずくめの男からも感じ取れたこと。

 2つの大きな事柄が、黒ずくめの男を犯人である事に、二人は辿り着く事が出来た。

「よし、そうと決まったら『制裁』しに行ってくるか」

「待って、ハル。出かけるなら明日にした方がいいよ。今日は『異能』を使いすぎてる」

「そうだな、今日ゆっくり休んで、明日行ってくる」


 ――翌日、ハルは朝早くから小屋を飛び出した。


 

 


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