街の意識
街の外に近づくにつれ、人家がまばらになっていく。
この辺りに魔物は出ないのかと疑問に思った。
魔物は人間の敵だ。正確には、人の意識の敵だと言える。
魔物にとって、人の意識は集合的な存在だ。個人の意識は弱く、標的になりやすいが、大勢集まると魔物にとって脅威に見える。奴らには、人の集団が一個の巨大な生物のように見えているのだろう。
ならば人家の少ないこの場所は、魔物が攻撃する対象として最適とはいえないまでも、危険性は高い。
街の外周は背丈ほどの壁や有刺鉄線で覆われている。だがこれはもっぱら人間に対するもので、魔物に対してはあまり有効ではない。物理的な障壁がどれほど効果があるかも分からない。
一軒家の玄関口のような簡素な鉄製の門の前には、門番が退屈そうに立っている。門は開け放たれていた。
私とアリサは軽く会釈をして、街の外に出た。
外は草原だ。コンクリートで覆われた街の中とは違って、手入れされていない草本が足元を覆っている。そこに、魔物がいた。中からは見えなかった。
気がつかなかっただけかもしれないが、存在していなかったという可能性もある。
外壁は、その強度によらず、守られているという認識をもたらす。それが、精神的な防壁になっているのだろう。魔物は人の意識の敵だ。我々有機生命体とは異なり、意識生命体だとの見方もできる。
ならば、防壁の外でのみ魔物が存在する、あるいは知覚できる存在になるというのも、ありそうな話だ。
アリサが銀の棒を伸ばした。
魔法の杖かもしれないが、私にはそれが学校で使う指示棒のように見えた。




