表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/8

帰宅

帰宅した後しばらくして、王家に侵入した盗人として追われるのではないかと不安になった。


元々勢いで聖剣を盗もうとしたのだ。その時は不安は心の奥底に追いやられていたのだろう。実際手に取ってみたときも、剣に選ばれたときも、義務感や高揚感の方が優っていた。


ベッドの中は暖かかった。五月の気温は夕方になると下がる。王宮の冷たい雰囲気は尚更私を心細くさせた。そんな空気に当たってきたのだ。帰宅後不安になるのは当たり前だった。


それに、実際聖剣は盗まれていないはずだ。私は剣の力を手に入れた。それは剣に選ばれたということで、もうあの聖剣の中に意識は宿っていない。

だが、だからといってそのことに気づけるものはいない。

ならば王宮に追われるかもしれないという不安は杞憂なのだ。


私のやるべきことは不安になることではなく、聖剣の意思に従うことだ。それは王子であり続けることだとも言える。

あの時後戻りできないと感じたのは、王宮から追われる身になったということではなく、王子として役割を与えられたということが原因だろう。


ベッドの上で仰向けに転がる。滑らかなシーツの感触が、私の心を一瞬身体感覚へと引き寄せる。疲れていた。無意識のうちに聖剣を探した。


手をもぞもぞと動かすが、剣は見当たらない。

当たり前だ。剣は私の内にある。

だが、手に持てる剣も欲しかった。力を手に入れた証として、それがあればいいと思った。

本物である必要はない。鈍刀で十分だ。

力は私が所持している。


明日、街に出よう。そして剣を買いに行こう。

私は目を瞑り、明かりを消した。

魔力で照らされていた部屋は暗くなった。


眠りに落ちゆく意識の中で、私は考える。


明かりも、自動扉も、風呂も魔力で供給されている。

ふと、この魔力が尽きたらどうなるのかと思った。人類は他のエネルギーを十分にコントロールできていない。

火を起こすことはできるが、その熱エネルギーを保持し、各家庭に輸送することはできないように。


考えていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。

翌日カーテンから差し込む日差しを見て、それが分かった。



「街に出たい? それにリリア様、その格好はなんですか?」


アリサは目を丸くしていた。不思議なものを眺めるように私を見ている。


「プリンセスに向いてないっていつも言われてるだろう? だからこれからは王子様を目指すことにしたんだ。王子様には剣が必要だと思ってさ」


聖剣のことは隠して言った。

アリサが微笑む。


「あらあら、面白いことを考えるのですね。でも、リリア様らしいかもしれない」


アリサは婚約破棄のことには触れなかった。知らないということはないだろう。どうでもいいと思っているのかもしれない。

今はそのことがありがたかった。


「わたしもお供しますわ。街は騒がしいですから、お一人では心配です」


その言葉とは裏腹に、面白いものが見られそうだから着いていきたいと、アリサの表情が語っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ