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3話 予感


「暑い…、まだ6時半なのに…暑い…」ようやく泥濘と蚊という追ってから逃れるように下山したと思ったら、今度は焼けるような暑さと昨晩の雨のせいで湿度が高くまるでサウナの中にほうりこまれたような気分だ。14時になったら私は茹ってしまうのではないか!?


 しかも今いるのは田んぼが広がる農道だ。両サイドは田んぼ、見渡す限り田んぼで日陰なんてありゃしない。たまに吹く風が田んぼで冷やされ少しはひんやりしているが、止まったとたんにサウナ…。


さっさと用事を済ませて昼までに帰るしかない。そう思っていると


「涼音抱っこ!肉球が焼けちゃいそう!それにすごく暑い!やっぱりファミチキじゃなくて白くま君買って!」


「動物が人間の食べ物を食べちゃいけないんだよ」


「私は化け狐よ!その辺の生身の狐と一緒にしないで!」


「ハイハイ…」


 そう言いながら、足にまとわりついている白を抱き上げる。 脚が汚れているので赤ちゃんのように横抱きにして人型を追うが、腕の中に居るモフモフの体温と毛皮で更に暑さが増す。


「白月暑いよ…」


「何言ってるの!毛皮の私の方が何百倍も暑いんだから!」


「それはそうなんだけどー」


 暑い…そう思っているとヨレヨレ飛んでいた人型が不意に横へとそれていく、その道を進むと人の住む家がちらほらと建っているのが見えてくる。 いつもは折りたたみ自転車でさーっと通り過ぎちゃうけど、あいにくと今日は徒歩である。


 商店街まではちと距離があるが、まさか電車移動とかしていないよな…と一抹の不安を覚える。いや、もし距離があるのなら人型が上空へ上がって移動するから大丈夫か…。


 そう思いつつ後を追う。しばらく進むと、林の中を通るような小道に徐々に入って来たが、妙な気配で肌がピリピリとしてくる。嫌な感じだ。そう思っていると、人型が不意に直立不動で止まったかと思うと、一瞬で燃え上がり灰すら残らず消えてしまった。


「結界か…」


 そう呟くと、すかさず白がうんざりしたような声で「嫌な感じ」と呟くと、身体をねじって私の腕を離れると、地面にスタリと降り立った。


「こんな結界張る奴、碌な奴じゃないわよ」


 白の言葉に心の底から同意する。妖の中にもいい奴と悪い奴がいる。そんないい奴がうっかりこの結界に触れれば、燃え上がるとまでは言わないが力が弱い者ほど大火傷を負う事になるだろう。赤五郎が心配だ…。人型はこの先に進むつもりだったのだ。つまりはこの先に赤五郎がいるという事になる。この結界が貼られたのは、後か先か…先なら火傷してまでむりやり押し通ったことになるが…。


「白はここで待ってて」


「結界壊しちゃえば?」


進もうとした足を止めて白を振り返る。相変わらず過激派なんだからこの狐は…。


「そんな事したら喧嘩売りに来たみたくなるじゃない。

穏便に済ませて帰りたいんだから、赤五郎の状態次第ではあるけどさ…」


「あいつ生きてるかしら?」


「……やめてよ…縁起でもない…」


白の言葉に、焦りが生まれ始める。


「ともかく!白はここで待ってて!!」


「なんかあったらすぐ呼んで」


フンっと鼻を鳴らす白に笑顔を向ける。


「ありがと」


そう言うと、勢いよく走りだした。



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