イヤフォンで帰還?
名付けるなら《ファイアウェーブ》だろうか。その余波で自身の服も燃えている。熱さを感じた瞬間に《力》で薄い膜を身体全体に貼っていた。神主との戦いで《力》を使えるようになっただけでなく、細かい操作もできるようになっていたみたいで助かった。
神主を見ると倒れた状態で動かなくなっている。殺しちゃったってことかな? 焼けた肉の臭いに顔をしかめながら、この世界にも正当防衛って概念あるよね、などと考えている自分がいる。
女の子の拘束を解いてあげると、横を向きながら恥ずかしそうに
「あの……」
と言った。うん、きっと私の全身が露わになっているからだね。火で服だけが焼けちゃったから。この見た目は良い身体のせいで…いや今はそんなことより、早くここから離れたほうが良さそうだ。幸い外は暗い。
神社が燃えている。《力》で鎮火することもできたかもしれないが、敢えてそのまま放置した。人を殺したり、裸のまま巫女姿の女の子と外に出たり。この《力》のせいもあると思うのだけれど、こちらの世界は現実感が薄い。だから何でもできてしまう。
「あの、助けてくれて、ありがとうございます」
どうやら覚えているのはこちらだけでこの子は私のことを記憶していないようだ。さて、元の世界に戻るか。戻れるかどうかはやってみないと分からないけれど。
私はイヤフォンを取り出し……ああ!! イヤフォン、服と一緒に燃えちゃったよ……。
隣にいる女の子と一緒に暗闇を照らす赤い炎を見ながら、裸の私の思考は、ゆっくりと停止していった。
振り向くとそこは既に異世界だった 《1》 完




