タクティカルバトル
私は元々、自分の命というものを他の人ほど重視してはいなかったと思う。更に、《性品》として上納された時は自殺も考えたくらいだから、今でもいつ死んでも構わないくらいに思っている。だから今の心境が新鮮だ。自分の命を感じる。ワクワクしている。楽しいんだ。とっくに忘れていた感覚。この状況をくれたあの神主には感謝の念すら湧いてくる。そして倒れたままこっちを見ている女の子を見る。その時、また記憶が繋がった。この世界が異世界だと認識した時と同じように、私はこの子を知っているという記憶を持っている。
私は、この子を、この世界を知っている。夢で、何度か観た世界だ。そこでの私はただ普通にこの世界で生活していた。この子は元アイドルで私は何度か話したことがある……。そこまで考えた時、集中が切れたせいか時間の流れが急激に戻り始めた。私は決断する。この子を助ける、と。
すぐに《ウェーブ》を放ち、女の子の方へ駆け寄る。《力》の波が神主に直撃しまた吹き飛ばす。しかし神主はその勢いを利用して立ち上がり、こちらを睨んだ。
「調子に乗るなよ!」
神主の周りの空気が動き、その中の煙状の《力》が一点に集中し始める。たぶん、あれだ、私の《ウェーブ》より突破力のある攻撃が来る! そして神主が笑顔で叫んだ。
「ふふふ、死ぬなよ!」
私は再び《タクティカル》を発動し、思考を加速する。神主の中心に集まった煙が私に向かって動き出した。このほぼ停止した世界でも、ゆっくりとだが確実に動いて向かってくる尖った煙。その直線上には私の太腿がある。足止めを狙ったのだろうが、この速度で《ウェーブ》以上の威力だとすると、私の足は根元から吹っ飛ぶんじゃないだろうか? まずは防御しなきゃ。神主がやっていたように《力》で煙を動かし、太腿の一点に集中させる。間に合え!
ズガァァァンという衝突音が鳴り、私は後ろへ吹き飛ばされる。足は?……無事だ。起き上がりすぐにまた《タクティカル》を発動させる。今のを何度も撃たれたら例え防御できたとしても身体が耐えられない。防御ではなく、こちらから仕掛ける必要がある。神主の使った集中させて撃つ《力》、名前は投げ槍 《ジャベリン》としよう。私が使った防御は《シールド》かな。同じように《ジャベリン》を作れたとしてもたぶん威力で勝てない。なら他の方法を……煙に意識を集中してみる……暖かい。煙に温度があるみたい。温度……もっと高く、熱く……ッ!? 火だ。煙を熱くすることで火を、炎を発生させることができる!
私は煙を熱し炎に変え、《タクティカル》を解きながら《ジャベリン》のような溜めのいらない《ウェーブ》でその炎を押し出した。その炎が神主の防御 《シールド》ごと包みこむ。
「ぎゃぁぁぁぁっ!」
やった!と思った時、自身の服にも炎が纏わりつき、燃えていることに気付いた。




