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真相

公爵様、ご覧になって。まるで薔薇の海のよう」



公爵の妻、モーリは嬉しそうに薔薇園を散歩している


モーリは薄紅色の薔薇に顔を近づけクンクンと香りを楽しんでいる


「薔薇好きの其方の為に手塩に掛けた薔薇園だ…気に入ったか?」



「ええ、とても…お礼には何がよろしいでしょう?」


公爵は妻の腰を優しく引き寄せ口づけをする


「ずっと傍にいておくれ…私の望みはそれだけだ…」


「あなた…」



へっ、反吐が出る光景だぜ




仲睦まじい2人を影から見てフィリップ公爵の忠実な部下、シリウスは毒づきながら眉をしかめる


あんな女のどこがそんなにお気に召したのやら…


フィリップ様を誰よりも理解しているのはこの俺だけだ……若さしか取り柄のない愚かな女…今に必ず化けの皮を剥いでやる



「困ったわ…公爵様から頂いたイヤリングがいくら探しても出てこないなんて…」



「どうなさいました?奥方様…」



「ああ、シリウス、公爵様がわたくしの誕生祝に下さった大切なイヤリングを落としてしまったみたいなの…いくら探しても出てこなくて…どうすればいいのかしら


あの方が知ったら傷ついてしまわれるわ…」



「それはお困りでしょう…わたくしが眼を皿のようにして探しておきましょう! 公爵が呼んでおいでですよ。行かれた方がよろしいかと…」


「ありがとう、シリウス、公爵様には黙っていてね…」


「ご心配には及びません。このシリウス、例え拷問にかけられようとひと言たりとも秘密を洩らしは致しませぬ」



モーリがフィリップ公爵のもとへ走り去るとシリウスはポケットからイヤリングを取り出し城の外へと放り投げた


「バカな! 女だ~はっはっは~! 」




うっわ~めっちゃブラック


まるでオセロに出てくるイヤーゴみたい…どうしてこんなバカ男を信じちゃうかな…


鳩代はつくづくモーリが気の毒になる



水晶玉を見つめながら公爵は呆然としている



こんな…シリウスが何故だ…何故、こんなことを!!


「嫉妬ですよ…続きをご覧ください」



幼馴染のコージュはモーリに会いに久しぶりに城を訪ねる途中で落ちていたイヤリングに眼を止める


うん? 確か…これは…モーリが公爵からプレゼントされた…


何だってこんなところに落ちてるんだ…


モーリのじゃないかもしれないがいちおう、届けてやるか


数分後…偶然に失くしたイヤリングを拾い届けてくれたコージュに感謝してモーリは両手を握り泣きながらお礼に食事に招きたいからと引き留めていた



「礼には及ばないぜ! お前の顔を見に来ただけだからな、公爵によろしくな~」


気のいいコージュはモーリの喜ぶ顔を見届け帰って行くのを影から見ていたシリウスは歯ぎしりしながら悔しがっていた


「くそっ、あの若造、余計なことしやがって! せっかくあの女を陥れるチャンスだったのに…」


シリウスは地団駄を踏みながら暫く考え込むと…ニヤニヤしながら踵を返し公爵にモーリが若い男を城に引き入れ潤んだ瞳で両手を握っていたと嘘八百を並べ立てた


「そんな…モーリが私を裏切っていると申すのか! 」


「嘘だとお思いなら奥様本人に聞いてごらんなさいませ。その失くしたイヤリングは誰が届けてくれたのか、と…だいたい、愛していたら貴方様が差し上げた大切なイヤリングを失くすでしょうか? ああ、わたくしならば箱に入れて鍵をかけ、決して失くさぬよう命を懸けて保管致します」


「女とは…薄情で浅はかな生き物でございますな…」


それから先は…頭に血が上った公爵はモーリの説明も聞かず…彼女を罵倒し何度も殴りつけ…信じてもらえないことに傷ついたモーリは護身用の刃で自らの命を絶った



モーリ…おお、モーリ…!! 私は何と愚かなことを…!!


「お解り頂けましたか? 」


田峯は水晶に手をかざすとスッと過去の映像を消した


毎回、思うんだけど…田峯、あんた、何者だよ…


「後悔なさっておいでですか?」


ああ、どうやって詫びたらいい!! あんな無垢な天使に私は酷いことをしてしまった…


叶うなら千回でも謝って許しを請いたい



「その願い…叶えて差しあげます…」



ブツブツと呪文らしきモノを唱えると…モーリが公爵の前に現れた


「あなた…私は怒ってなどおりません…ただ、信じていただけないことがとても…悲しかった」


モーリ…おお、モーリ、私が悪かった


どうかどうか許してほしい


公爵は血の涙をとめどなく流して土下座をする



「お顔を…おあげ下さい…こんなにも愛しいお方をどうして憎んだり出来るでしょう…」


私を…許してくれるのか…あのシリウスに騙されたこの愚か者を!!


「もとはといえば…失くしたわたくしがいけないのです…あなたから頂いた大切なイヤリングを…」


モーリ!! 自分を責めないでくれっ、悪いのは私だ、私なんだ



「…それでは…お二人とも…お帰り下さい…悲しみのない幸せの庭園へ…」


ありがとう、田峯…大沢…其方たちのお陰で私は愚かな過ちに気付き妻を取り戻すことが出来た


この恩は決して忘れぬぞ!



お二人とも…ありがとうございます…


田峯は屈んで人差し指を立てると呪文を呟く



「迷える嘆きの魂たちよ…過去の真実に気付き、愛し合う二人共に本来あるべき場所へと逝かれよ」



微笑みながら二人は抱き合い、霧のように消えて行った



「お疲れさん…」


「かなりこじれていたな…しかし、これ動画にしていいのかね…」


「いいんじゃない? この恩は決して忘れないっておっしゃっていたし…」


「そう…ま、何かあったら君が責任とってね…」


「ちょっと! どうしてそうなるのよっ」


「体力使って腹減った…焼肉でも行くか」


「賛成~今夜は食べまくるぞ~」



なんだかんだで幽霊屋敷の悪霊は…これにて一件落着!





to be continued










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