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【引越し先で完結】100回生まれ変わっても心のないオレの心を奪ったのは黒い竜  作者: MINORI
【一の章】

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20:青い花

 さいしょの神様が落とした魂の一滴から6つのしずくが弾け生まれた6匹のはじめの竜。

 

 彼らには、導き手がいた。


 世界をすべる竜として生まれても、まだ仔竜。

 何もない世界で、これから世界を作るには導きが必要だ。


 創主は彼らに導き手を預けた。

 

 導き手は、彼らを(はぐく)み、学ばせ、温もりとやさしさを与え、道筋を示した。

 彼らは、導き手のもと成長し、学び、温もりとやさしさを憶えた。


 導き手は、彼らを愛し。

 彼らも皆、導き手を愛した。


 世界に新しく生まれた生命も同じ。

 世界のすべてが導き手を愛し、敬った。


 長く続くと、この時は変わらないと誰もが信じて疑わなかった。

 だが、さいしょから別れは決まっていたのだ。


 世界が安寧の時を送り始めた頃、創主は導き手を迎えに来た。

 導き手は、創主の大切な「一番星」だったのだ。


 天から降りてきた星は、天に還さなければならない。

 なぜなら星は、天で輝き、地で生きることは出来ないから。


 誰もが別れを悲しんだ。

 誰もが別れに涙した。

 

 だが・・・


 はじめの6匹の竜は、導き手を諦めることが、出来なかった。

 はじめの6匹の竜は、導き手と別れることが、どうしても出来なった。



 そうして、創主とはじめの6匹の竜との争いが始まった。

 世界が崩壊にむかうその争いの中で、導き手は両者を諫め世界を守るために、その命を盾とした。その存在が、魂が、散り散りに砕けて四散することも厭わずに。



 導き手が砕け散る寸前、最後に残した言葉が、竜たちを今なお導き手という存在に縛り付けている。



 必ず「ここ」戻ると・・・言った―――

 どんな姿に、どんな生き物になるかはわからない。といって笑った。


 だから、見つけなければいけない。俺のアステルを必ず。とソウは呟いた。




 ◇ ◇ ◇




 ―——アステルって、6竜神を導いた神様なの?。

 あの絵本にそんなの載ってたか・・・載っていたかもしれない。

 なんか、6匹の竜の前に輝いた人みたいな絵があったな?

 もしかしなくても、あれか・・・。


 ・・・話が壮大すぎて、頭がついていかない。

 なんだ?

 創主の「一番星」って、あれか、あれなのか?

 まさかの、自分の『初回の記憶』がその「導き手」に該当するとか言うのか。


 ありえない。

 自分の初回人生って、まさかの、神?


 あまりのありえなさに、頭が真っ白だ。


 今までの転生人生。

 いろんなタイプはあれども、大体は、人型タイプに生まれ変わった。

 人外の力を持っていたこともあったし、獣耳や翼があったこともあるし、善悪どちらの陣営の経験もある。好かれたことも憎まれたことも、パンケーキをダイブされたことは、つい最近の事だ。

 

 だが。と暁は考えた。


 天狼は自分が竜に殺されるのは理由があり、99回それを繰り返したのも、同じく理由があると言っていた。


 天狼がソウが言う「創主」だとして、「創主」に渡したくなくて「導き手」を取り合ったんだろう?

 その「導き手」の前世を持つ自分を、なんで竜が毎回毎回、違う世界にまで殺しに来るのだ?


 この理由だけは知りたいと、何故だかそう思う。

 

 自分の望みは、『初回の記憶』を取り戻して、今まで感じたこともない心を持って感情を感じて、自分のこの長い転生人生を終わらせることだ。だというのに、そこにプラスひとつだけ、人生を終わらせる前にそれを知りたいと、今の自分は思ってしまう。


 6匹のはじめの竜は、導き手を大切に思っていた(ソウを見る限りかなりすごく)。それなのにも関わらず、その生まれ変わりの魂を持ってるらしい自分を、異世界に転移してでも殺しに来る。

 

 オレを殺しまくってくれたのはいつも、闇の様な黒い竜だった。

 いつもその姿を殺される寸前まで見ていた。

 見間違うはずもない、あれらは、同一の竜だ。


 黒い竜=黒竜 と考えれば、黒竜にこの世界で会うのは、危険か?

 だが、『初回の記憶』のパスワードを解くためには、6匹の竜に会わなければいけないと、天狼が言っていた。あれは嘘ではないと、思う。

 肝心なことは笑顔で追及させないし、過度なスキンシップと得体のしれない執着を感じるが、嘘をつくタイプではないことだけは、何故かわかるのだ。


 6匹のうちソウを引いて5人(匹)。

 1匹はペナルティ(?)を与えるとか言ってたから、ひとまず残り4人(匹)


 竜は自分の特性に近い地域を守護するとソウが言っていたから、尋ねれば、どこに他の竜がいるのかわかるだろう。

 

 簡単ではないかもしれないが・・・。

 現状を思い、暁は肺の中が空になるほどにため息を吐き出した。




「本日5度目の大きなため息ですが、どうなさいましたかアカツキ様?」


 あの地獄の飲み会から10日は経っただろうか。すっかり自分の側付になっているアイが、部屋の奥から近付いてきた。

 相も変わらず、日がな一日、縁側ならぬ広縁のバルコニーに設置されたシングルベット並みのローソファーに埋まり、ただ外を眺めている自分をあれやこれや甲斐甲斐しく世話をしてくれる。


「ずっとここに監禁されているの、正直辛いデス」


 赤面するという記憶がある限り初めての弱みを見られた相手に対し、何故かデスマス口調で話してしまう。突っ伏す暁にアイは申し訳なさそうな声で言った。


「長からもお話があったかと思いますが、今は、本当に時期が悪いのです。『界』同士で不穏な流れがあり、神殿まで間者が入り込んでおります。ですので、正直に言って安全なのは、この宮のみです。長の住処(すみか)には、強力な結界が張られておりますので」

「権力的なもの?」

「———そうなります。創主からの託宣・・・アカツキ様の降臨で、世界を掌握しようとするものが動き出した。というところです」

 オレ?と口からこぼすと、「あなた様です」と即返答された。


「オレって・・・なんの力も、天狼からの伝言も何もないけど」

 落下を止めた未だわからない力が魔力みたいなものだとしたら、なにかしらの力を持っているのかもしれないが、現状は全くのただの人である。

「世界の愚か者はそうは考えておりません。天の意思、天からの使いである『渡り人』を手にした自分こそ、世界王になれると昔から人族は早計に考え、世界を毎度毎度滅ぼしそうになってますのでね」

 はっはっは。と小馬鹿にしたように言ってのけるアイ君に、彼は人族に良い印象を持っていないのだな。との印象を感じる。


 アイはソウが個体分裂させた竜族の血筋で、青竜の血統としては高位に当たると聞いた。

 これは、見た目より確実に年齢を重ねているなと暁はつい尋ねてしまう。


「・・・アイ君って、何歳位なの?」

「私ですか?私はですね~500はいってないですが、100は超えてます」

 竜族の年齢に関するアバウトさは、共通らしい。

「・・・これから、アイ()()って呼びマス」

「何をおっしゃいます!恐れ多い!(くん)ですら、どうしようと思っていますのに。ご勘弁ください!」


 ご勘弁って・・・。自分なんて転生回数の多いただの人ですよ・・・。

 両手をぶんぶん降って眉を寄せる彼に暁は生暖かい目を向けるしかなかった。


「ここの森だけでも外に出れたら嬉しいんだけどね。ずっと、ここだけだと息が詰まる」

 息が詰まるのはそれだけではない。

 ここ3日ばかりは、ソウが不在の為でかいベッドで悠々ひとり寝ができているが、その前は・・・あの悪夢の飲み会の夜と同じく、どこに寝ても、どれだけ離れて寝ても、目が覚めれば、ソウの腕の中だ。


 一度寝付くと朝の目覚めまで死んだように意識が戻らない自分が悲しいと暁は自分を呪う。


 ソウは、『渡り人』様の降臨に関しての竜族の緊急会議とやらで、3日前から宮を離れている。

 「誰が行くか」と一喝していたが、『渡り人』の降臨の現場である『秘された竜の涙』の守主(もりぬし)として立場上、現状報告が義務とやらで泣く泣く出立して行った。

 出発は、暁がここに降り立ってから1週間後だった。

 むしろそこまで、良くごねて出立を伸ばしたものだと暁は感心したものだ。


「長は、今日明日中には戻られると思います。それによっては、少々の外出は可能になるのではと、思います。それまで、どうかご理解を」

「自分から危ない目には合いたくないから、今は指示に従う。ソウが戻ったら・・・別室に住むように出来ないもんかな?」

「それは無理でしょう」

 きっぱりはっきり言い切るアイに、暁はソファーに突っ伏した。


「あれ、なんなんだろう。勘弁してほしい」

 アイがクスリと笑うので、暁は顔を上げて聞いた。


「そこで、笑う?」

「アカツキ様は竜の執着をご理解されていないな。と」

「ソウの執着は、アステルさんでオレではないデショ?」


「私が思うに、星の君とはまた別の、執着でしょうね?」


 長もわかっていないようですが。とあいまいに笑うアイに、これ以上尋ねることを暁は止めた。

 続きを聞くことは、やめた方が良いと本能が言っている。

 聞かない方が、知らない方が良いことが、世界には沢山あることを、長い転生人生の中で学んでいるのだ。


「ああ、また届いていますね」

 ふと一点に視線を飛ばして、アイはそこに歩み寄り片膝をつくと、それを拾い上げ暁のもとに戻ってきた。


 アイの手には、一輪の青い花。


 地獄の飲み会の翌日から毎日知らぬ間にベランダに届けられる、その青い花を暁は受け取った。

 最初は気付かなかった。だが、毎日ベランダに届けられるただ一輪。


 ベランダにもソウの結界はあるとのことで、2-3日はソウが怒号をあげ、誰が結界を抜け侵入したかと調査が入った。だが、調査にも青い花自体にも、何の問題もないとのことで、それ以後は暁の手元に来ることが多い。


 青い、瑠璃色の5枚の花弁を持つ百合に似た花だ。


「どうして毎日ここに置いてあるのか、謎ですが、花に罪はありませんので」

 アイが苦笑する。

 

 この世界に来て一番最初。

 自分を助けてくれた青い目の幼い竜を暁は想った。

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