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0:プロローグ

 この世界に生まれ、最初に意識が開いたとき、思ったのはこれだ。


『・・・今度はどのくらいで死ぬのだろう?』 


 自分には前世の記憶がある。

 それも99回分。


 いや、正しくは98回分。


 初回1回目だけは、なぜか記憶が残っていない。

 だが、初回の記憶がないことだけはわかっているので、今回は100回目の生まれ変わりであることに間違いはない。


 何故生まれ変わるのか?

 何故生まれ変わるたび、前世の記憶が蓄積されていくのか?

 そして、どうして初回のみ記憶が残っていないのか?


 何度も生まれ、その度、死ぬ。

 生きることを持て余した長い時間の中、99回分の人生の記憶を思い出し、考え、分析してはみたものの、答えの糸口さえ見つけることはかなわず、生まれると同時に「死までどれくらい」と死を数える達観した、死のみを待つ人生だ。

 

 自分の死は、どの人生でも同じくおとずれる。

 死に方も、どの人生でも同じ。


 自分が生きる世界に、闇みたいな真っ黒い巨大な竜が現れて、直接、または、間接的であっても竜により自分の命はそこで終わる。

 自分には「平穏」という人生は用意されていていないことは、誰よりも理解ができている。


 今回生まれたこの世界は、数百の国に分かれていて、安定している国、そうでない国と色々あるものの、自分は比較的平穏で、平等に近い国に生を受けたのではないかと思うが、気づいたときには両親はおらず、孤児を引き取る施設で育つこととなった。

 

 この境遇に対しての異論はない。

 「いつも」の事である。

 飽きるほどの生まれ変わりの人生で、両親が側にいたことはないし、あたたかい家庭で育ったこともない。


 そもそも「あたたかい家庭」というものも理解できない。

 

 今までの変わらない境遇のせいなのか、自分の生まれ持った資質によるものか、人が言うところの「心」とか「感情」とかいうものを、持って生まれたためしはない。

 なんとはなく、これは、記憶のない初回の生まれによるものではないかと、推測はしているが、それも怪しいものだ。


 心と感情がなく、すべてのものに対し、関心も執着も持つことのない自分が、今回生きることになったこの平穏な世界で、一つだけ気になることがあった。


『ここでどうしろと?』

 

 この世界に生まれ、世界を理解した時、一番初めに思ったのは、これだった。


 何故なら、この世界には、「竜」がいないから。


 おとぎ話や、創作の世界では竜はたくさん描かれている。

 それこそ、東洋型から西洋型、善き竜から悪い竜。創作の数だけ竜がいる。


 だけれども、本物の、命を持った竜はこの世界には存在しない。

 

 竜が、いない。

 竜が、存在しないということは・・・、この世界で、自分は、このまま、死を迎えず、生きていくことになるのだろうか?


 真行寺(しんぎょうじ) (あかつき) 22歳の春


 見上げた空は青かった。

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