2023年12月7日
求人広告に載っていた食品工場の求人、
とりあえずそこに応募してみた。
そこからとんとん拍子に話は進み、
派遣会社の説明会とやらに参加することになった。
本音を言うと、勤務地である工場に直接行って、
どんな感じの職場なのか確認したかった。
しかし、今回応募したのは派遣会社だ。
派遣会社の場合、勤務地以外の場所で説明会と称した面接が行われる。
説明会=面接であり、
担当の人と一対一で話をする、そんな感じだ。
説明会の会場に到着。
説明会と称した面接は会場の一室で行われるらしく、
説明会が行われるであろう部屋の扉の前には、
派遣会社の名前が書かれた立て看板が置かれていた。
説明会の予定時刻の30分前。
閉ざされた扉の前、どうしていいものか悩んだ。
目の前の扉をノックすべきか否か。
「・・・・・・・・・」
まぁ、廊下にただ突っ立っていても仕方ない。
そう思い、扉をノックしてみることにした。
コンコン。
誰も出てこない。
というより、そもそも部屋の中には誰もいないのではないか?と、自分は思った。
案の定、部屋には誰もいなかったようで、
予定時刻の10分前くらいにスーツ姿の男性が現れ、
部屋の扉の鍵を開けた。
予定時刻の5分前、廊下からおそるおそる部屋の中に入ると、
そこには20代後半くらいの男性が一人、
60代くらいの男性が一人、それぞれ席に座っていた。
20代後半くらいの男性は、先程部屋の扉を開けていた男性で、
おそらく派遣会社の人なのだろう、教壇の席に座っていた。
60代くらいの男性は自分と同じ応募者なのだろう、
なにやら履歴書のようなものを書いていた。
部屋に入るとすぐ、派遣会社の男性が自分に向かって席に座るよう指示を出した。
自分が席に座ると同時に派遣会社の男性が一枚の紙をカバンから取り出し、
自分に手渡す。
氏名、住所、年齢、今まで働いてきた仕事の詳細など、
職務経歴書のような紙を手渡され、そこに記入するよう男性に言われた。
念のため持参した履歴書を見ながら、言われた通りに記入していく。
職務経歴の欄に収まり切らない文字を見て、
自分はどれだけ転職を繰り返してきたのだろうと情けなくなった。
2年以上続いた職場が1つも無い。
自分は忍耐力が欠如している。
その現実が痛いほど心に突き刺さった。
履歴書のようなものを全て書き終えた後、面接のような聞き取りが始まった。
勤務する工場の説明から始まり、
前の職場を辞めた理由、
配偶者はいるのか、病院に通院しているか、などなど…。
20代の頃には聞かれなかった項目が増えていて、
自分は年を取ってしまったのだと悲しくなった。
自分の中ではまだ20代半ばなのに、もう自分はそんなに若くはないのだと、
そう言われているような気がした。
実際、自分の年齢であれば結婚しているのが普通であり、
独身であれば【訳あり】なのだろうと、そう思う。
身体だって、今は健康でも、いつどうなるかは分からない。
10代、20代であれば平気だった労働も、
今の自分に出来るかどうかと言われると…、正直、自信がない。
自分は長い間、働いてこなかった。
それでも、引きこもりだった訳じゃない。
それなのに、タイムスリップしたように歳を取っている。
言いようのない恐怖に押しつぶされそうになりながらも、
何とか声を絞り出し、男性の質問に答えていった。
派遣社員の男性は自分のような人間に慣れているからなのか、
異質な経歴を見ても、それに驚くことなく平然としているように見えた。
【世の中には、自分と同じような境遇の人がいるのかもしれない】
そう思うと、少し気が楽になった。
派遣の面接を終え、部屋を後にする。
面接の結果は明日か明後日ということで、不安を抱きつつも気長に待つことにした。
今日がその明後日なのに、連絡はまだ来ていない。