第一話
第1章
あっという間に春が終わり高校最後の夏が始まろうとしている。色々あった高校生活の醍醐味の季節の夏も今年でおしまいだ。
「行ってきます!」
まだ6時を少し過ぎたあたりなのにこんなにも明るいことにハヤトは驚きつつ自転車を最寄り駅まで走らせる。30キロは出ているだろうか。爽快感を感じたいからか速度を出して走る自転車は、あっという間に最寄り駅までハヤトを連れてきた。駐輪場に自転車を置き、ピタパで改札を通り抜けて、ホームで電車を待つ。
あと3分ほどで電車が来る。日本の電車は定時運行が基本的だが、世界的に見るとこれは珍しいことらしい。そんな情報を朝のニュースでやってたなとだけ思い出して電車の入線を待つ。いつものこと、いつもの出来事だ。
「4番乗り場に大阪難波行き、区間準急が到着します、、、、」いつも突如として現れる女のAIらしき声のアナウンスが電車の到着を告げる。
止まった電車に乗り込み、ハヤトはドア側に立ったまま音楽を聴きぼーっとしていた。すると次の瞬間ハヤトは息を止めてしまうような言葉を後ろから言われる。
「お前がマオが言っていたハヤトか!どうも気にいらないなぁ、なぜ彼女がこんな奴を好きになるのかぁ、いけないなぁ、でも優しい俺は警告を与えることにしたんだぁ、優しいだろ?いいか?このままお前がマオのことを好きになり、マオがおを好きなままだったら、二つの命がぼっかーんだよ?」
小声だが確かによく聞こえた。男の声だった。ハヤトは後ろを振り向く勇気がなく、乗り換え駅まで我慢しようと思った。だが男は奇跡的的に降りて行き彼の心を少し安心させた。乗り換え駅に着くまでにもう2回同じことを言われた気がした。しかしそれはただの勘違いで、実際は言われていなかったのだが、ハヤトは心の中で怯えていた。
(きっと気のせいだ)
そう思うほかなかったハヤトは頑張って学校まで向かった。
1時間目の化学が終わると、ハヤトはそのことを中西に伝えた。だかそんな話そう簡単に信用してもらえるはずもなく。
「おーーハヤト、マオさんのこと好きなんかwwお前もちょっとは成長したなぁww」などとからかわれた。そしてそれを聞いていたクラスメイト達が一斉に騒ぎ始めた。ハヤトはそれをなんとか抑えようとしたが、結局無駄に終わった。その後教室では様々な噂が流れた。ハヤトが実はドMだというものや、マオのことが好きだという噂など様々だったがどれも嘘である。だがハヤトが困ったのはそれだけではなかった。ハヤトの友達であるシンポがこの話を広めてしまったのだ。
昼休みになるとシンポはハヤトの元にやってきた。
「すまん、俺のせいでこんな事になってしまって。」
シンポは申し訳なさそうな顔をしてハヤトに謝ってきた。
「もういいよぉ、、、」
「まぁみんなこう言う時期があるんだって、今回はたまたまハヤトなだけで、、、」
まあそう考えるとそうかもしれないと勝手に自分自身を納得させた。放課後になるとハヤトはいつも通り陸上部の部活に行った。今日は大会の選考会があるため、いつもより練習量が少なかった。
ハヤトは短距離走の選手のため、自分の種目の練習をするべくUPをして体を温めてから100メートルを走り始めた。
スタートダッシュを決め、ハヤトは自分の出せる最大のスピードを出し、ゴールへ走った。ハヤトのタイムは11秒7で自己ベストを更新することができた。
大会が近いためハヤトは記録更新を目指し、もう一度走り出した。
結果ハヤトの記録は11秒6と自己ベストを更新したが、大会ではいつも12秒台前半しか出せない日々が続いている。そして今回も選考会を突破して大会を出場することになった。そのはもう今朝のことなど忘れていた。