第4話 洗脳女
私は、ブラック企業に勤めている社会人だ。
それにしても、今すぐ辞めたい。しかし、転職先が見つかるか不安だから辞めることができない。友人や家族に相談しても、「大変ねえ」とか「頑張って」とかしか言ってくれない。
そんな私には、一つの能力があることに最近気づいた。それは、人の考え方を簡単に変えることができるというものだ。例えば、「全人類へ、都道府県の数は48個だ」とかいうことを言うと、全人類が都道府県の数は48個と思うようになる。また、「私のクラスメイトへ、私は天才だ」とか言えば、クラスメイトだけ私が天才と思うようになる。この能力があると知った時は、「超便利じゃん」と思っていた。この能力を使えば、ブラック企業などつぶすことができるかもしれないからだ。
しかし、残念なことにこの能力には条件がある。この能力を一回使うごとに私の友人が消えていく、というものだ。消えると言っても、死ぬというわけではなく友人が私のことを忘れるということである。まあ、積極的に友人を作っていけばいいんだけどね。
いよいよ、使う時が来た。私は「全人類へ、ブラック企業を運営している者は死刑」と言う。それによって、ブラック企業は存在しなくなるはずだ。しかし、この能力を私はまだ一度も使っていない。なぜなら、どの友人が消えるかは完全ランダムだ。怖くてとても使えない。だが、どの友人にも悔いはないように一緒に時をたくさん過ごした。さあ、やるぞ私!
「全人類へ、ブラック企業を運営している者は死刑」
……言ってしまった。一体、誰が私のことを忘れたのだろうか。
ブラック企業は私のおかげで次々と倒産していった。やっと、生活が自由になる!と思ったが、転職先が見つからない。このままじゃ、実家でダラダラ生活するニートになってしまう。なので私は勢いで
「私の友人へ、私にぴったりの転職先を教えて」
と言ってしまった。
しかし、数日たっても何も変化がなかった。やっぱり、直接お願いした方がよかったかな。そう思いながら、友人の真美に電話をかけた。
「もしもし~、真美?」
「え?すみません、あなた誰ですか?」
まさか、真美だったとは。
「あ、間違えました」
と私は言い、一方的に電話を切った。まあ、仕方ない。次は加奈だにでもかけるか。
「もしもし~、加奈?」
「キャッ!誰?」
うわ~、最悪だ。仲が超よかった二人を犠牲にしてしまったとは。私は後悔していた。
「あ、間違えました」
また電話を切った。はあ。私はため息をついた。じゃあ、美里は覚えてるよね。
「もしもし~、美里、元気?」
「えっと、失礼ですがどなたですか」
え?私は驚いた。2回しか能力を使ってないのに、なんで3人も忘れてるの?
これは悪い予感がした。
優実は?
「え~、誰?」
貴子は?
「は?誰」
美希は?
恵麻は?
美咲は?
奈々子は?
私の友人は全員消えてしまった。
今思ったが、「一回使うごとに友人が消えていく」というのは、「一回使うごとに友人が一人ずつ消えていく」わけではなく、「一回使うごとに友人が全員消えていく」ということだったのか。




