0.プロローグ
この世界は過去か未来か異世界かまだわからない。
わかることと言えば空と海は青く、雲もこれといって変哲もない。しかし、周りを見渡せば地平線の彼方を超えて自然が溢れるコンクリートジャングルが見当たらない未発達な世界が広がっていた。そんな中にかやぶき屋根で作られた大小の家で形成された集落がある。集落の周りには堅い植物を素材とした柵が張り巡らされていて、外と中の境界がはっきりとわかる形を成していた。
そして、その集落の中には石で出来た祭壇があった。祭壇の前には統領と呼ばれている中年くらいの男とシャーウーと呼ばれているおばさんくらいの女が立っていた。統領というのは集落における長の役割をしていて、シャーウーは巫女の役目を担っている。そんな二人が祭壇から遠くに見える横に長く広がるしかも高さもある巨大という表現が妥当な山脈を見つめながら、会話をしている姿が見える。
「こんなものにいつまでも崇めていられない!」
統領は巨大な山脈から目の前の祭壇に視線を落とし、表情と言葉に怒りがあった。それをシャーウーは少し怯え気味の表情で冷静になるようにいさめようとする。
「それは神がお許しにならない。怒りを買うことになるわよ!」
「だがなぁー!・・・」
視線を再び巨大な山脈に戻して、怒りをため込むかのように歯を食いしばり山脈を睨みつける今の統領には出来なかった...。