夏のホラー2020、初回掲載8/27分④
●作品24
切符占い
作者:優
短編
5,503文字
内容
出張で故郷の駅に行く。その駅には、切符占いというものがあった。
感想
占いやおみくじは、それ自体が一種のオカルトですね。よく当たると評判になっても、いつかは廃れるのでしょうか。
日本語がややおかしい箇所は、特に意図的なものではないようでした。
●作品25
廃駅に行こう
作者:卍丸
短編
3,168文字
内容
廃駅の写真を撮りに行く。
感想
怖い怖い怖い。何があって何を見たのか、過不足なく語りかけてくる。一人称が淡々と不安を煽る秀作ホラー。町から山へと移りゆく車窓を楽しむ近郊ハイカーなら、更にすっと入り込んでしまう作品でしょう。
●作品26
『こんにちは、ノムーラはん』外伝~夏のホラー兜駅平将門奇譚
作者:すのへ
短編
14,771文字
内容
町にある廃駅を倉庫に使おうと下見に行くふたりの男。
感想
面白かったです。とても楽しめました。
グロないですが、首無し出ますので、鮮明に想像しちゃう人は注意です。
軽妙な語り口。呑気なふたりが怪異に遭遇します。とぼけた道中記のような語りで進む情景は亡者に満ちていました。外伝とありますが、作中描写だけできちんと分かりました。
鉄道ホラーファンのほか、将門怪談好きにもお勧め。
余談
二部板とは株用語ですかね。突然町なかの荒廃地に使われていて戸惑いましたが、文中からどうやら2人は悪徳株屋であることが伺えるので、その辺は商売が上手くいってない地区で荒廃したのだと予想されます。
作中廃駅は架空です。現実の兜町界隈ですと、1971年まで都電(路面電車)が走っていたようです。将門じゃないですが、戦国由来の鎧橋は都電の専用レーンもあったようですね。彩色写真が残っています。
●作品27
灰の終電
作者:吾妻新
短編
1,665文字
内容
仕事はいつも終電帰り、同じ車両でいつも見てくる男がいる。
感想
怖くないですが、不快系でもコメディでもないです。
タグはサイコホラー。でも内容はサスペンス。
ホラージャンルにいるので、神霊的なものと無理矢理解釈もできます。感想返信によればそこはわざとのようです。
ジャンルありきですね。作品だけ読んだら、単なるサスペンスでした。
●作品28
蛇と、やべーヤツ
作者:雲条 翔
短編
5,763文字
内容
同僚のガサツな人は、無人駅の写真を撮るのが趣味。
感想
駅と祟りと狂気。昔のオカルト掲示板のような語り口。現代読者には多少臭みが感じられる文体かもしれません。狂気の描写がお上手で怖いです。きちんとオカルト味とゾッとする演出があり、秀作サイコホラーでした。
●作品29
終電の後に
作者:索創☆実現機
短編
1,684文字
内容
オカルト雑誌の記者が2人、取材のために深夜のホームに行く。
感想
ユーモラスな語り口で自然な展開をしてゆきます。安心させてからもう一捻りあるタイプの作品でした。
余談
夏のホラー2020『ステーション』作者の作品です
●作品30
信心深い彼
作者:雪 里 枝
短編
1,048文字
内容
婚約者がとても信心深い人だった。
感想
サイコホラー。狂信者の行動が丁寧に描かれていました。
●作品31
廃駅のアルバイト
作者:はーみっと
短編
14,527文字
内容
アルバイトの紹介をする予備校生。
感想
バイオレンス小説ですね。アクションにしては動きが少ないですが、サイコホラーにしては全く怖くない。
一応バイオホラー的な生物がチラリと登場。姿の描写は少なく、全く活躍せず。
余談
武器や武術の名称が次々と出てきます。ひとつひとつの描写は殆どないので、バイオレンス系カタログ小説がお好きな方向け。
●作品32
廃駅より
作者:円坂 成巳
短編
3,349文字
内容
閉鎖的な村の葬いは、廃駅で死者を送ること
感想
執着と狂愛、死者との交流。ホラーならではの嫌な気分にさせられる読後感です。
●作品33
ぶつかってくる
作者:雨敷メイ
短編
2,249文字
内容
台風で早まった終電は混んでいた。肩にぶつかってくる感触がある。
感想
ぎゃあ!ホラー専門雑誌でよく見かけるような、単純な恐怖体験のお話です。嫌だーッ。
今回はここまで。
サイコホラーがいくつか。私は、事件の流れよりも狂気の描写に重点を置いたものを、サイコホラー作品と感じます。志賀直哉の『剃刀』は、ご本人が狂人の心理を研究したかったという意味のことを述べておられますが、現代でしたらサイコホラーのジャンルですね。昔でいえば心理小説でしょうか。
お読みくださりありがとうございます
続きます