夏のホラー2020、初回掲載8/16①
初回掲載2020/8/16は、18作品でした
●作品264
日々是凶日
作者:シュルレアリスム
短編
798文字
内容
駅でコロナウィルスを意図的にばら撒く集団
感想
ちょっとこれは流石に。
現実にこの行為を公然と行って逮捕者が出てましたよね。確認したら、2020年5月から6月に多発したようです。作中でcovid-19等とは特定せず、単に「コロナ」と呼んではおりますが。2020年8月現在の日本に於ける状況と、似すぎているように感じました。
このような作品は、社会風刺とは言えないのではないでしょうか。2020年8月と言えば、まさに混乱の最中で、さまざまな業種が対応をクルクル変えざるを得なかった頃。みな右往左往してとても不安な時期でした。
SFやホラーが風刺や警鐘になり得るのは、ある行為や状況がとてもよいとされて、批判が殆どない時です。あるいは、良い可能性があることを、頭ごなしに悪いとされる風潮が蔓延している時です。
明らかな犯罪や反社会的行動が、創作物の中限定でエンターテイメントになり得るのは、その危険や恐怖が社会全体で薄まっていて、殆ど確認できない時です。
この作品は、その辺りのバランス感覚が、かなり危ういと感じました。
●作品266
何かが喚んでいる
作者:Taylor raw
短編
4,327文字
内容
過労状態の男。飛び乗ったのはいつもの通勤電車だが。
感想
こちらは過労によるパワハラが描かれます。怪奇現象をメインにホラー文体で仕上げているため、良い意味での嘘臭さが機能しております。怖かったです。
●作品267
なければいけない
作者:斉藤メモリ
短編
3,092文字
内容
夜勤の最後に朝の見回りをする駅員さん
感想
んぎゃぁぁあああ。いやでも、そんなのわかんないし!ああ理不尽。ああお気の毒。あああ。
今回はここまで
ホラーには不謹慎なネタが山のようにあります。また、一般的には倫理的とはお世辞にも言えない人物が登場するのも定番です。ましてサイコホラーですと、異常心理を扱うので尚更です。振り切れている人間や状況を誇張して描けば、表現と言えるでしょう。
しかし、現実社会で作品発表現在人が死に続けている(終了していない)行為や事態を、ほぼ現実のままに書いても悪趣味なだけなのではないかと思います。
鉄道事故ホラーが、駅ホラー企画には大量にあります。自分としては倫理的に受け入れ難い作品も、中にはありました。ですが、不謹慎ギャグとして受け入れ楽しめるほど出鱈目なものもありました。考えさせられる作品もありました。
短期間に受動読書としてたくさん触れましたので、だいぶ自分の中では線引きが出来つつあります。
コロナストレスで陽気な人や穏やかな人が、頼り甲斐のある人ではなくなる場面に、何度か遭遇しました。どのケースでも、みんなの中心として素敵だった人たちが突然ボスになってしまいました。1人をターゲットにして、理不尽に追い詰めるようになっていきました。
頼られて嬉しい人は、正しさの基準が揺らぐとストレスが一気に跳ね上がるのかもしれませんね。頼られる人は、責任感も強く、自分の判断基準に無意識の不安を抱いて生きているのかも。賛同を得やすい分かりやすい悪を見つけ出し、痛めつけて精神の均衡をとっているようにも思えます。
外から見ればどちらも気の毒ではあります。しかし、コロナ自殺やコロナ鬱も増えているそうです。パワハラはいけません。悪魔を呼び出して虐待するSFが、昔ありましたよね。どんどんエスカレートして、とうとう逃げられてしまう。そして捌け口を失った登場人物の結末は、愉快なものではありませんでした。
コロナ禍に関しては、当時いち早く時事ネタとして取り入れていたドラマなども、安易なように感じるものが多くありました。その時から、表現として自分が受け入れられる範囲、世間が受け入れる範囲、そうしたものはなかなか掴みにくいと思っていました。
駅ホラーの全読みは、改めてそのことを考えるきっかけになっております。趣味であろうと書いて発表する立場でもあり、人に勧める行為もしております。この一覧に限らず、リアルでの気軽な情報交換だって同じことですよね。
違法と発表場所での禁止行為は論外です。
それを抜きにしても、グレーなものはございます。アウトとセーフ、もしくはホラーとして成立するので楽しめる、こうした基準は個人的な感慨とも言えます。
ですが、あまりグレーゾーンを広げ過ぎてリアルに近づけるのはいただけません。行き過ぎれば犯罪ですね。自分がサイコホラーの異常心理の当事者になってしまいます。駅ホラーのなかには、そうした心理を描いた秀作もありました。
当連載では、その線引きをさほど明確にするつもりはありません。そうであっても自分の中では、今後も常に考え気をつけて行きたいという思いを強くしました。
お読みくださりありがとうございます
続きます