夏のホラー2020、初回掲載8/24分②
●作品145
このジャリ道ばかりの路地が続く先に、百年のあいだ花街に娘を送り届ける駅があったんですよ
作者:ほっこくのくわずいも
短編
10621文字
内容
親戚を訪ねて行った土地で、今はない駅の逸話を聞く
感想
怪談というより綺譚。昭和なかごろ、「情話」と言われるタイプの小説があった。今でいうヒューマンドラマだが、それよりもっと日本的で情感溢れる世界だった。そんな小説を思わせる作品でした。
●作品146
線路の少女
作者:オリンポス
完結済(全11部分)
12317文字
内容
不満のある毎日を送る主人公が、線路に立つ少女と会話をする
感想
恨みと怒りの連鎖は、程度の差こそあれ、人類がひとりも存在しなくなるまで何処にでも誰にでも起きるのでしょう。
余談
前書きにバッドエンドへの注意書きがあります。ホラーではたいへんに珍しいケースですね。ホラー読者の場合、単純なものでも結末ネタバレはかなり読む気を削がれますし。
●作品147
【夏のホラー2020】伝聞:I君の体験
作者:アガラちゃん
短編
1400文字
内容
駅に立っていたら、不思議な放送が聞こえてきた
感想
狂気的な放送内容です。文字だけだとギャグに見えてしまいますが、上手な声優さんが読んだら怖いでしょう。
余談
1945年3月9日夜から10日の未明、東京に焼夷弾の雨が降りました。東京大空襲です。現在では「東京都平和の日」に定められております。
私の祖父は、その時避難誘導にあたっていたそうです。運良く家族かけることなく乗り切ったようですが、それでもその時の話は、一回しか聞いたことがありません。語り継ぐ使命の人もいらっしゃいますが、多くの一般人は忘れたいのも本音だったのだと思います。
●作品148
夏のホラー2020「かりかり」
作者:アガラちゃん
短編
2037文字
内容
駅のホームでかりかりという音がする
感想
音がメインの恐怖演出。無差別型の怪異です。
余談
作品147の作者です。
●作品149
都市伝説を試してみた
作者:天灼 聡介
短編
11075文字
内容
廃駅で、幽霊が見えるという周波数の音を出してみた
感想
怖いです。程よく単純な記述で進んでゆく建物探索ホラーのテンプレ展開。そして廃駅ものや鉄道ホラーのお約束が次々と。面白かったです。
余談
後書きに著作権に関する注意喚起があります。何か被害に遭われた方なのでしょうか。
web小説サイトからミラーサイトへの無断転載騒動も記憶に新しいですね。中には「広めているのだから感謝される」という間違った考え方の人もいるみたいです。ミラーサイト騒動については、慌てて確認に行く人の個人情報が抜かれるという危険もあったようです。
なろうでは、作品に限らず投稿フィールドにてアップロードされた文や画像の著作権は、規約により作者に帰属しています。「放棄する」「限定的に利用を認める」時以外には、通常こうした注意書きは不要ですし、書く人もほとんどいません。
この注意書きを見かけると、怖い目に遭われたのかな、と気の毒に思います。同時に、自分にも起こるかも、と緊張します。無差別転載の結果、その著作物の全体や一部が悪用される事態もあり得ますから。
●作品150
擬える駅
作者:猿谷ちひろ
短編
6037文字
内容
ホラー映画を観た帰りに乗った電車の様子がおかしい。
感想
理不尽ホラー。導入長めでおれたたエンド。肝心のホラー描写はちゃんと怖い。そこを楽しめば良い人向け。あらすじによれば、確信的短編詐欺です。明言してるから詐欺じゃないけど、作品の形態は偽短編。
●作品151
おとしもの
作者:しらほし
短編
5722文字
内容
終電に乗ろうとしていたホームで落とし物のスマホを拾った。気がつくと知らない駅にいる
感想
出られない系駅ホラーと幽界鉄道怪談が良い具合に混成されています。主人公の行動は冷静なようで判断力が鈍っており、リアリティがありました。繰り返される怪異には巻き込まれたくないものですね。
●作品152
終電車を待ちながら
作者:風風風虱
完結済(全7部分)
31567文字
内容
語り手のいるオムニバスホラー集
感想
怪談を語り合う2人の男がいる場所が駅です。語られる話も、全てがちゃんと駅に関わる鉄道ホラーです。どれも救いがない怖い話。スプラッタ以外のグロもあるので注意。グロいものが迫る不快感を煽ります。
余談
作中の意図的な文字化けは、変換ツールで意味のある日本語にできます。逆に意図的な文字化けを作るツールもあって、webホラーを書く人は重宝しているのではないでしょうか。
●作品153
要らないボクと彼女との出会い
作者:ポストマン
短編
1770文字
内容
いじめられっ子がホームで声をかけられる。
感想
GL注意。苦手な人は、特に後書きを読まない方がいいです。内容は幽霊に目をつけられる話。語り手の性別が最後になって解ります。これは意図的に隠していたのでしょうか?ホラーとしては隠す意味がありません。
今回はここまで
今回分は、前書きや後書きを本文扱いで利用している作品が散見されました。本文しか読まない読者もいるため、作品の一部であるならば、本文の冒頭と末尾に記入したほうが親切な気がします。
たまに、あらすじやキーワード、文字数など全てを含めて作品にしている人もいます。気づかない人が多い前提の仕掛けなら良いけれど、読んでもらう前提ならば、読まれる場所に書くほうが効果的だと思います。
特に読まれなくてもよい註や、作品内容とは直接関係のない読者への語りかけや注意喚起などなら、本文しか読まない読者にも不具合はないですね。
お読みくださりありがとうございます
続きます