表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

キミコの場合


 今日は月曜日。

 

 朝のカフェテラスの前を会社に急ぐ人、学校へと焦りながら走る学生。

 

 人々が足繁く往来する。

 

 そんな忙しない光景を顧みながら俺は、

 

 いつものように新聞を広げ、コーヒーに

 

 タバコという次第だ。実に優雅なひととき。

 

 目の前には、少し派手目でスタイルの良い女性が同じくコーヒーを飲み、タバコをふかしていた。

 

 朝からまたごねてさ、早く行けっつーのあいつは。

 

 かんちゃんまた?

 

 そ、朝からアニメ見せろって。保育園遅刻するっつーの。

 

 大変だな毎朝。

 

 彼女が朝からバタバタする光景が目に浮かび、苦笑するしかなかった。

 

 シングルの彼女。仕事前にいつもコーヒーを飲みにここにくる。

 

 いわば1日の始まりの燃料とでもいうか、

 

 今日をまたスムーズに走るためのエンジンならしをいつもここでする。

 

 今回の男やばかったって。また負けたわ。


 この場合の負けたは別れたという意味だ。

 

 この間手上げてきたからさ、応戦したら勝っちゃってさ。

 

 勝ったのか。

 

 俺はまた苦笑いをした。

 

 彼女は強い。けれど、乙女なのも知っている。

 

 やっぱ年下はシングルの気持ちわからないのよね。

 

 俺が聞く限りではもう15人くらいは連敗している。

 

 これは彼女には言わないでおこう。

 

 キミコちゃんのパワーを上回る人はそうそういねえよ。

 

 彼女はいつも言われ続けていると言わんばかりのニヤリ顔で俺にいう。

 

 ほんとウケるわそれ。人生守ってほしい人探してんのにこっちは。

 

 ほんとウケる。とはまた本人に言ってはいけない。

 

 根性ないやつばっか。


 頬杖をつく彼女。


 そりゃ誰だって最初はビビるわな。

 

 時計をチラッとみた彼女はまだ余裕があるようで、

 

 椅子の背もたれにもたれかかった。

 

 あたしだってこんな生活ビビってるわよ毎日。

 

 けど、1人じゃないんだから。

 

 捨てるわけにもいかないしな。

 

 そうよぉー、もらったもんは粗末にはしないよ。

 

 けどかんちゃんにいつも当たり強いんじゃね。

 

 あいつチビのくせに負けてないからね。

 

 ふふっと笑うキミコ。

 

 俺もつられて柔らかい笑顔になる。

 

 朝の日差しがそんな頑張ってる彼女に差し込む。

 

 あ、もう行かなきゃ。強くて気合入った男どっかにいたら教えてね、じゃ。

 

 そう言って彼女は、チャイルドシートのついたママチャリに跨り元気に走り去った。

 

 俺はしばらくその姿を頼もしく見つめた。

 

 ジャケットの内ポケットからスマホを取り出す。

 

 メモ欄を開き、沢山の名前が書いてあった。

 

 しょうがないな。

 

 キミコみたいな、良い子大事にできるやつ探してやるか。

 

 そんなことを呟いてまた俺はタバコをふかす。

 

 完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ